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幽玄神話世界  作者: 元橋
7/23

7話

 次の日、武はデータベース室で一つの依頼を受けて二人が待つであろう待ち合わせ室へと向かった。

 そして何やら会話をしている二人を確認して傍へと向かった。武はその時驚きで思わず呟いた。

「・・・無い」

 傍に来て早々そんな言葉を呟く武に二人は首を傾げた。

「おはようございます武さん、何が無いんです?」

 武は皮鎧姿の薫の胸を見ながら再度呟いた。

「無い。どこにいった?頂は?」

 武の視線が自分の胸にいきながら呟いている姿を薫は顔をカッと赤くして両腕で胸元を隠した。

「た、武さん!」

 その時、武の頭にゴツンと衝撃が走った。見ると咲夜が杖で武の頭を叩いていた。

「おはよう武、朝から早々にセクハラなんて流石ね」

 咲夜の白い目が武を見ていた。

「えっ、いやだってどういう事??」

 昨日見たモノが今日見たら無かった事に武はパニクっていた。そんな武に咲夜はため息を吐きながら。

「補正下着よ。女性にはそういった物もあるのよ」

「補正下着・・・・・・」

 武は唖然と呟いた。そんな物でここまで変わるのかと逆に感心した。

「あ、あの、あんまり見ないで下さい」

 マジマジと見ている武に対して薫は小声でそう言った。

「おぉすまんすまん」

 武は両手を合わせて薫に謝った。

「はいはい、これでこの話は終わり。で、武迷宮の場所は何処なの?」

「お、おう今日の迷宮は下北沢だ」

「じゃあさっそく向かいましょう。薫さんもそれで良いわね?」

 咲夜は強引に話を切り替えた。

「えぇ問題無かです」

「じゃあ行きましょうか」

 そうして三人は組合を出て行った。


 新宿駅から小田原線に乗り下北沢駅へと降り立った三人は西口から出て鎌倉通りを下って行く。

「おっここだな」

 武はマンションの擁壁に渦状に歪んだ空間を見つけた。

「それじゃあ、早速入るぞ」

 そう言い三人は渦に手を当てていった。迷宮内に潜った武は一言

「Blue Sky」

 大きな青空と草原が広がっていた。

「自然型迷宮かしら?」

 咲夜はそう言った。

「みたいですね。ものの見事に出口はありません」

 薫はそう言い今自分たちが入ってきた方を向いたがそこには何もなかった。

 迷宮には幾つか種類があり今回の様な自然型迷宮は入ると迷宮核を壊すまで出る事が出来ない。

「ま、遠く林らしきものが見えるからそっちに向かって取り敢えず歩くしかね~か」

 1時間程草原を歩いている時に突如薫が

「何か来ます!」

 三人はは身構えて暫くすると4頭の狼が襲い掛かってきた。

「火よ火球となりて敵を焼き尽くせ」

 まず、咲夜の魔法が1匹の狼を燃やした、次に薫が弓矢で1匹の狼を射て弱らせる、最後に武が2匹の狼に対し突撃していった。

「おりゃ!」

 こちらを齧り付こうと口に対しバスタードソードを突き入れる。そしてバスタードソードを手放すと2匹目の狼に小手を噛ませショートソードを抜くと胴に対して突き刺した。

「こっちは終わった!」

 武は叫ぶと残りの2匹は咲夜の風魔法で切り裂かれ、1匹は薫の2射目で止めを射されていた。

「よし、中々の連携だったな」

 武はそう満足気に言った。

「えぇ最初にしては中々だったわね」

 咲夜もそれに対して追随する。薫は狼に突き刺さっている矢を回収していた。

「おっ矢は回収するんだ」

「えぇ射る毎に使い捨てていたら矢の数も金額もばかにならないですからね」

 薫は少し苦笑交じりでそう言った。

 武たちは歩き続け林へと辿り着いた。

「う~ん、見た限り奥に進むにつれて森林深くなっているみたいだな」

 三人は木々の間を抜け歩いていった。足元は木の根等により徐々に悪くなっていった。

「武さん!上です!」

 薫は叫び弓を構えた。樹上には6匹の猿の群れが居た、薫はすぐさま矢を射た。1匹の猿に命中し樹上から落下してきた、その猿に武は止めを刺す。

「火よ火球となりて敵を焼き尽くせ」

 咲夜は魔法を唱え猿に命中した。火が燃え移った猿に近かった猿も同時に落下して武が止めを刺す。それを繰り返し猿との戦闘は終了した。

「う~ん、敵が遠距離だと役に立てねーな」

 そう武がぼやいた。

「そんな事言わないの、何時もは武が前線を支えてるでしょ」

 咲夜はそう言い武を窘めた。

「へいへい、それにしても薫は射るのが上手いな流石狩人のスキル持ちだな」

「いえ、それ程でも」

 褒められた薫は謙遜したがそれでもやはり役に立ててるのが嬉しいのか笑顔だった。

「それじゃあ奥へと向かうか」

 武がそう言い三人は森の奥へと歩を進めた。暫くするとプギャッと声と共に2mを超える猪が1匹突進をしてきた。武はバスタードソードの柄を両手で握りしめ腰ために構えた。猪はそのまま武に突っ込んできて頭から突き刺さり剣身を飲み込んだ。

「ぐっ!!」

 猪の突進の勢いに武はズズッと後退りしそのまま吹き飛ばされそうになるのを全身の筋肉を使い押さえこんだ。そしてそのまま死んだ猪の頭から足を使いバスタードソードを引き抜いた。

「こいつ1匹で何がしたかったんだ?」

 武は不思議そうに頭を捻った。

「普通、こんな大きな猪が突進してきたら避けるもんちゃいますか?」

 薫は唖然としながら答えた。

「え?俺が避けたら咲夜と薫が危険になるじゃん。ありえなくね?」

 武はそれが当然とばかりに答えた。それに薫はえぇ~と口の中で呟いた。

「薫さん、武はそういう人よ。考えるだけ無駄だから納得しておきなさい」

「何だよそれ、俺が脳筋だってのか?」

「違うわよ、武は煌めき方が普通の人とは違うって意味よ」

 咲夜は優し気に笑いながらそう言った。

「ん?何か誤魔化された様な気がするなぁ」

 武はイマイチ納得いかないとばかりにぼやいた。

 三人は森の中を進みながら途中襲い掛かってきた狼を3度撃退しながら更に進んで行く。

「武さん、ちょい待ってください」

 薫が静止の声を掛ける。それに対し武はピタリと止まり薫を見た。

「血の臭いがします、気を付けてください」

 武はそれに無言で頷くと慎重に森の中を進んで行った。暫く進むと少し開けた場所に出た、そこには1匹の熊が狼を貪っていた。熊はこちらの存在を確認すると襲い掛かってきた。

「デカいっ!」

 熊は立ち上がると4mを超える巨体をしていた。熊は武に対して右腕を振り下ろす、武はそれに対してバスタードソードを切り上げる事で狙いを逸らし傷を与える。

 グワッと熊は吼えると左腕を横薙ぎに払ってくる。バックステップでそれを避けると武は逆に突っ込み腰からショートソードを引き抜き左腕に突き刺した。

 腕にショートソードの刺さった熊は立ち上がり敵意を剥き出しにしてきた。

「闇よ暗球となりて敵の視界を塞げ」

 咲夜の呪文により暗球が熊の頭に吸い付き視界を遮った。熊は何も見えなくなった事に暴れまわるがその度に咲夜は暗球の位置を微調整し視線を遮り続ける。

「ナイス咲夜!薫は右足狙え」

 武は暴れる熊を避けながら伝える、薫は言われた通りに右足を弓で狙い矢を放っていく。

 熊は暗闇の中、右足に矢を当てられ続け身体がぐらつき始める。武はその間、暴れる熊を避けながらタイミングをジッと待っていた。5本目の矢が刺さった時、熊の身体が前側にグラリと傾いた。

「今!!」

 その瞬間、武は暴れ回る熊の懐に飛び込む、そして鍔を片手で握りバスタードソードを立てる。振り回す爪が武の背中に突き刺さる。それを無視し熊の心臓目掛けてバスタードソードを突き立てた。

 そして熊はグォォと叫びながら倒れ掛かってきた、そしてズブズブと剣身が深く刺さっていく。武は刺さっていくのを確認し熊の下から離れていった。

 熊はそのままドスンと倒れ込み動かなくなった。

「ふぅ~~」

 武は熊が動かなくなった事を確認して息を吐き出した。

「デカい奴だったけど何とか倒せたな」

「えぇ迷宮の主だったみたいね、あれを見て」

 咲夜が指差す先には支柱に乗った水晶球が現れていた。

「おっこれで迷宮攻略完了だな、しかし・・・」

 武はバスタードソードが突き刺さった熊を見てため息を吐いた。

「こりゃ得物回収するのが大変だ」

 4mを超える熊をぐぉぉと叫びながらなんとか横向きにしバスタードソードを回収した。

「咲夜シャワー頼むわ」

「シャワーって何ですか?」

 薫は不思議そうに尋ね、咲夜はもぉという顔をしながら杖を武の頭上に構えた。

「水よその身より溢れ出し清めたまえ」

 咲夜は呪文を唱え水が溢れ出し武は全身を洗い流し咲夜が手渡したタオルで頭を拭いていった。

「はぇ~便利どすなぁ」

「だろ?」

 ニカッと笑い武はそう言った。

「私は納得していないんだけどね、何か使ってる姿が情けないのよね」

 ため息を吐きながら咲夜はそう言った。

「そう言うなって咲夜、この魔法のお陰で現世に血塗れで戻らなくていいだからよ」

「まぁそうだけどね。流石に血塗れで電車には乗れないしね」

 そう言い咲夜は武から受け取ったタオルを鞄へと仕舞った。

「じゃあ水晶球壊すか」

「あっ武さん、ちょい待ってもらえますか?」

「あん?どうした?」

「倒した熊から胆嚢を取り出そう思って」

「胆嚢?」

「はい、乾燥させると漢方薬の材料になるんですよ、これだけ大きな熊なら大きいのが取れると思います。組合に持っていくと買い取ってもらえるはずです」

 薫はそう言いながら熊の死骸へと小刀を持ちながら近付いていった。

「へぇ~そうなのか。何か手伝おうか?」

「したら熊を仰向けにしてもらってよかですか?」

「おう!任せろ」

 うおりゃぁぁと叫びながら熊を仰向けにした。薫は熊に近付き小刀で解体をしていく。

「取れました」

 薫はそう言い血塗れの袋の様な物を見せてきた。

「それが熊の胆嚢か」

「はい」

 薫は腰から袋を取り出しその中に胆嚢を仕舞い込んだ。

「薫さん、手を洗わないといけないわね」

 咲夜はそう言い杖の先を薫の方へ向けてきた。

「あ、すんません」

 薫は礼を言い、熊の血で汚れた手を洗った。

「何か俺の時と対応違くね?」

 武はそうぼやいた。

「ふふ、そんな事はないわよ」

 咲夜は微笑みながらそう言った。

「ちぇ~~」

 武も笑いながらぶー垂れた。


 水晶球を壊し迷宮を攻略した武たち三人は組合へと戻ってきていた。

 そして3階の鑑定室へと向かっていた。

「鑑定室でいいんだよな」

 武が薫へと問い掛けた。

「はい、そのはずです」

「そっか、すいませ~ん。鑑定お願いします」

 武はそう言い鑑定室へと入って行った。

「はい、何を鑑定いたしましょうか」

 鑑定室の組合員が問い返してくる。

「これなんですが」

 そう言って袋に入っている熊の胆嚢を取り出した。

「う。こ、これは・・・」

 女性の組合員は顔を顰めながら

「し、しょうしょうお待ち下さい」

 席を立ち奥へと向かって行った。そして暫くして現れたのは年配男性の組合員だった。

「お待たせして申し訳ありませんでした」

 そう言い席に座った。

「中を拝見させて頂いても?」

「勿論」

 男性組合員は袋を開け、中の胆嚢を調べ始める。

「ほう、これは立派な・・・」

「だろ?4m超えの熊だったからな」

「ふむ、これだけの大きさなら組合としては10万円で買い取りたいと思いますが」

 武はそう言われ薫を見た。薫はそれに対し頷いた。

「それで構いません」

 武はアプリを起動し入金を済ませた。

 そして三人は20階のカフェへと移動した。

 武はシロップ増々のアイスコーヒーとケーキ3つ、咲夜はカフェオレ、薫はカプチーノを其々頼み席に着いた。

「武さんは甘い物好きなんですか?」

「おぉ大好きだぞ」

「その内、糖尿病にでもならないか心配してるのよね」

 それぞれの飲み物を飲みながら会話を続ける。

「それにしても三人では初だったが中々の連携だったな」

 武がケーキを摘まみながら言った。

「そうね、初めてにしては十分だったわね」

 咲夜がカフェオレを飲みながらそれに追随した。

「それなら良かったです」

 薫がホッとしながらそう言った。

「明日からもガンガン迷宮に潜って稼いでいこうぜ」

 武はニッと笑いながら二人はそれに頷いた。

 また明日からも迷宮に潜る日々がはじまる。

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