6話
1週間後、武と咲夜は組合19階の食堂に居た。
武はチキン南蛮定食を頼み咲夜は天婦羅蕎麦を頼んでいた。
「なぁ咲夜」
「なぁに武」
武はう~んと唸りながらチキン南蛮を食べていた。咲夜は上品に蕎麦を啜り武の言葉を待っている。
「・・・人増やさね?」
「それは固定のチームメンバーを増やすという事でいいのかしら?」
「まぁそういう事だな。この1週間4つの迷宮を攻略して重大な危険は確かになかった。でも敵の数が多かったり何度もトラップがあったり少々の危険な目にはあってきたよな」
「えぇ確かにそうよね」
咲夜は武の言葉に頷いた。
「なら人一人増やして安全を取るべきだと思うんだよな」
「良い考えだと思うわよ。それで何を増やすの?」
「そりゃおめ~増やすなら盗賊だろ。8級迷宮でもちょこちょこトラップがあるなら今後更に級の高い迷宮に潜るならトラップが増えてくるはずだ」
武は味噌汁を啜りながらそう答えた。
「うん良いと思うわよ」
「それじゃ飯食い終わったらさっそくデータベース室に行くか」
二人は昼食を終えると2階のデータベース室へと向かった。
データベース室に入った二人はPCへと向かった。椅子に武が座り咲夜は椅子の背もたれに両手を付いてPC画面に顔を寄せた。
「ち、近い・・・」
「何よ、こうしないと私も画面見えないでしょ」
武は咲夜からの文句に何も言えず、何時もと同じ甘い花の様な香りを嗅ぎながらPCを操作していった。
「えぇ~と、メンバー募集じゃなくてチーム募集の方だな」
マウスを操作しながら武は項目をクリックしていく。
「盗賊にチェック入れてっと」
チーム募集をしている盗賊の一覧が現れる、そして武は一覧表を年の若い順へと変更していった。
「さて誰にするかな?」
暫く武は一人一人内容画面を見ていった。
「武、私にも見せてちょうだい」
咲夜がそう言い席の交換を言ってきた。
「おう、構わねぇぞ」
席を咲夜へ譲ると武は咲夜の様に顔をのり出さずボンヤリと遠目に咲夜の姿を眺めていた。
(こいつって俺の何なんだろうな)
今まで何度も考えてきた思いが再度頭を過る。
(四ノ宮財閥の三女で俺の幼馴染、普通財閥の娘が探検者なんてヤクザな商売になるのおかしくね?親父さん・お袋さん・兄貴・姉貴たち、何で止めないんだよ普通おかしくね?普通止めるよな止めるはずだよな?)
幼馴染だといってもここまで長い付き合いになるとは最初は全然思っていなかった、しかし常に自分の傍におり自分の意見を肯定し続ける、反対意見なんて一度も聞いた事が無い。
最初の出会いなんて半分以上忘れてるが覚えてる内容だけでも赤顔ものだ。更に何時の間にか自分の後ろを着いて来ていた、咲夜との距離は他の人たちより自分の方が近いのは分かるが何故そんなに近いのかは判らない。小学中学高校と自分と同じ所に常に通っていた。
(いや、そこおかしくね?普通、令嬢なんだからエレベーター式の有名私立とかに行くのが普通じゃね?てか探検者なるのがやっぱおかしくね?止めない家族がやっぱおかしくね?)
常に何度となく考えてきた事が再度頭よ過る。許嫁処か彼氏すら居ないのは知っているが自分が彼氏かと問われればそれも何か違うと感じる。だが自分との距離は常に近いのだ。
(おっぱい揉ませてくれって言えば普通に揉ませてくれそうだけど、それはそれで怖い事になりそうなんだよなぁ~)
しかし常に距離は近いのだ。しかも近付いてくるのは常に咲夜の方からなのである。何故そこまで近付いてくるのか分からない。
だから自分は常に考えるのだ、自分と咲夜の関係は何なのかと。だが考えても何時も答えは出てこない。
「・・・・・・る、・・・ける、武!」
呼び掛けられていた武は思考の水底から急浮上した。
「お、おう。わりぃわりぃちょいと考え事してたわ」
「もう、ちゃんとしてよね。これ見てこれ」
そうして咲夜は一人のデータを見せてきた。
「どれどれ・・・、結城薫。っと今年の卒業生か・・・」
「どう?」
「どうって言われても実際会ってみないと分からないだろ。それより咲夜は何で彼女が良いと思うんだ?」
そう問い掛けられた咲夜は人差し指を顎に当て
「う~ん、何となく」
「何となくって何だそりゃ」
武は苦笑しながら言った。
「取り敢えず一度会ってみましょうよ」
「おう構わないぞ。で、いつ会う?」
「三日後位が良いんじゃないかしら」
「時間は?」
「14時で構わないと思うわよ」
「ならそれで決まりだな」
武がそう答えると咲夜は書類データを作成した。
「三日後14時から小会議室を一室押さえておいたわ」
「おう、サンキューな」
二人はデータベース室を後にし通路へと出て行った。
「二日間はどうするの?」
「まぁ普通に迷宮に潜るかな」
「そう、じゃあ何時も通りね」
そうして二人は二日間迷宮に潜った。
三日後、二人は新宿組合の5階にある小会議室の中にいた。待ち合わせ時間までは10分程ある。
「さて、どんな子が来るのやら」
「ま、見てのお楽しみって所かしら?」
14時丁度にコンコンと扉をノックする音が聞こえた。どうぞ、と声を掛けると一人の少女が室内へと入ってきた。
入ってきた少女は身長160㎝前後、ミディアムヘアをハーフアップにした髪型、くりっとした目、ほっそりとした身体付き、そして何より
「Bigだ・・・」
身体に似合わない大きな胸だった。武はぼそりと呟き、それに対し咲夜は机の下で思い切り武の足を踏み付けた。
「痛っ!」
「あの何か?」
「いいえ何でもないわ、椅子に座って頂戴」
そう言われ少女は椅子に浅く腰掛けた。
「先ずは自己紹介をするわね。私の名前は四ノ宮咲夜、そして隣の彼が」
「大和武だ」
二人の自己紹介に対して少女は
「うちの名前は結城薫いいます」
そう自己紹介をした。
「こんな子、学校に居たか?」
武は素朴な疑問を口にした。これだけ愛くるしい顔立ちと大きな胸をしていたならば、探検者科の噂に上がってもおかしく無い。
「あ、うち東京高出身ちゃいま、いえ違います大阪高出身です」
結城薫は言葉使いを直し自分が大阪から来たのだと伝えた。
「何で態々東京に?あ、親の引っ越しか何かか?」
「いえ・・・、一人でです」
「今年卒業したばかりなのに一人で大阪から東京に?」
「はい・・・、そうです・・・・・・」
武の問い掛けに結城薫の声は段々と小さくなっていった。武の言葉尻を捉えるならば、何で態々卒業したばかりの地元に居ないで遠方の東京まで親元離れて女一人で出てきたの?何か地元で問題でも起こしたんじゃないか?とも聞こえなくともない。
「まぁいいや」
咲夜は二人のやり取りを聞いて、何故結城薫の声が小さくなっていったかを分かってはいたが敢えて言葉を発せずに黙っていた。
「取り敢えず依頼料は頭割りな、迷宮内で手に入れた物を売った時も同じな。それと迷宮内で手に入れて使えそうな物があったらメンバーが使うその時はタダだ、売り払った時に頭割りだ。ま、そんな所かな何か問題はあるか?」
「え?」
「あぁそれとチームリーダーは俺で潜る迷宮も俺が決めている」
「え?え?」
行き成りチームルールを言い出した武に結城薫は困惑していた。
「で?どうだ?」
「どうだとは?」
結城薫は混乱した頭で問い返した。
「いや、俺たちのチームに固定として入るかどうかなんだけど」
「えぇ!行き成りですか?」
「え?どういう事?」
「いやテストだったり試験期間だったりは」
結城薫は今まで何度かチーム入りの為に何度かあった事を伝えた。
「テストとか試験期間なんて言葉、学生生活でウンザリだよ。そもそも俺たちはチームに盗賊を入れたい、そっちは盗賊としてチームに入りたい。Win-Winで何の問題も無いじゃん」
武はあっけらかんとそう言った。
「で、どうかしら結城さん私たちのチームに加入するのは」
そこで初めて咲夜は自己紹介以外の言葉を口にした。
「あ、はい。よろしゅうお願いします」
そう言い結城薫は頭を下げた。
「よし!決まったな。早速アプリで」
「武。武」
「何だ咲夜」
「先走りし過ぎよ武。じっくりと打ち合わせもしたいから飲み物でも買ってきてね」
「おぉ・・・、分かった。咲夜は何飲む?」
「私はお茶でいいわ、結城さんは?」
咲夜は結城薫に優しく問い掛けた。
「あ、うちもお茶でいいです」
そう言われ武は飲み物を買いに部屋の外へと出て行った。
「ごめんなさいね」
咲夜は結城薫にそう謝った。
「え?何がですか?」
「彼の、武の言葉には含むモノは一切無いから」
「え、それって」
「ちょっとスケベで直感で生きている様な人だから彼の言う言葉の裏なんて考えてたらそれだけで時間の無駄になるわよ」
咲夜はそう言いクスクスと笑った。
「はぁ、そうなんですか・・・」
「えぇそもそも今回の募集で貴女を選んだのも武じゃなくて私だしね」
「はぁ・・・」
「ま、人となりは良い人だから頼りたかったら存分に頼ったらいいわよ。それに甘えたかったら甘えても良いし」
「え?それって・・・」
結城薫が言い掛けた時、扉が開き練乳入りコーヒーとお茶を二つ持った武が戻って来た。
「ほい、お待たせ」
武は二人の前にお茶を置いて椅子に座った。
「で、改めて自己紹介か?」
武が咲夜を見て聞いてきた。
「えぇそうよ。スキル等の話を一切していないじゃないの」
「そういやそうか。じゃ改めて大和武だ、武って呼んでくれて構わない。スキルは戦士だ」
「私も先程言った通り四ノ宮咲夜よ。咲夜って呼んでね、スキルは六種の魔法使いよ」
六種の魔法使いと聞いて結城薫は驚いた、即ちスロットが最低でも6個あるという事なのだから。
「うちは結城薫です、うちの事も薫って呼んで下さい。スキルは盗賊の他に狩人のスキルも取っています」
「おっマジか!狩人のスキルも持ってるのか。それなら中距離からの援護も期待できるな」
予想外のスキルに武は喜んだ。
「えぇ任して下さい」
「じゃあ早速アプリ登録をしようぜ」
武はそう言い三人はチーム登録・チーム口座等々の各種登録を終えた。
「さっそく明日から迷宮に潜ろうぜ」
「うちはどうしたらいいですか?」
「明日の8時に組合の待ち合わせ室に居てくれたらいいぞ、それまでに迷宮を決めておくから」
武は薫にそう伝えた。
「分かりました」
「何かあったらアプリにメッセージ送ってくれていいからね」
その後、三人は1時間程雑談をしそれぞれ別れた。




