表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽玄神話世界  作者: 元橋
22/23

22話

 12月21日、武たちは東急電鉄東横線で渋谷駅から電車に乗り多摩川駅まで来ていた。多摩川駅を降りると宝来公園通りを歩いて行く。一つのマンション前まで来ると渦状に歪んだ空間が見える。

「さて、ここだな」

 武は歪みの前で止まると後ろを振り返る。

「今年最後の迷宮だ、何時も通り注意していこう」

 女性たちは頷き渦へと手を伸ばしていく。場が転移し周囲が石造りの迷宮へと変わる。

「通常の迷宮型だな、ただ暑いな」

 武はそう呟き道を進んで行く。進む先には部屋がありホブゴブリンが3匹居る。ホブゴブリンを見つけた瞬間、武と朱鳥は駆け出す。敵に戦う準備等させない。武は和剣を振り上げ切り下し1匹を殺す。そのまま和剣を手放し2匹目のホブゴブリンに体当たりの要領でショートソードを引き抜くと胸へ突き刺す。朱鳥は3匹目のホブゴブリンを転ばすと首の骨を踏み砕き、顔面も踏み抜き殺す。戦いは一瞬で付いた。武は和剣を拾うと血を振り払い鞘へと納める。

「よし!問題無し」

 武は戦闘の感触を確かめそう言った。そのまま道を進み続けるとホブゴブリン3匹の3連戦だった、特に問題も無く戦闘は終了した。更に道を進むと扉が現れ薫が罠の確認をする。罠が無いのを武に伝えると武が扉を開ける。中にはインプが3匹飛んでいた。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 咲夜の魔法がインプを襲う。翼を切り裂き落ちてきた所を武が和剣で切り殺す。薫も弓矢を使いインプを攻撃する。1本2本3本と突き刺さる度にインプは弱り遂には落ちてきた。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 2度目の咲夜の魔法が3匹目のインプの首を切り落とし戦闘は終了した。部屋の奥には上へと上がる階段があった。

「階段か、迷宮では初めてじゃないか?」

「そうですね、迷宮では初めてになります」

 朱鳥が同意してくる。

「取り敢えず上がるか」

 武がそう言い皆で階段を上がる。上階へと上がるとそこは通路となっていた。通路を進むと脇道が多くまさに入り組んだ迷路という作りになっていた。途中、ホブゴブリンやインプに出会うが1匹や2匹なので相手にはならなかった。それよりも武たちを悩ませているのが迷路だった。

「ここはさっき来たよな」

「はい、さっき来とります」

 武の問い掛けに薫が答える。

「進むしかしょうがないか」

 武はそう言い歩を進める。進む進む進む、只進む。進み続けた結果、この階層では初の部屋を見つけた。そこには上へ続く階段があった。

「はぁ~~やっと迷路を抜けたか」

 武はそう言い階段へと向かい上階へと上がっていった。上がると目の前には通路が続いていた。通路を進んで行くと今度は長い通路となっていた。

「何かこの通路長くね?」

 かれこれ1時間以上は通路を歩いていた。途中休憩をはさみ通路を歩き続けていた。更に1時間程歩き続けると扉が現れた。薫は扉に近付き罠の確認に移る。

「罠は無いですけど中に何か居ます」

 薫はそう告げた。武は鞘から剣を抜き扉を開いた。中には5匹のホブゴブリンが居た。武は駆け出し1匹のホブゴブリンの首を刎ねる。そのまま近くにいたホブゴブリンを袈裟懸けに切り殺す。続いて朱鳥が室内に駆け込んできて1匹のホブゴブリンを転ばし首の骨を折る。武は4匹目のホブゴブリンと剣を合わせ弾き返すと上段から剣を振り下ろしホブゴブリンを切り殺した。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 咲夜の魔法が5匹目のホブゴブリンの片足を切り落として後は悠々とホブゴブリンの処理をしていった。ホブゴブリンたちが居た部屋の奥には扉があり薫が罠の確認に向かった。

「罠は無いどす」

 薫がそう言い武が扉を開ける。すると上階へと上がる階段があった。階段を上がると部屋になっていた。中には宝箱が一つ置かれていた。薫はゆっくりと部屋の中へと入っていく。周囲に罠が無い事を確認すると宝箱の罠を調べ始める。宝箱には罠が有ったらしくカチャカチャと罠の解除に移っていった。

「罠解除終わりました」

 薫がそう言うと武は宝箱の蓋を開けた。中には銀貨の詰まった袋が入っていった。

「おっずっしり」

 武は嬉しそうに言うと華林へと預けた。

「咲夜、今何時だ?」

「もう直ぐ19時になるわね」

 咲夜は懐中時計で確認して答えた。

「ならここで野営だな」

 武は皆にそう伝えた。すると華林は無限袋からキャンプ用品を取り出し皆で組み立てていく。中からバスタブとドラム缶も出してくる。

「おぉ?風呂入るのか?」

 武が訊ねる。

「暑くて汗でベトベトなのよ。お風呂でサッパリしたいの!」

 咲夜がそう答えた。

「ふ~ん」

 武が興味なさ気に頷いた。焚き火台に薪を焚べていき火を点ける。後ろは決して振り向かない。その間に女性陣はお風呂に入っていく。ワイワイと騒ぐ女性たちの声が聞こえてくる。

「あぁ~サッパリした」

 咲夜はそう言いチェアに腰掛ける。他の女性たちもお風呂から上がると次々とチェアに座っていく。華林は食事の準備をしていく。全員いつもより薄着だ。そうなると武は目のやり場に困ってしまう。

「武もお風呂入ってらっしゃい」

「あ?あぁ」

 咲夜の言葉に頷き武はお風呂へと入っていく。湯舟の温度は何時もより低めだ。その湯舟の中で武はゆっくりする。

「はぁ~~~~~~」

 武の身長に対して湯舟は小さいので必然的に武の足は湯舟から出る形になる。足を体操座りの要領で曲げ頭まで湯の中に沈める。暫しその体勢でジッとする。

「ぷはっ」

 頭を出し息をする。

(なあぁ~んかな、何か何かなんだよなぁ~)

 武は固まらない考えに頭を悩ませる。悩ませるが答えは出てこない。そうして湯舟から上がるのだった。

「咲夜~、水掛けてくれ~」

 パーテーション越しにそう伝えるとにょきっと杖の先が出てきて武に水を浴びせてくる。そしてサッパリしてお風呂を後にした。

「武にしては長風呂だったわね」

 咲夜がそう問い掛けてくる。

「うん?まぁな」

 武は曖昧に答える。

「しかしこの迷宮何でこんなに暑いんどすかね?」

 薫が疑問を口にした。

「分かんねぇけど、迷宮クリアしたら何か分かるかもな~」

 武はそう答えた。暫くすると夕食が出来上がり皆で食べる。今日の献立は八宝菜に味噌汁とご飯の献立だった。そうして食事を終えると皆は思い思いの行動をする。就寝の時間になると女性陣はテントへと入っていき武は寝ずの番となる。

(本でも持ち込んでも良いかもなぁ)

 武は焚き火を見ながらそんな事を考えていた。6時間程経つとテントから一人出てくる。

「武、代わるわね」

 そう言って咲夜は近付いてきた。

「あぁ、今日は咲夜の番か頼むわ」

 武はそう言いチェアから腰を上げる。

「あ、そうだ武。ん」

 咲夜はそう言い目を瞑り唇を出してくる。

「はぁ?」

「お休みのキスして」

「えぇ~」

「早くして」

 咲夜はジッと待っている。咲夜はあの夜以来、二人きりになると何かとキスを求めてくる様になっていた。武は咲夜の肩を優しく持つと咲夜とキスをする。

「ありがとう、お休み武」

 咲夜は笑顔でそう言ってくる。

「あぁ、お休み咲夜」

 武はテントに入ると女性たちは暑いのか寝袋に入らずに寝ていた。薄着で寝ているので胸の大きさが露になり武は顔を赤くした。そのまま自分の寝床へ行くと就寝するのだった。

 テント内では数時間すると華林が目を覚ます。朝食の準備の為にテント内ではいつも一番先に目を覚ます。上体を起こし周りを見渡すと皆寝ている。隣には武が寝ているのを確認すると寝ている武の頬にチュッと軽くキスをした。

(キャーキャーキャーしちゃった武さんにキスしちゃった)

 華林は自分でしておきながら顔を真っ赤にしていた。顔の火照りを鎮めると華林はテントから出る。

「おはようございます咲夜さん」

「おはよう華林さん」

 二人は挨拶を交わす。

「咲夜さん、武さんに私キスしちゃいました頬っぺたにチュッって」

「あら良かったわね。頬じゃなくて唇にすれば良かったのに」

 咲夜は笑顔で言ってくる。

「やっぱりファーストキスはちゃんと取っておきたくて・・・」

 華林は自分で言いながら照れている。

「これからもどんどん頑張ってね」

 咲夜は笑顔で華林を焚きつける。

「はい、頑張ります!」

 華林は笑顔で頷いた。そのまま笑顔で朝食の準備に取り掛かる。暫くすると薫と朱鳥もテントから出てくる。挨拶を交わし身支度を整えていく。

「そろそろ武起こしてちょうだい」

「あ、ならうちが起こしてきます」

 薫はそう言いテントへと入っていった。テントからは欠伸をしながら武が現れ挨拶を交わした。

「ほら武、顔洗ってシャキッとしてきなさい」

 咲夜に促され武は顔を洗いに行った。その後、皆で朝食のクロックムッシュとミネストローネを食べ出発の準備を始めていった。

「じゃあ行くか」

 準備が終わると武の号令の下に皆で階段を上がっていった。上階へ行くと部屋になっており通路が伸びていた。武たちは通路を進み続けた。途中部屋にホブゴブリンが数度居たが3匹なので何の問題も無く討伐した。右へ左へと通路を進むと上階へと上がる階段が見えてきた。

 武たちは階段を上がると迷宮ではなく洞窟となっていた。

「おっ雰囲気変わったな」

 武たちは洞窟を進み続ける。

「しかし更に暑くなってきたな」

 武は額の汗を拭いながら後ろを振り返ると皆汗をかいていた。

「水分補給でもするか」

 武はそう言い咲夜が魔法で出した水で皆の喉を潤す。休息を終えると更に洞窟内を進んで行く。1時間程洞窟内を歩くと視界が開けた。そこには。

「こりゃ迷宮も暑い訳だ」

 武はぼやいた。そこには溶岩の川が至る所に流れている火山の中腹だった。

「こん中を歩いて行くんどすか」

「歩かない事にはどうしようもないもんなぁ」

 薫の呟きに武が答える。

「取り敢えず、足元だけには注意していこうぜ」

 武の忠告に皆頷き歩いて行く。暫く歩いていると。

「噴火でもしたら一溜りもないわねこれ」

 咲夜がポツリと呟く。

「怖い事言うなよ咲夜。考えない様にしてるんだから」

 武は半笑いで言う。

「あらそうだったの?ごめんなさい」

 何故か咲夜は笑顔だった。

 溶岩の川が流れる中を歩ける場所を探しながら歩いて行く。細い溶岩の川は跨ぎ川幅の広い溶岩の川は避けていく。山頂を見上げれば溶岩をボコボコと噴き上げているのがよく見える。そんな中を武たちは歩き慎重に進んで行く。

「これってどっち目指して歩けばいいんかね?上か?下か?」

 武は後ろを振り返り問い掛けた。皆はう~んと悩んでいた。

「頂上を目指して問題無いと思います。山岳系の迷宮は大体が山頂近くに迷宮核がある事が多いですから」

 朱鳥がそう助言してくる。

「なら上目指すか」

 武はそう言い進路を山頂へと向けた。通常の登山と違い溶岩の川があるせいでまるで迷路の中を進んでいる様だった。

「あぁ~~サッパリする」

 途中の水分補給の時に武は冷水を浴び身体の熱を冷ます。その様を女性陣はジッと眺める。

「な、なんだよぉ」

 武は視線に耐え切れず問い掛けた。

「いいえな~~んにも、誰一人として一人だけ水浴び出来て羨ましいなぁなんて思ってもいないから」

 咲夜が答える。

「思ってるって事じゃねぇかそれ」

「武はんはいけずどす」

 薫は頬を膨らませている。

「そう言うなよぉ薫」

 武は困り顔でそう言った。

「はいはい、じゃあさっさと迷宮クリアしましょう」

 咲夜がそう言って〆た。

 武たちは少しづつだが山頂に近付く道を見つけ歩き続ける。暫く歩くと少し開けた場所に出た。そこには。

「サラマンダー、火吹き蜥蜴です。注意してください」

 朱鳥の忠告が飛ぶ。3匹のサラマンダーはこちらを確認すると各々が火を噴いてきた。武はそれを横にかわし和剣を鞘から抜く。朱鳥は武と正反対の場所に陣取る。華林は後ろへと下がる。

「水よ、水刃となりて敵を裂け」

 咲夜が魔法で1匹のサラマンダーを切り裂くが致命傷には至っていない。薫が続いて弓矢を放つ。武はサラマンダーの正面には立たず横から切り裂いていくがサラマンダーは尻尾で武を弾こうとする。武は目標を尻尾へと切り替えサラマンダーに更に近付く。

「せいっ!」

 剣一閃、サラマンダーの尻尾を切り落とした。尻尾を切り落とされたサラマンダーはギャギャと叫び武の方を向いて火を噴いてくる。武はそれを横跳びに避けるとサラマンダーの首目掛けて和剣を振り下ろし頭を切り落とした。

 朱鳥の方は最初から尻尾に狙いを定め足甲を使い切り落とした。その後、サラマンダーに跨ると突きを放ち続けた。暫くするとサラマンダーはぐったりし動かなくなった。

 3匹目のサラマンダーは薫が弓矢を放ち続け弱らせていく。そこに

「水よ、水刃となりて敵を裂け」

 2度目の咲夜の魔法がサラマンダーの胴体を真っ二つにする。そうして戦闘は終了した。

 するとその場に迷宮核と大きな宝箱が出現した。

「おっこれで終了だな」

 武は血を払い落とし剣を鞘へと納める。薫は宝箱に近付き罠がないかを確認する。

「罠は無いどす」

 薫がそう言うと武は宝箱の蓋を開ける。中には大きな赤い石の塊が入っていた。

「何だ?石?岩?」

 武が不思議そうに言う。

「これは火竜石だと思いますよ」

 朱鳥が武に伝える。

「火竜石っていや火力発電で使われたりするやつか?」

「えぇそうです。でもここまで大きいのは私も始めてみました。これならば一財産になりますよ」

 笑顔で朱鳥が答える。

「おぉマジか!?」

 武は早速、火竜石を持ち上げようとする。

「ふんぬぅぅぅ!こいつ思ったより重いぞ。そりゃぁぁぁぁ!」

 武は思い切り力を込めて宝箱から火竜石を取り出した。

「こいつ咲夜より重いぞ絶対」

 そう言い振り向くと咲夜が腕を広げ待っていた。

「??」

 武は不思議そうに咲夜を見る。

「本当に私の方が軽いのか確かめて」

「えぇ~~」

「早く!」

 咲夜は腕を広げ待っている。武はしょうがないとばかりに咲夜に近付き背中と膝裏に手を伸ばした。咲夜は武の首に腕を回した。そうして咲夜を持ち上げると。

「あぁ~咲夜、お前の方が確実に軽いわ。つか軽すぎじゃね?ちゃんと飯食ってんのか?」

 お姫様だっこをしながら武は呟いた。

「失礼ね、ちゃんと食べてるわよ。それに適正体重よ」

 咲夜は嬉しそうに言う。薫、朱鳥、華林の三人は咲夜を羨ましそうに見ている。

 武は咲夜を地面に立たせると火竜石を華林の無限袋へと入れていく。そうして迷宮核の水晶球を壊すと現実世界へと帰還する。

「寒っ!!」

 現実世界へと戻ると15時頃だが雪がチラついていた。灼熱の世界から一気に氷点下近い気温まで下がり寒さが一層堪える。

「皆さんのコートです。どうぞ」

 華林は無限袋から皆の分のコートを出し手渡していく。

「うぅ~寒い寒い、さっさと家に帰ろうぜ」

 武の言葉に皆頷き多摩川駅まで歩いて行き東急電鉄東横線で渋谷駅まで電車に乗り屋敷へと帰って行くのだった。

「先ずはお風呂よ」

 帰り着くなり咲夜はそう言った。

「じゃあ沸かしてくるわ」

 武はそう言い風呂場へと向かって行った。

「皆も汗で気持ち悪いだろうから一緒に入りましょう」

 女性たちはその意見に賛成なようで各自自室へと戻りお風呂に入る準備をしていく。

「風呂沸いたぞ~」

 武は2階に向けそう声を掛けた。

 女性たちは洗面脱衣所に向かい服を脱ぎ始めた。脱いだ服は洗濯機の中へ入れ下着は専用ネットに入れて洗濯機に入れていき運転ボタンを押した。

「あぁ~もう汗でベトベトだったのが寒さで引いてしまったわね」

「一気に40℃近くの差がありましたからね」

 咲夜の言葉に朱鳥が答える。

「早う入りまひょ」

 薫の言葉に四人は浴室へと入っていく。2本あるシャワーを順番に使っていき身体を洗っていく。

「でもさっきの咲夜さんは羨ましかったです」

 華林が湯舟に浸かりそう言ってくる。

「何の事?」

 咲夜が髪を洗いながら問い返す。

「お姫様だっこです」

「あっそれうちも思いました」

 薫ものっかってくる。

「うふふ、やっぱり羨ましかった?」

「羨ましいに決まってます。だってお姫様だっこですよ、私もして貰いたかったです」

「あら、ならあの場でそう言えばよかったのに」

 咲夜はそう言う。

「「えっ?」」

 薫と華林は驚いた。

「そしたら私もしてあげなさいよってサポート出来たのに」

「そんなんありなんどすか?」

 薫が咲夜に尋ねる。

「武から動くのを待っていても無駄よ?この10年以上の付き合いで分かっているもの。彼はねどんな豪華で美味しそうな料理が目の前にあっても、食べてくださいって言わないと絶対に手を出さないタイプなのよ」

 咲夜は髪をシャワーで流しながらそう言う。

「そんなにどすか?」

「そんなによ。もし武が少しでも自分で動くタイプなら今頃は私たちSEXくらいしてるわよ」

「せっ!」

 華林は顔を赤くしていた。

「朱鳥さんはどないどすか?」

 薫は髪を洗っている朱鳥に尋ねた。

「わ、私ですか?私も色恋事は苦手な方なので未だに何も・・・」

 朱鳥の言葉は尻切れになっていく。

「三人に言っておくけど武とどうにかなりたいのならばタイミングや雰囲気は無視していける時にいかないと駄目よ?」

 その言葉に三人は真剣に耳を傾ける。

「場所が何処だろうと周りに人が居ようと関係無しにいかないと駄目よ」

 咲夜はそう伝える。

「そうなんですね。分かりました!」

 華林が咲夜の言葉に反応する。

「だから三人も頑張ってね。って言っても私もまだキスだけだけどね」

 咲夜は照れながらそう言い髪も洗い終わり湯舟へと入っていく。

「ふぅ~やっぱり自宅のお風呂が一番ね」

 ホッとしながら湯舟に浸かる。朱鳥も髪を洗い流し纏めると、しつれいしますと言いながら湯舟へと入っていった。

「しかしこれ程大きいお風呂だと四人でも十分ですね」

 朱鳥は湯舟に浸かりそう言った。

「ですね、自室も広いですしキッチンも広くて大きいです」

 華林も朱鳥の意見に追随する。

「喜んで貰えてるなら、ここを選んで良かったわ」

 咲夜は笑顔でそう言った。

「ほんまなら幾ら位するんどすか?」

 薫は前々から知りたかった事を咲夜に聞いた。

「そうねぇ10倍以上って所かしら」

「やっぱり・・・」

 事も無げに言った咲夜に薫は呆れ果てた。こんな豪邸に月8万で住めてる事が異常なのだ。それもこれも。

「武の為だから気にしなくていいのよ」

 咲夜はいつもの如くそう言う。

「武さんってこんなにも咲夜さんに愛されてるんですね」

 華林がうっとりと言う。

「そう。私はこの世の誰よりも武の事を愛してるわ」

「でも、うちらも武はんの事愛して欲しいんどすなぁ?」

 薫は再度尋ねる。

「えぇそうよ。おかしな考え方だとは自分でも思うわよ?でも私だけで武を独り占めしたくはないの。皆に武を愛して欲しいのよ」

 優しく微笑みながら咲夜はそう言った。

「私、頑張ります!でも皆さんに比べて胸も小さいし・・・」

 華林は勢い込んで言ったが咲夜、薫、朱鳥の胸と自分の胸を見比べて言葉が小さくなっていく。

「あら、そんなのは重要ではないわ。大切なのはどれだけ武を愛してくれるかだから」

 咲夜は華林にそう諭す。

「だから薫さんも朱鳥さんも頑張ってね」

 笑顔で二人にそう言った。

「「頑張ります」」

 二人はそう答えた。

「でも武にも頑張って欲しい所はあるのよね」

「何どすか?」

 薫が訊ねる。

「ファッションよファッション。ユニシロが悪いって訳ではないけどそれしか着てなかったじゃない?この前色々服を買ったけど、これを機に武の服装に対する意識を変えるのよ」

 そう咲夜は意気込んだ。

「それにこれ見てよ」

 そう言うと湯舟から上がりシャワーの方へ近寄ると1本のボトルを手にした。

「これ1本で頭から顔に身体を洗ってるのよ。あり得ないわ」

 そう言うと湯舟へと戻っていった。

「男性ってそないなものとちゃいますか?」

 薫が一応、武を擁護する。

「お父様もお兄様も違ったわよ?」

 咲夜は反論をする。

「う~ん、男性それぞれって事じゃないですか?」

 華林が言った。

「私は武を愛しているわ。だからこそもっと武にはカッコよくなって欲しいのよ、地は良いんだから。皆も今よりカッコいい武の方が良いでしょう?」

 咲夜の意見に三人はうんうんと頷く。

「なら私たちで武の意識を変えていかないといけないわ。化粧迄はしなくてもいいけど、せめて香水くらいは着けて欲しいわ」

 右手で拳を作り咲夜は力説する。

「どうやってですか?」

 朱鳥が訊ねてくる。

「次に服を買いに行く時にそれとなく誘導するわ。スーツを作る時なんかが良いわね」

「武さんのスーツ姿カッコ良かったですぅ」

 華林はその姿を思い出しながら言った。

「テーラーはお父様やお兄様の使っている所にするから店員にもそれとなく言うようにお願いしておくわ」

「「「おぉ~~」」」

 三人は咲夜の行動力に感心していた。

「三人にはその時はバックアップをお願いするわね」

「他にする事はありますか?」

 華林が咲夜に問い掛ける。

「他に?そうねぇ・・・・・・、あっ武にボディタッチは有効よ」

「ボディタッチどすか?」

「そ、兎に角こっちからグイグイいかないとね」

 咲夜はそう伝える。薫、朱鳥、華林の三人はそれぞれ考え込んでいる。

「そろそろ出ましょうか」

 咲夜はそう言い湯舟から出て扉へと近付いていった。他の三人も湯舟から出てくる。洗面脱衣所に出るとバスタオルを使い雫を拭くと身体に巻いた。髪はタオルで水気を取るとそのまま巻き洗面台へと向かった。

 洗面脱衣所はエアコンが既に入っており室内の温度は暖かくなっている。

 化粧水を使用した後に乳液を使用し肌ケアも怠らない。ヘアミルクを髪に塗りドライヤーで髪を乾かしていく。

「咲夜はんの下着は気合入ってるのが多いどすなぁ」

「そうかしら?まぁ何時でも武に見られても大丈夫な様にはしてるわね。薫さんの下着も可愛いじゃないの」

 咲夜は薫の姿をみながら言った。

「大きいと中々良い下着が少ないんどすなぁ」

「羨ましい悩みです」

 華林が自分の胸に手を当てながら言ってくる。

「華林さんも別に小さい訳では無いとおもいますが」

 朱鳥が髪を乾かしながら言った。

「でも皆さんの中では一番小さいですし・・・」

「大きさではないわよ、要は使い方よ」

 咲夜がそう言ってくる。

「使い方ですか・・・・・・」

 華林はそう呟きながら下着を着けていく。

 女性四人はそれぞれ身支度と整えると洗濯機の中の洗い物を乾燥機の中へと入れて運転を開始する。そしてバスタオルとタオルを一枚残し洗濯機の中へと入れていく。

 洗面脱衣所から出ると武の自室の扉をノックする。

「武、お風呂から出たから入ってらっしゃい」

 咲夜がそう声を掛ける。

「おう、分かった」

 部屋の中からそう言葉が返ってきた。四人は2階へと上がりそれぞれの自室へと入っていく。

「さて、風呂入るか」

 武は着替えを準備し洗面脱衣所へと向かった。中に入ると今迄女性陣が居たので良い香りがする。服を脱ぐと浴室へと入る。中は今迄以上に良い香りがする。その中を頭から身体まで洗っていき広い浴槽へと入る。

「ふぅ~~~」

 武は大きく息を吐く。さっきまで女性たちが入っていたかと思うと何かムズムズする。10分程湯舟に浸かると上がり洗面脱衣所へと向かった。バスタオルを使い頭から身体までを拭いていく。バスタオルからも良い香りがする。

 下着を履き髪を乾かす。鏡で自分の姿を見ていると。

「う~~む・・・」

 何やら悩み考えている。

「やってみるか」

 それだけを呟くと洗い物を持って洗面脱衣所を後にした。自室に洗い物を置くとリビングへと向かった。キッチンでは華林が夕食の準備をしている。料理をしている華林以外は朱鳥が神棚の手入れをしていた。

「あ、そうだ華林」

「何ですか?」

「明日の午後に組合付き合ってもらってもいいか?」

「え?構いませんけど」

 華林は不思議そうに言う。

「火竜石の鑑定しないといけないだろ?」

「それなら無限袋渡しますけど」

 そう華林は答える。

「いや、そりゃ駄目だろ。無限袋は華林の物なんだから華林が居ないと駄目じゃん?」

 武は当然の如くそう言う。

「武さん・・・。はい分かりました!明日付き合いますね」

 華林は嬉しそうにそう言う。

「多分14時頃に出ると思うから」

「分かりました。準備しておきますね」

 そう答えた。武は伝える事を終えるとリビングへ行きテレビを点けた。チャンネルをナショナルジオグラフティーへと変える。暫く番組を見ていると朱鳥がソファに腰掛けてくる。

「武殿はそういった番組が好きなのですか?」

 武にそう聞いてくる。

「そうだなぁナショナルジオグラフティー、アニマルプラネッツ、デスカバリーチャンネルの3つは好きだなぁ」

 そう答える。

「地上波は余り見ないのですか?」

「地上波はニュースとNKH位かなぁ?」

「成程・・・」

 朱鳥はなにやら自己完結している様だった。

「どうかしたのか?」

「いえ、武殿の事を少しでも知っておこうと思いまして」

 そう言われると武は少し照れる。朱鳥はソファから席を立つと武の隣に座り直した。そして武の手を握り。

「色々、武殿の事を私に教えてください」

 そう真摯な眼差しで言った。

「お、おう。わ、分かった・・・」

「武殿・・・・・・、私の初めて貰ってください。」

 朱鳥は手を握ったまま顔を近付けキスをした。

「!?」

 武はいきなりキスをされ目を白黒させている。

「はぁ・・・」

 朱鳥は武の唇から唇を離すとため息を吐いた。

「あ、朱鳥??」

「どうでしたか?」

「ど、どうって?」

「気持ち良くなかったですか?」

 朱鳥は不安そうに聞いてくる。

「いや、気持ち良かった」

 朱鳥の柔らかい唇と仄かに香る白檀の匂いで武の頭の中はクラクラしていた。

「良かった・・・」

 ホッと朱鳥は安心した。

「でも何で?」

 武は朱鳥に問い掛けた。

「ただ私がしたかっただけです」

 朱鳥はそう言うともう一度武にキスをした。

「・・・朱鳥」

 武は朱鳥を抱き締めたくなったがグッと我慢した。

「武殿。武殿のしたい事をして下さい」

 朱鳥に耳元でそう囁かれて武は朱鳥を抱き締めた。

「あぁ武殿・・・」

 朱鳥は感極まった声を出した。武は朱鳥の髪に顔を埋め抱き締め続ける。朱鳥も武を抱き締め返す。

「何か恥ずかしいな」

 武は朱鳥と離れ言った。

「そうですね」

 朱鳥も顔を赤くしながら言った。

 そしてそれをキッチンから覗いていた華林。

(キャー朱鳥さん羨ましいです~)

 華林も顔を真っ赤にしていた。しかしそれでは料理の準備が出来ないので準備を進めていく。トントンとキッチンから音がしてくると武は今いる場所を思い出し朱鳥から少し距離を取ろうとするが取った距離分、朱鳥が詰めてくる。

「あぁ~朱鳥?」

「何でしょうか?」

 朱鳥は妖しく笑いながら問い掛ける。

「もうちょっと距離を・・・」

「距離ですか?今の距離は嫌ですか?」

「嫌じゃないが・・・」

 武は困り果ててしまう。その姿を見て朱鳥はしょうがないとばかりに距離を開ける。

「今日はここまでですね」

 朱鳥はそう言いほんの少し距離を取った。それに武はホッとした。暫くすると夕食の時間も近付いてきて咲夜と薫も2階から降りてくる。

 咲夜は座っている武と朱鳥の距離を見てニコリとする。

「ねぇ武、番組ニュースに変えてもいい?」

「あ?あぁいいぞ」

 咲夜は敢えて武と朱鳥の事は聞かずリモコンでNKHニュースへと変えると朱鳥とは逆の武の隣へと腰掛けた。

「咲夜、近いってば」

「あら、朱鳥さんとだって近いじゃないの」

 咲夜はそう反論する。

「そ、それは・・・・・・」

 武は言葉に詰まる。咲夜は言葉に詰まった武を無視して座ったままだ。

(う~ん、落ち着かんなぁ)

 美人二人に挟まれて武は所在なさげだった。暫くするとダイニングから

「夕食出来ましたよ~」

 華林の声が聞こえてくる。皆はテレビを消しソファから立ち上がりダイニングへと移動する。

「今日は香港式火鍋ですよ」

 料理の説明を華林がしてくる。

「へぇ~香港式って事は火鍋って種類があるんだな」

「そうですねぇ火鍋は数種類ありますけど、香港式火鍋はそこまで辛くないですよ」

 武の問い掛けに華林はそう答える。

「「「「「いただきます」」」」」

 肉に魚や野菜や海老等を鍋の中に入れて食べてゆく。つけダレは数種類準備してある。

「旨い旨い」

 武はバクバクと食べていく。

「まだまだ沢山ありますからね」

 美味しそうに食べている武を見て華林はニコニコしている。咲夜、薫、朱鳥もそれぞれ美味しそうに食べている。

「〆はビーフンですからね」

「焼きビーフンは食べた事あるけど茹でビーフンは初めてだなぁ」

 武はそう言った。〆のビーフンが終わりかけの頃、華林はキッチンへと戻っていった。10分位して戻ってくると。

「今日のデザートは胡麻団子です。熱いので気を付けてくださいね」

 そうしてお皿に盛った胡麻団子を持ってきた。

「おぉー胡麻団子」

 武は嬉しそうにしている。

「好きなんですか?胡麻団子」

 華林が聞いてくる。

「大好きだぞ」

 武は一つ胡麻団子を取り答える。

「そうなんですね」

 華林は心のノートにその事を付け加える。

「武はんは、ほんに甘味が好きどすなぁ」

「女の人の方が好きなんじゃないか?甘い物って」

「女性はカロリーを気にするものなのよ。武みたいにバクバク食べないわよ」

 咲夜は呆れた声を出す。

「そんなものなのか?」

「武の食べても太らない体質が妬ましいわよ」

「それは女性の敵ですね」

 朱鳥も羨ましそうな声で言ってくる。

「羨ましいどす」

 薫もジト目で見てくる。

「そ、そんな事言われてもしょうがないじゃないかぁ」

 胡麻団子を食べながら武は反論する。

「ま、武はもう少し女性に対して機微に触れる事ね。何をして欲しいとかね」

 咲夜は武にそう諭す。

「女性の機微ったってなぁ分からんぞ?俺は」

「無い知恵絞って考えなさい」

 咲夜はそう言い胡麻団子を口にする。

 夕食を終えると女性たちは皆で後片付けをしている。武はリビングに移りテレビでデスカバリーチャンネルを見ている。

(女性の機微かぁ~)

 武は番組を見ながら先程言われた事を考えていた。

(朱鳥もさっきはもっとして欲しかったんだろうか・・・)

 夕食前の事を思い出し武は考えを巡らせた。もっとこちらからいくべきだったのだろうかと。朱鳥に恥ずかしい思いをさせてしまったのだろうかと。

(次に似たタイミングがあったら俺からも積極的にいくべきなのか?)

 女性側からアプローチしてくるなら、こちらに対して悪い感情は持って無いはずだ。ならばこちら側からもアプローチしても大丈夫なはずだ。

(大丈夫だよな??)

 番組を頭半分で見ながら考え続けている。暫くすると食後の片付けが終わった女性陣がリビングへとやってきて恒例のお茶会となる。話題となっているのは今年も問題無く迷宮探索が終了した事だった。

「今年はもうゆっくり出来ますなぁ」

「そうねバタバタするのは大掃除の時くらいかしら」

「それを過ぎれば年末年始ですね」

「私の場合は年末年始が大変ですけどね」

 各自お茶を飲みながらダラダラと話を続けている。武はそれを横に聞きながらテレビを見ている。

「武も年末年始は帰るのよね?」

「ん?あぁ一応な」

「なによ一応って」

 咲夜は笑っている。武は年末年始の休みを丸々実家で過ごすつもりは無かったから一応と付けただけだった。

 お茶会も終わり女性たちは2階へと上がっていく。武も自室へと戻り寝る準備を始める。洗面脱衣所で歯を磨き出て行こうとすると咲夜が入ってきた。

「咲夜?どうしたんだ?」

「あぁ洗濯物を洗濯機の中へ入れておこうと思ってね」

 そう言い洗い物を洗濯機の中へと入れていった。咲夜は寝る前でレースのパジャマを着ていた。今迄のパターンだと咲夜がキスをねだってくるだろう。だから武は。

「咲夜」

「なぁに?」

 武は初めて自分から咲夜にキスをした。キスをされた咲夜は驚きで目を丸くするが直ぐに受け入れて瞳が潤いだす。

「初めてね、武からキスしてくれるの」

「そうだな」

「ねぇ、もっと強く激しくして・・・」

 咲夜はそう言いキスを再開する。強く唇を押し付けてくる。それに対して武は舌を出し咲夜の口の中へと入れていく。咲夜もそれを驚く事無く受け入れて舌と舌を絡めだす。クチュクチュと音がなりお互いの息遣いも荒くなっていく。それでも互いにキスを止めようとしない。

「・・・・・・ぷはぁ」

 ようやくお互いの唇を離すと唾液のつり橋が出来上がっていた。

「武・・・・・・」

 咲夜は武に抱き着いてきた。胸の感触と甘い花の様な香りが武に伝わってきたが武も咲夜を抱き返す。

「咲夜」

 二人は暫く抱き合っていた。

「・・・そろそろ2階へ上がるわね」

 咲夜は身体を離し赤くなった顔でそう言ってきた。

「あぁ、分かった」

「じゃあ、お休みなさい」

 咲夜はそう言い軽くチュッとキスすると2階へと上がっていった。武も自室へと戻りベッドに横になる。

(・・・気持ち良かったな)

 そんな事を思いながら武は眠りついていった。


 次の日、武と華林は組合に向かっていた。武は黒コーデュロイのパンツに白のニットとハリスツイードのジャケットを着て茶色の革靴を履いていた。華林は黒のフレアスカートに黒のニットに水色のカーディガンを着ていた。足元は黒のブーツだ。

「その服装似合ってるな」

 武は華林の服装を褒めた。

「そうですか?ありがとうございます。武さんも似合ってますよ」

 華林は顔を赤くしてそう言った。山手線新宿駅で降りると歩いて組合まで向かう。明日はクリスマスともあり街中は浮ついている。組合に着くと二人は3階の鑑定室へと向かう。

「鑑定をお願いします」

 武はそう言うとテープルに銀貨の詰まった袋を床に火竜石の塊を置いた。

「少々お待ち下さい」

 組合員はそう言い銀貨の袋を自分で火竜石の塊は男性組合員二人が裏へと持っていった。

「鑑定室ってこんな作りになってるんですね」

「華林は鑑定室来るの初めてか?」

「はい、初めてです」

 鑑定が終わるまで二人はお喋りをしていた。暫くすると組合員が戻ってくる。

「先ず銀貨の方ですが今日の銀相場で1,564,542円になります」

「それで構いません」

「それと火竜石の方ですが、こちらは36,750,000円になります」

「「おぉ~~」」

 予想以上の金額に二人は驚いた。確かに朱鳥の言った通り一財産だ。

「それで構いません」

 武はそう言うとアプリを起動しチーム口座に入金を済ませると鑑定室を出ていった。

「華林、カフェでお茶でも飲もうぜ」

 武が華林にそう提案する。

「良いですよ」

 華林も少しでも武と一緒に居たいので頷いた。二人はエレベーターで20階のカフェへと向かった。

 武はアイスコーヒーに苺のショートケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラを頼み、華林は紅茶を頼んだ。二人は席に着き飲み始める。

「しっかし良い値段になったなぁ~」

 ショートケーキを食べながら武は嬉しそうに言う。

「そうですね。あんな金額になるとは思いませんでした」

 華林もビックリしながら言う。

「今年最後の迷宮で良い思い出来てよかったぜ」

 チーズケーキを食べながら武は言う。チーズケーキを食べ終えるとガトーショコラに取り掛かる。

「しかし本当に甘い物好きですね」

 華林は紅茶を飲みながら言ってくる。

「おう好きだぞ、大好きだぞ」

 ガトーショコラも食べ終えるとアイスコーヒーを一口飲む。

「ケーキも無くなったし又頼むかな」

 武はまだケーキを食べる気でいた。それに対し華林は。

「武君!」

「はい?」

 いきなり君呼ばわりされて武は驚いた。

「食べ過ぎです。もう終わりです!」

「え、でもまだ入るし・・・」

「武君は食べ過ぎです、そんなんじゃ糖尿病になってしまいます。それに私は武君よりお姉さんです。お姉さんの言う事も聞いてください」

 華林はプリプリと怒っていた。だが怒り方が余りに可愛すぎて武は微笑ましくなってしまった。

「えぇ~でも」

「でももありません。これ以上食べるなら武君の夕食は無しです!」

「それは困る・・・」

 夕食抜きは確実に困る。

「分かった。ケーキはもう食べない」

「はい。それでいいんですよ武君」

 華林はニコリと笑いそう言った。

「これから明日の食事の材料を買うので付き合ってくださいね」

「は~い」

 武は子供の様な返事をする。

「じゃあ出ましょうか」

 華林はそう言うと席を立った。つられて武も席を立つ。カフェを出ると華林は武の左腕を抱える様に抱き着いてきた。すると華林の胸の感触が武に伝わってくる。

「あぁ~華林、あのな・・・」

「どうかしましたか?武さん」

 華林は不思議そうに尋ねてくる。

「いや、感触がな?」

 武は出来るだけ遠回しに華林に伝える。

「ふふ、武君?わざと当ててるんですよ?」

 華林は優しくそう言う。

「え?」

「ケーキを我慢したご褒美です。じっくり堪能してくださいね」

 華林はそういって胸をムニムニさせてくる。

「ちょ・・・・・・」

「ふふふふふ」

 慌てる武を楽しみながら華林は腕を抱え続ける。そしてそのまま買い物を続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ