23話
12月24日クリスマス。武は朝食を終えてから玄関に座り革靴を磨いていた。皆で買い物に行った時に数足買ったはいいがそのままにしていたのだ。スマホで革靴の事を調べた時に最低でも1か月に一度は磨いた方が革靴を長持ちさせる秘訣だと書かれてあった。メンテナンス用品も買い物の時に買っていたのでスマホで革靴の磨き方を調べつつ磨いていたのだった。
(結構楽しいな)
スマホでちょくちょく磨き方の確認しながら磨いていく。自分はこういった単純作業が結構好きなんじゃないかと思い始めていた。それに磨いて綺麗になっていく革靴を見るのも楽しい。
(次からする時はスマホで音楽流しながらでもいいかもしれんな)
鼻歌を歌いながら革靴を磨いていると2階から誰かがトントンと降りてきた。
「武はん?何してはるんどすか?」
振り返ってみるとそれは薫だった。
「あぁ薫か、見ての通り革靴磨いてんの」
武は磨き終わった1足目の革靴を薫に見せた。薫は武の傍にしゃがむと革靴を見た。
「綺麗に磨かれてますどすなぁ」
「だろ?これが結構面白くてさ」
武はニコッと笑いながら言った。
(今、武はんと二人っきり・・・)
薫ははたと気付き咲夜の言葉を思い出した。ボディタッチ、自分で一番自信があるボディタッチと云えば。
「武はん、こっち見とぉくれやす」
「ん?何だ?」
武が薫の方を振り向くと薫は自分の胸で武の頭を思い切り抱き締めた。
「んん!?」
武はいきなりの事で驚いた。薫は抱き締めた武の頭を前後にゆすったり左右にゆすったりしていた。それを3分程続けていた。
「う、うちからのクリスマスプレゼントどす」
薫はそれだけを言うとタタタと2階へと上がっていった。
(ポヨンポヨンで柔らかった・・・・・・)
武の頭の中はそれだけで埋め尽くされていた。驚きはしたがそれ以上に薫の胸の柔らかさに衝撃を受けていた。
(柔らかくて気持ち良かったなぁ~)
抱き締められている時は薫の柑橘系の香りもし、もういっぱいいっぱいだった。武は暫しボーっとしていた。
(しかしこの頃は何か相手からのアプローチっつうかボディタッチっつうか何か多いな・・・)
武は未だにボーっとした頭でそんな事を考えていた。頭がハッキリしてくると武は靴磨きを再開する。しかし偶に思い出しニヤニヤする。そんな事を繰り返し靴磨きを終えるのだった。
洗面脱衣所に移動し手を洗う。そしてリビングへと移動する、その時キッチンでは華林が獅子奮迅の働きをしている。今日の夕食の為に朝から準備をしている為だ。
「華林、何か手伝える事あるか?」
「大丈夫ですよ、武さんたちは待ってるだけで良いですから」
華林はそう断りを入れてくる。
「そうか?何でも言ってくれよ。やる事無いんだから」
「分かりました。・・・あっそうだ」
「お?何だ?」
武は期待を込めて聞き返した。
「調味料とかを買ってきてもらえますか?」
「おう全然構わないぞ」
華林はメモに書き込むとそれを武に渡した。
「そしたら、お願いしますね」
「おう、任せておけ」
武はそう言うと自室に戻り外出着へと着替えた。部屋から出るとバッタリ咲夜と会った。
「あら武出掛けるの?」
「あぁ華林からお使い頼まれたからな」
そう言うとメモを見せた。
「武、貴方一人で大丈夫なの?」
「大丈夫だろ?」
武は問題無い様に言う。
「貴方一人じゃ心配だから私も付き合うわ。着替えるからちょっと待っててちょうだい」
「え?おい」
武の言葉は聞かずに咲夜は2階へと上がっていく。30分程すると咲夜も着替えて降りてきた。
「お待たせ」
「スーパー行くだけだぞ?」
「えぇ分かってるわよ?」
「何か気合入ってないか?」
武は咲夜の服装をみてそう言った。トレンチコートにミモレ丈の青のフレアスカートにタートルネックニットを合わせている。
「そんな事無いわよ、普段着よ」
咲夜は何でもない様に言う。
「じゃあ出掛けるか」
武がそう言い二人は屋敷を後にした。外に出ると雪がチラついている。咲夜は武の左腕に抱き着き歩いて行く。
「あぁ~・・・、咲夜?」
「なぁに武」
「その当たってるんだが」
何がとは言わない。
「武、馬鹿な事言わないでちょうだい。当ててるのよ」
咲夜は当然の様に言ってくる。
「えぇ~~」
「何?気持ち良くないの?」
「いや気持ち良いです・・・・・・」
武は素直に答えた。
「じゃあ問題無いわね、さあ行くわよ」
そう言って二人は歩き出した。渋谷まで10分程歩き比較的高級スーパーへと足を延ばした。
「え~と、これじゃないかな」
武は品物を手に取る。咲夜はそれを見て。
「武、そっちじゃないわよこっちよ」
武の手に取った品物の隣に置いてある品物を咲夜は手に取った。
「お、そうなのか?」
「そうよ。武だけだったら間違った物買って帰る所じゃない」
「あぁ~、すまん。確かに助かった、ありがとう」
武は咲夜に素直に礼をする。
「別にいいわよ」
咲夜は笑顔で答えた。
「さぁ他に買う物は?」
「あと一つだな」
武はそう言い咲夜と一緒に買い物を続けていく。買い物を終えると荷物は武が持ち咲夜は武の左腕を抱え込む。そうして歩いて屋敷まで戻っていく。
「ふふふ」
咲夜は機嫌が良さそうだ。
「何かえらくご機嫌だな」
武は咲夜に尋ねる。
「えぇ機嫌良いわよ。ねぇ私たち何だか新婚夫婦って感じがしない?」
「え”!?」
武は咲夜の言葉にドキリとした。咲夜は武に妖しく笑い掛ける。
「ねぇ、あ・な・た」
そう言い武の左腕を今よりもギュッと抱き締める。咲夜の胸の感触が更に強まる。武は咲夜の言葉と行動に。
「咲夜お前って本当にもう・・・・・・」
「本当にが何なの?」
咲夜は武に聞く。だが武は答えない。
「ねぇ武ってば、本当にが何なの?」
咲夜は更に聞きたがってくる。それに対して武は。
「あぁ~もう、こういう事だよ」
武は咲夜の方に振り向くと唇にチュッとキスをした。
「武・・・・・・」
咲夜は突然の武の行動に驚き顔を赤くした。
「これで分かったか?」
武はそっぽを向きながら咲夜に問うた。
「えへへ、うん分かった」
咲夜は少女の様な笑顔を浮かべながら返事した。咲夜はまさか武がキスをしかも街中でしてくれるとは思わなかったので心の底から嬉しかった。頭を武の肩に寄せる。
「おい咲夜、危ないぞ」
「ううん、ゆっくり歩けばそんな事無いわよ」
そう言い行きよりも帰りの方が時間を掛けて歩いて屋敷へと帰って行った。
「ただいま~」
武はそう言い玄関を上がった。
「じゃあ後でね武」
咲夜はにこやかに笑いながら2階へと軽い足取りで上がっていった。武はキッチンへと向かった。
「華林、買ってきたぞ」
「ありがとうございます武さん」
華林は武から荷物を受け取る。
「もう直ぐ昼食の準備も始めますからね」
そう言いながら華林はテキパキと動いている。武は洗面脱衣所に向かい手洗いとうがいをしてリビングへと向かった。ソファに座りテレビを点けるがやってる番組はクリスマス特集ばかりである。どうやら今日はホワイトクリスマスになるらしい。公共交通機関への影響も注意が必要らしい。
「もう直ぐで出来ますからね~」
華林の楽し気な声が聞こえてくる。武はソファから立ち上がり階段へと向かった。
「もう直ぐ昼飯出来るってよー!」
そう2階へと声を掛ける。そうしてダイニングの自分の席へと座る。そうすると咲夜、薫、朱鳥の三人も降りてきてそれぞれの席へと座る。
「は~い、出来ましたよ。今日のお昼ご飯はちゃんぽんです」
出てきたちゃんぽんは麵が見えない位の野菜が盛られたちゃんぽんだった。もやしやキャベツに小エビ、人参、豚肉、カマボコにコーン、エンドウ豆にキクラゲと具材は豪華だ。
「「「「「いただきます」」」」」
皆で出来たてのちゃんぽんを食べる。
「ちゃんぽん食べるのはホントに久し振りだなぁ」
「あれ?食べた事あったんですか?」
華林は驚いた。都内でちゃんとしたちゃんぽんを出す店はチェーン店位しかないから食べた事無いと思っていたのだ。
「あぁ10年位前かなぁ食べたのは」
咲夜を見ながらそう言う。
「そうね、その位前だったと思うわよ」
「一緒に食べたんどすか?」
薫が聞いてくる。
「あぁ咲夜の家で食べさせて貰ったんだよ。そういやあの時って料理人連れてきたのか?」
「えぇ長崎から連れてきてたみたいよ」
「えぇ~そしたら本場の味じゃないですかぁ~」
咲夜の言葉に華林はガッカリした。
「華林さんが作ってくれたちゃんぽんも同じ位美味しいわよ」
そう咲夜は華林に言う。
「ならいいですけど~」
「うちは初めて食べたどす」
薫はそう華林に伝える。
「朱鳥は食べなれた味なのか?福岡出身なら」
武は朱鳥に問い掛ける。
「そうですね、ちゃんぽんの本場は長崎県ですが福岡でも一般に食べられてます。専門店なんかもありますよ」
朱鳥は食べながらそう伝える。
「そういえば朱鳥さんは九州出身でしたね」
華林は思い出していた。
「う~ん、皆さん食べた事無いと思っていたんですけどねぇ」
どうやら華林は食べた事の無いものを出したいらしい。
「それより武、貴方何でまだ外出着なの?」
咲夜が不思議そうに武に問い掛けた。
「あ?あぁ午後に武具店にメンテナンスで持っていこうと思ってな」
武はそう答える。それに対し薫と朱鳥が。
「うちも連れて行ってもろうてええどすか」
「私も一緒に行きたいのですが」
そう答える。
「別に構わないが」
「都内の店を全然知らへんどすさかい」
「私も一緒ですメンテナンスをしなければならないですから」
「分かった、じゃあ一緒に行こうか」
武はちゃんぽんを食べながらそう答えた。
「武、明日は何も用事無いのよね?」
咲夜が聞いてくる。
「おぉ、明日は何も予定無いが」
「そしたら皆で武のスーツ作りに行きましょう」
いきなり咲夜が提案してきた。
「うちは構しまへんよ」
「私も大丈夫です」
「私も問題ないです。楽しみです」
薫、朱鳥、華林がそれぞれ答える。
「まぁ皆が良いなら俺は構わないが・・・」
武は返答する。
「じゃあ明日の予定はそれで決まりね」
咲夜は嬉しそうに笑う。
そうして皆でちゃんぽんを食べ終えた。
「着替えてくるさかい待っとってくださいね」
「私も着替えてきます」
そう言い二人は2階へと上がっていった。武も荷物を取りに自室へと向かった。玄関で待っていると二人が荷物を持って降りてきた。
「じゃあ行くか」
武がそう言うと三人は屋敷を出て電車を乗り継ぎ武具店に向かった。
「こんちは~」
武は何時もの様に声を掛けながら店内へと入っていった。
「らっしゃい、って何だ大和じゃねぇか」
店主がこちらを見てそう言った。
「後ろの嬢ちゃん二人は初顔だな」
「俺のチームメンバーの二人っす」
そう言って二人を紹介した。
「結城薫といいます、よろしゅうお願いします」
「氷室朱鳥と申します、よろしくお願いいたします」
それぞれが自己紹介する。
「おうそうか、よろしくな」
店主はそう挨拶をした。
「で?今日は何の用だ?」
「武具のメンテナンスをお願いします」
武はそう言い、和剣、ショートソード、プロテクターを台の上に置いた。
「おう分かった。渡しは正月明けになるが構わないか?」
「えぇそれで良いっす」
そう返事をした。
「私もメンテナンスをお願いします」
朱鳥もそう言い手甲と足甲を出してきた。店主は出された物を見て。
「へぇ中々良い得物じゃねぇか。こいつもメンテナンスでいいんだな?」
「はい、お願いします」
朱鳥は頭を下げた。
「で、嬢ちゃんは?」
店主は薫に問い掛けた。
「あ、あのうち弓を使うとるんどすが何がありますか?」
薫は店主に問うた。
「結城っつうたよな嬢ちゃんは今何を使ってんだ?」
「これどす」
そう言って薫は持ってきた弓を出した。店主は3度ほど弓を引き絞る。
「ふ~ん、悪くはねぇな・・・、おい大和、おめぇ今は何級潜ってんだ?」
店主は武に問い掛けてきた。
「今は7級だけど来年からは6級に潜る予定っす」
「それじゃあこれじゃ物足りないな・・・」
店主は暫し考えていた。
「嬢ちゃん、予算はどの位ある?」
「400万前後なら大丈夫どす」
店主の問い掛けに薫はそう答える。
「ちょっと待ってな」
そう言って店主は店の裏へと消えていった。暫くすると1本の弓と数本の矢を持って現れる。
「結城の嬢ちゃん、こいつを引いてみな」
店主はそう言って薫に渡してくる。薫は渡された弓を引いてみる。すると。
「思いの外軽いどすな」
そう感想を述べた。
「そう思うだろ?だがそいつは魔導を使って魔法加工が施されている物だ。嬢ちゃんが持ってきた弓の3倍の威力は出せる」
店主がそう説明をする。
「3倍・・・・・・」
薫は店主の説明に驚いた。
「後は矢を変えてみるとかな。これは鏃が鋼打ちで強化されている。普通の鏃より鋭いから刺さりやすい」
「こちらの矢は鏃が付いてないどすが?」
「あぁそっちは使い切りの矢だ。火の魔法が付与されていて刺されば燃え上がる。いざという時の為の物だな」
「成程・・・」
薫は考え込んでいる。
「この弓は幾らどすか?」
「弓は200万、鋼鏃矢は20本で10万、火矢は1本3万だ」
店主はそう答えた。薫は考えて。
「弓と鋼鏃を40本、火矢を10本お願いします」
「分かった。今の弓はどうする?」
「奉納処理でお願いします」
「なら初穂料5万な」
次々と物事を決めていく。アプリを起動させ自分の口座から250万を振り込み、初穂料は現金で手渡した。
「それと皮鎧のメンテナンスもお願いします」
薫はそう言い皮鎧を台の上に置いた。
「分かった」
店主はそう言った。用事を済ませた三人は店から出ていく。薫が買った荷物は武が持っていた。
「武はん、すんません」
「いいって事よ、女性の荷物を持つのが男の仕事ってね」
「何どすかそれ?」
薫は笑っていた。
「それよりどっかの喫茶店にでも入ろうぜ」
武の提案に二人は頷いた。暫く歩き一軒のクラシックな雰囲気の喫茶店へと入っていった。
三人は席に着き注文をする。武はアイスコーヒーにケーキを3つ、薫はカプチーノを朱鳥はホットコーヒーを頼んだ。
「武はん、良い武具店教えてくれておおきに」
「本当に助かりました」
二人は武に礼を言う。
「別に礼を言われる事じゃねぇよ、同じチームメンバーだろ?」
武は運ばれてきたアイスコーヒーにシロップを入れながらそう言う。
「あそこに行けば大概の物は揃うから問題ないぞ。それに前もって言っておけば、それに添った武具を準備してくれるらしいぞ。魔導武具でも大丈夫らしい」
武は二人にそう説明した。暫くは武がケーキを食べる音がする無言の時間が過ぎたが。
「そういや二人って帰郷の準備って終わってるのか?」
何気なく薫と朱鳥に武は聞いた。
「うちは殆ど終わってます」
「私は既に荷造りは終わってます」
二人はそう答えた。
「帰りってどうするんだ?飛行機か新幹線どっちだ?」
「二人で新幹線に乗って帰ります。新大阪までは隣同士の席どす」
薫がそう答える。
「九州まで新幹線って何時間位掛かるんだ?」
「約5時間ですね」
武の問い掛けに朱鳥が答える。
「5時間かぁ~、結構掛かるな」
「ですが飛行機ですと1時間以上前には空港に着いていないといけないですし、向こうに着いてからの移動を考えると新幹線1本の方が楽なんですよ?」
朱鳥が笑顔を浮かべながら説明する。
「成程なぁ~」
「武はんは何処かに旅行に行ったりはしてへんのどすか?」
「う~ん、国内だと修学旅行で京都行ったり、後は軽井沢と熱海と北海道くらいかなぁ?」
武は思い出しながらそう言った。
「へぇ~国内はって事は海外も行った事あるんどすか?」
薫がカプチーノを飲みながら聞いてくる。
「おぉ海外の方が多いぞ。ヨーロッパは全ての国に行ったし、東南アジアならタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、シンガポール、マレーシア、後はオーストラリアにニュージーランド、香港、台湾島、韓国、ハワイにアメリカ、カナダ、後エジプトやトルコやロシア帝国なんかにも行ったなぁ」
武は指折り数えながらそう言った。
「はえぇ~~~」
薫は驚き。
「それはご家族とですか?」
朱鳥が聞いてくる。
「いんや。咲夜の家族たちと」
「「え?」」
二人は不思議そうに聞き返した。
「武はんが咲夜はんの家族と旅行したんどすか?」
薫はいまいち分からず武に問い掛けた。
「おう。毎回、咲夜の家族旅行にいっつも連れられて行ったぞ」
武はケーキを食べながらそう答えた。二人は不思議だった。咲夜と仲が非常に良いのは既に分かっているが四ノ宮家の家族旅行に連れられて行ってるという事は家族全員とも仲が良いという事になる。それはつまり二人の仲を家族が既に認めているという事になる。
「武殿は咲夜さんのご家族とも仲が良いという事ですか?」
朱鳥は武に聞いてみる。
「ん?おう。兄貴の鋼一郎さんとも仲良いし、姉貴の明日菜さんと神楽耶さんとも仲良いぞ。お袋さんの百合恵小母さんは昔から良くしてもらってるぞ。親父さんの鋼蔵さんは何か高校の頃から睨まれてるけどな」
ケーキを食べながら武は答える。薫は四ノ宮財閥総帥を鋼蔵さん呼ばわりしている事にドン引きだ。しかも睨まれてるのは咲夜はんを既に取られたからとちゃいますか?と尋ねそうになってしまう。これでは大和武という人物は四ノ宮家にとって非常に重要人物という事になる。
「旅行行った時もいっつもファーストクラスかビジネスクラスだったから快適だったぜ」
武は二人にとって見当違いの事を言っている。
「武はんって凄い人やったんどすなぁ」
「ですねぇ~」
二人は感心している。
「?何だ?どういうこった?」
武はいまいち分かっていない。薫ははたと思い出し。
「武はん、前にお父はんが普通のサラリーマンって言うてましたやんな?」
薫は恐る恐る武に聞く。
「おう、普通にサラリーマンしてるぞ」
「何処の会社どすか?」
「ん?四ノ宮重工の副社長してるぞ」
「全然普通とちがうやないどすか!」
薫はテーブルをバンバン叩きながら言った。四ノ宮重工なんて大企業の名前は自分でも知っている。そこのサラリーマンと云えど社長なんて一般家庭じゃなくて上流階級の家庭といっても過言ではない。
「うわ、何だ?いきなりどうした薫」
「どないしたもこないなもあらへんどす!」
薫は声を荒げていた。
「武はんは変な人どす」
「武殿は変な人です」
薫と朱鳥は声を揃えて言った。
「えぇ~?そんな事ないと思うけどなぁ」
武は二人が言っている事がいまいち分かっていない。どう考えても大和武という人物は特種な立場に居る人間だ。その事を本人自身が全然解っていない。
「はぁ~~~」
薫はため息を吐いた。
「どうした?大丈夫か薫?」
武は心配げ気に問い掛けてきた。
「大丈夫じゃないどす・・・」
自分が好きな人は何故ここまで己の事を分かっていないのか逆に心配になってくる。カプチーノを一口飲み心を落ち着かせる。
「武はんはこういう人だと諦めました。切り替えていきます」
「何か酷い言われ様だな」
武はアイスコーヒーを飲みながら言う。三人はそれぞれの飲み物を飲み終えると、一人は甘い物が食べれて嬉しそうに残り二人は少し疲れた感じで喫茶店を出ていった。電車を乗り継ぎ松濤の屋敷へと帰って行った。
「ただいま~」
武はそう言い玄関を上がる。持っていた荷物を薫に渡し自室へ戻って部屋着へと着替える。洗面脱衣所に行き手洗いとうがいをするとリビングへと向かった。リビングでは咲夜が何やら雑誌を読んでいた。
「あら、お帰りなさい武」
咲夜は雑誌から目を離し武に言葉を掛ける。
「あぁ、ただいま」
武もソファに座り咲夜の方を見ると、どうやら女性ファッション雑誌のようだ。武はテレビを点け、デスカバリーチャンネルにチャンネルを変える。暫くすると薫と朱鳥の二人も2階から降りてくる。
「咲夜はん」
「なぁに薫さん」
「武はんは変人どす」
薫はキッパリとそう言う。それに咲夜は少し驚いた顔をした。朱鳥も薫の意見に頷いていた。
「まぁ~だ言うかそれを・・・」
武も呆れ果てている。
「何があったの?」
咲夜が武に問い掛ける。
「別に、ただ旅行の話と親父の話をしただけだぞ?」
武は何でもない様に言う。咲夜はそれを聞いてう~んと唸ると。
「面白い人でしょ?武って」
笑いながらそう言ってきた。薫と朱鳥の二人もソファに座り。
「面白い処かビックリどすわ」
「まさかここまでズレた方だとは思いもしませんでした」
薫と朱鳥がそれぞれ意見を述べる。
「武さんがどうかしたんですか?」
キッチンで料理をしていた華林もリビングにやってくる。
「華林はん、気ぃ付けとぉくれやす。武はんは変人どすさかい」
「えぇ!?武さんって変人さんだったんですか?」
華林は驚きの声を上げる。
「いやいや別に普通だって」
武は反論する。
「そう思てるのんは武はんだけどす」
何故だか薫はプリプリしている。
「なぁ咲夜?俺ってそんなに変なのか?」
武は笑っている咲夜に問い掛けた。
「う~~ん、変っていうか一般的にはズレているのは確かよね」
人差し指を頬に当てながら咲夜はそう言う。
「う~ん、咲夜がそう言うならそうなのかぁ~?」
武はいまいち納得がいっていない。
「でも私は今のままの武が好きよ」
咲夜がそう言ってくる。
「私も武さんは今のままで良いと思いますけど」
華林も追随する。
「二人はどうなの?武に変わって欲しい?」
薫と朱鳥の二人に咲夜は問うた。
「別に変って欲しいってわけちゃいますけど」
「私も武殿がそのままであれば良いと思います」
「なら今迄通りで問題ないじゃない」
咲夜はそう言った。
「まぁそうどすなぁ」
薫も認める。
「で、結局俺はどうなるんだ?」
「何も変わらないわよ」
咲夜は武にそう伝える。武はそっかと答えると番組を見始める。咲夜と薫と朱鳥は三人でファッション雑誌を見ながら、華林はキッチンへと戻っていく。
「もう直ぐ夕食出来ますよ~」
華林の声が聞こえてくる。四人はそれぞれの席へと座る。それぞれの席にはグラスが置かれており
「今日はクリスマスなので一応お酒準備しました。食前酒のカンパリ・ソーダです」
赤い色のお酒が出される。
「お、やった」
武はカンパリ・ソーダを一口飲む。
「おっ旨いな」
皆もカンパリ・ソーダを飲むが咲夜は不思議そうな顔をする。武はそれを確認すると三人の目線が反れている時に自分のグラスと咲夜のグラスを取り換える。それを見て咲夜は嬉しそうに笑う。咲夜も一口飲み。
「本当ね、苦みがあるけど美味しいわね」
咲夜は嬉しそうに言う。武はそれを見てカンパリ・ソーダを一気に飲む。
「武さん、もう一杯飲みますか?」
華林が訊ねてくる。
「おっ!お願い」
「武・・・」
咲夜がそれに注意をしようとするが。
「なぁ咲夜、もうそろそろ良いんじゃね?俺たちも来年には二十歳になるんだし既に社会人なんだぜ。飲みにケーションも必要だと思うんだ。お願いだよ~」
武は顔の前で両手を合わせお願いする。
「・・・・・・程々にしなさいよ?深酒は厳禁だからね?それから毎日飲むのは駄目だからね」
咲夜はしょうがないとばかりにそう言った。
「やった!」
武は咲夜からのアルコール解禁のお達しが出て嬉しそうに言った。
「じゃあ注いできますね」
華林はキッチンへと向かった。
「武はんは咲夜はんに頭が上がらないんどすなぁ」
「そそ、そんな事ないぞ?」
薫の言葉に武は反論するが力はない。
「はい、お代わりです。それとカプレーゼです」
華林はお代わりのカンパリ・ソーダと大皿を持ってくる。
「ふふ」
咲夜も笑いながらもう一口カンパリ・ソーダを飲む。
「晩酌の時には私もお付き合いしますよ」
「私も一緒します~」
朱鳥と華林がそう言ってくる。
皆でカプレーゼを食べていると次の料理、ラザニアとパンのグリッシーニが運ばれてくる。
「おっラザニアだ」
武が嬉しそうに声を上げる。
「武さん、ラザニア好きなんですか?」
「おぉ!大好きだぞ」
武のその言葉を華林は心のノートに書き留める。皆でワイワイ言いながらラザニアを食べていく。次に出されたのはスープのミネストローネだ。
「華林のミネストローネ旨いんだよなぁ」
武は嬉しそうにミネストローネを食している。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
華林もそう言って貰え嬉しそうだ。
「次は七面鳥は無理だったので鶏の丸焼きです」
ドンとテーブルに置かれたのは丸々としたローストチキンだった。香草が利いてるのか良い香りがしてくる。華林がそれぞれ切り分けていく。
「うん香草が利いてて旨い!」
太ももの部位を食べながら武は嬉しそうにしている。それを見ながら華林はニコニコしている。次に出されてきたのはアランチーニにだった。
「おっライスコロッケ」
「あっ知ってましたか?」
華林が問い掛ける。
「おう、昔イタリアに行った時に食べた事がある」
「懐かしいわね」
咲夜も昔を懐かしむ様に言った。
「二人は色々なものを食べてるんですね」
華林の言葉に。
「でも華林の料理は負けず劣らず旨いぞ」
「そう言って貰えると嬉しいです」
華林は武に何度も言われ照れていた。
次に出されたのは真鯛一尾まるごと使ったアクアパッツアだった。華林はそれぞれ取り分けて渡していく。それを皆が食べていく。
「ふ~う、結構腹一杯になったなぁ」
コース料理もかくやと料理が出されてきていた。
「最後はデザートですよ。クリスマスなのでパネットーネにしてみました」
華林はそう言い菓子パンを持ってきた。テーブルの上で切り分けて渡していく。
「どうぞ」
華林はそう言って、皆がパネットーネを食べていく。そして咲夜の顔が少し曇る。武はそれを見逃さず。
「咲夜、あーん」
自分のパネットーネを切り分けてフォークに刺して咲夜に差し出す。
「え?」
「ほら、あーん」
「あ、あーん」
武の差し出したパネットーネを咲夜は食べる。
「旨いだろ?」
武はそう言った。
「えぇ華林さんが作ったものだもの、勿論美味しいわ」
咲夜は笑顔でそう言った。残りの三人は自分もあーんをしてもらうか悩んでいた。
「ごちそうさま。あぁ~腹一杯もう入らない」
武はクリスマスディナーを十分に堪能しそう言った。
「おそまつさまでした」
華林はそう言い頭を下げる。
「さぁ華林さんは武とリビングで休んでいて、洗い物は私たちでするから」
咲夜は微笑みながらそう言った。武はカンパリとソーダ、グラスを二つを持って華林とリビングへと向かった。
「華林お疲れ様」
武はカンパリ・ソーダを作り華林にグラスを渡した。
「ありがとうございます」
華林はグラスを受け取りチンとグラスを鳴らすと二人で飲んだ。武はゴクンと飲む華林の喉を艶めかしく感じた。
「朝から準備大変だったろう?」
「そんな事無いですよ。これが私の仕事ですし料理自体も好きですから」
華林は微笑みながらそう言ってくる。
「そっか、なら良かった」
武はそう言いカンパリ・ソーダを一口飲んだ。
「武~?ある程度飲んだらお風呂に入ってね~」
キッチンから咲夜の声が聞こえてくる。
「あー、分かったー」
グイッとカンパリ・ソーダを呷るとソファから立ち上がり。
「風呂入ってくるわ」
華林にそう伝える。
「はい、いってらっしゃい」
華林に見送られて武は自室へと戻っていった。着替えを手にして洗面脱衣所に向かいお風呂に入っていった。身体を洗い湯舟に浸かると。
「ふぅ~~~」
アルコールの回った身体が火照って気持ちが良い。
(しかし華林の料理全部旨かったなぁ~、ラザニア又作ってくれないかなぁ)
武は満腹になった身体でそんな事を考えていた。武にとって華林は既に居なければ困る存在になっていた。いつも料理は旨いし、組合の食堂より旨いとも思っているしチェーン店なんか当然目じゃない。中華料理なんかは本人が得意と言うだけあって専門店並みに旨い。今日のイタリア料理だって個人が作る料理の範囲を超えている。ラザニアが出てきた時なんて小躍りしたくなった位だ。迷宮内部でもいつも旨い飯を作ってくれていて助かっている。
(チームメンバーにも恵まれてるよなぁ~)
そんな事を考えながら湯舟に浸かる。暫くすると湯舟から上がり洗面脱衣所に出る。バスタオルで身体を拭きパジャマを着る。
「風呂から上がったぞ~」
武はリビングへ行き声を掛ける。
「じゃあ華林さんから入ってきて~」
キッチンではまだ洗い物をしているらしく声が掛かる。
「分かりました」
華林はそう言いソファから立ち上がると2階へと着替えを取りに向かう。武はソファに座りテレビを点ける。NKHでニュースを見る。雪についてのニュースをしており今夜から明日の朝にかけて都内でも積雪が観測されると言っている。公共交通機関への影響が懸念されるとも言っている。それを見終えるとチャンネルをナショナルジオグラフィティーへと変える。武はカンパリ・ソーダではなく既にカンパリだけをグラスに入れて飲んでいた。
(苦みが強くなるけど旨いなぁ)
そんな事を考えながらクイッと飲む。
「ぷは~~」
風呂に入り覚めた酔いがまた回ってくる。咲夜たちは洗い物を終えてリビングへとやって来る。
「ちょっと武、もうそんなに飲んじゃったの!?」
咲夜は瓶に入っている残りを見て驚きの声を上げる。
「おう咲夜も飲むか?ソーダで薄めなくても旨いぞ」
武は咲夜にグラスを差し出す。咲夜は差し出されたグラスを受け取るとテーブルへと置いた。
「もう!もう!武ったらアルコール解禁した途端にこれなの?」
咲夜はプリプリと怒っている。
「どうした咲夜?そんなに怒って」
武は分かっていない。そんな武の隣に咲夜は座ると。
「武、今日はお酒はお終い。ね?」
「えぇ~~」
ごねる武に咲夜は身体を密着させる。そうすると胸の感触が武に伝わっていく。
「ね?お終いでいいでしょ?」
身体をグイグイと押し付けながら咲夜は言ってくる。
「お、おう。分かった、分かったから、もう飲まないからちょっと身体を・・・」
武は降参とばかりに言うが咲夜は密着させた身体を離さない。
「ふふふ・・・」
咲夜は残念とばかりに身体を離していく。薫と朱鳥は笑いながらソファに座る。武は顔を赤くしながらテレビを見ていると暫くして華林がお風呂から上がってくる。
「お風呂、上がりました」
そう言いパジャマを着てリビングに現れた。
「じゃあ私たちも一緒にお風呂に入りましょう」
「ええどすよ」
「分かりました」
咲夜の言葉に薫と朱鳥は頷きリビングから去っていた。華林はソファに座る。
洗面脱衣所に移動した咲夜たちは服を脱いでいく。
「わざとどすか?」
「ん?何が?」
「武はんと華林はんを二人きりにした事どす」
薫が咲夜に問い掛ける。
「勿論よ、華林さんは朝から頑張ってくれてたじゃない?ご褒美があっても良いと思うのよ」
「ご褒美ですか?」
朱鳥が咲夜に尋ねる。
「そ、まぁ武の事だからキスまでだと思うけどね。まぁどんなキスになるかは華林さん次第ね」
咲夜は下着を脱ぎながらそう言った。
「キスだけどすか?」
「そうよ、前も言ったと思うけど、そこら辺は武ヘタレだから」
微笑みながら咲夜は言う。
「そんなにどすか?」
「えぇそんなによ。行き止まり迄追い詰めないと駄目ね」
着ていた服を洗濯機に入れながら話した。そのまま浴室へと入っていった。
リビングでは武と華林の二人がソファに座っていた。武はテレビを見ており、華林は武を見ている。暫くは静かな時間が過ぎるが華林はカンパリをグラスになみなみ注ぎそれを一気に飲む。
「おいおい華林・・・」
それを横目で見た武はギョッとした表情になる。華林はスクッと立ち上がると武の隣に座る。
「・・・武君」
「何だ華林?」
武は隣に座ってきた華林に驚いて聞き返した。
「武君、私今日頑張ったと思うんですよ」
「あぁ朝から頑張ってくれてたよな」
「だからご褒美」
「ご褒美?」
「そう、ご褒美・・・」
華林はそう言うと武の頬に両手を当ててキスをしてきた。
「!?!?」
武はいきなりの事で驚き固まった。
「武君、ご褒美です」
華林はそう言うともう一度キスをしてくる。そして舌を武の口の中に入れていき嬲っていく。武はされるがままにされソファ押し倒された。華林は武に跨りキスをしていく。
「ん・・・、くちゅ・・・うん・・・・・・」
武の舌を見つけると華林は頬を上気させながら絡めてくる。
「か、華林・・・」
「駄目ですよ武君、キスですよ?」
華林は執拗に自分の舌を武の舌に絡めていく。武も恐る恐る華林の舌に絡めていくと華林は嬉しそうに笑い積極的に舌を絡めてくる。押し倒された形の武は華林の唾液が口の中に流れ込みゴクリと喉を鳴らす。
5分程キスを繰り返し続ける華林の柑橘系の爽やかな香りが武の頭の中をクラクラさせる。華林は一度唇を離すと起き上がり上気した顔でパジャマのボタンに手を掛けようとする。
「ちょ!ちょっと待て!」
武は慌てて華林の手を抑える。
「何故?」
華林はコテンと首を傾げ聞いてくる。
「それは駄目だ」
「何でですか?武君だってこんなに・・・」
華林は武の下半身に優しく手を添える。その他人に触られる感触に武は背筋にビリビリとした感覚が上がってくる。
「気持ち良くないですか?」
さわさわと触りながら華林が聞いてくる。気持ち良いと言いそうになるのをグッと我慢し武は。
「その内、三人が戻ってくる。だから今日はキスだけの日だ」
武は何とかそう言う。それに対し華林は少し悲し気な顔をして。
「キスだけの日ですか?」
「そう。キスの日。キスだったら幾らでもするから」
「本当ですか?」
「あぁ本当だ」
武は真剣に答える。ここで答えを間違えると大変な事になる。
「なら武君の唾液も飲ませてください」
「じゃあ、この態勢じゃ無理だろ?」
武は今の態勢を指し示して華林に言う。
「じゃあ起き上がってください」
武はソファから起き上がると。華林はキスをしてくる。クチュクチュとキスを続け身長差から武が上からキスをする形になる。
「ふむ・・・クチュ・・・あふぅ・・・」
華林は武の口から流れ込む唾液を積極的に飲み込む。コクリコクリと鳴る喉が艶めかしい。
「もっとキス・・・」
心の底から嬉しそうに華林は笑い、武の唇を甘噛みしてくる。華林は腕を武の頭の後ろに回しもっと密着しようとしてくる。
「ハッ・・・ハッ・・・ハァハァ・・・・・・」
互いの息遣いが荒くなっていく。それでも華林はキズを止めない。ただコクコクと武の口から流れ出る唾液を飲んでいく。武は華林が身体を押し付けているので胸の感触まで伝わり大変だ。キスのし過ぎで武の頭の中はボーッとしてきた。長い永遠とも思える時間をキスを繰り返す。
「出たわよ~~」
廊下から咲夜の声が聞こえてくる。
「華林、三人が戻ってくる」
「武君もう終わりですか?」
「あぁそうだ」
「残念です・・・」
華林は名残惜しそうに武から身体を離す。武は唾液塗れになった華林の口の周りをパジャマの裾で拭いてやり。自分の口の周りも拭う。
「じゃあ最後にこれだけ」
そう言うと華林はチュッと武に口付けした。そして二人ソファに座る。
咲夜たちはリビングに現れ、場の雰囲気を読み取り何かがあった事は理解したがそれに対しては何も言わず。
「ちょっと武!お酒殆ど無くなってるじゃないの。まさか飲んだの?」
咲夜が武に問い質す。
「あ、飲んだのは私です」
ついさっきまでキスを繰り返していた華林は上気した顔でそう言った。
「あらそうなの?武が飲んだんじゃなかったら問題無いわ」
咲夜はそう言いソファに座る。
「華林はんはお酒強いんどすか?」
薫もソファに座りながら訊ねてくる。
「う~ん、どうなんでしょう?自分でもよく分かりません」
華林はコテンと首を傾げながら答えた。
「朱鳥さんはお酒飲みそうね、九州の人ってお酒が強いんでしょ?」
「どうでしょうか?人並みには飲めると思いますが」
朱鳥はソファに座りそう答える。女性陣が会話をしているその間、武はひたすらボーッとしていた。
「そろそろお茶にしましょうか」
咲夜はそう言い準備を始める為にキッチンへと向かって行った。準備を終えた咲夜がリビングへと道具を持って現れる。
「はい、武。紅茶よ」
「あ?あぁ」
武は出された紅茶を一口飲む。
「美味しい?」
「あぁ?旨いぞ?」
咲夜の問い掛けに武は答える。砂糖も入れずに飲む武に皆は笑顔を浮かべた。会話に花を咲かせる女性陣とは対象に武はボーッとテレビを眺め続けていた。番組の内容なんて何一つ頭に入ってこない。
(気持ち良かった~~)
頭の中にあるのはただそれだけだった。暫くボーッとしながら紅茶を飲んでると。
「苦い・・・」
ポツリと呟いた。
「くすくす、何よ武。お砂糖入れていないんだから苦いに決まってるじゃない」
咲夜が笑いながら砂糖瓶を差し出してくる。
「あれ?そうだったか?」
武は紅茶に砂糖を入れていった。
「うん旨い」
「変な武ね」
やっと武は頭が働き出す。そうして番組を見始める。咲夜たちは明日の事について色々と話をしている。明日の事と云えば武のスーツを作りに行く事だ。
「ねぇ武。明日は10時頃でも大丈夫?」
「あぁん?それで問題無いぞ」
武は答える。そうして時間は流れてゆきお茶会も終了となる。食器を洗い女性たちは2階へと上がってゆく。武も洗面脱衣所に移動し歯磨きをし就寝の準備を整える。
ベッドに横になり寝ようかとする時、ピコンと音が鳴りチャットツールに新着メッセージがきた事を伝える。
(何だ?)
武はスマホを手に取るとアプリを起動させる。そこには咲夜からのメリークリスマスの言葉と共に1枚の写真が添付されていた。写真を見てみるとサンタ帽を被った咲夜が真っ赤なランジェリー姿で写っていた。真っ赤なガーターベルトとストッキングもセットになっている。
(な、な、な・・・)
続いてピコンと音が鳴り薫からもメリークリスマスの言葉と共に写真が添付されている。見てみると紫色のランジェリー姿で写っている。大きな胸をこれでもかと強調した姿だ。続いてピコンピコンと音が鳴り朱鳥と華林からもメリークリスマスの言葉と共に写真が添付されている。朱鳥は真っ白なランジェリー姿でこれまた真っ白なガーターベルトとストッキング姿だ。華林は緑色の細やかな刺繍の施されたベビードール姿で下着が透けて見えている。
(な、なんつぅ~姿で・・・)
武は四人のランジェリー姿を見てもんもんとしながら寝るしかなかった。




