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幽玄神話世界  作者: 元橋
12/23

12話

 次の日、武は目黒駅に居た。暫くすると朱鳥が現れた。

「武殿、おはようございます。今日から宜しく御願いします」

 そう言い頭を下げてきた。

「おう、おはよう。今日からヨロシクな朱鳥」

 武は朱鳥の姿を見て。

「迷宮にもその姿で潜るんだな」

 巫女姿の朱鳥にそう言った。

「えぇそうですね。この姿に手甲と足甲を使って戦います」

 白衣の先からは鉄製の手甲と裾を少し捲った緋袴からも鉄製の足甲が見えた。

「う~ん、何か想像出来んなぁ」

「くすっ、そうでしょうか?加入させて頂いて損はさせない自負はあります」

「だろうなぁ、だって6級迷宮に潜っていたんだろ?俺たちは未だに8級だしな。助言を貰う事の方が多そうだ」

 武はそう言い笑った。

「武殿の持つ剣も結構な業物と思われますが」

 朱鳥は武の和剣を見ながらそう言った。

「おっ分かるか?良い買い物だったぞ」

 ニヤッと笑いながら武は自慢気に言った。

「おはよう武、朱鳥さん」

「おはようございます武はん、朱鳥はん」

 二人で会話をしていると咲夜と薫の二人がやって来た。

「おう、おはよう」

「おはようございます咲夜さん、薫さん」

 二人は挨拶を返した。

「じゃあ早速行くか」

 武の号令に三人は頷いた。

 312号線、通称目黒通りを歩き目黒川の方へと歩いていく。信号を曲がり暫く歩くと。

「おっとこれだな」

 武はマンションの壁の渦状の歪みを発見した。

「それじゃあ行くぞ?」

 三人に確認し武は渦に手を出した。

 移動した先は通常の迷宮型だった。目の前には通路が伸びている。

 進んで行く四人の前に広間が出てくる、そこには6匹のゴブリンが居た。

「行きます!」

 朱鳥はそう言うとゴブリンに向かって走っていった。その隣を武も駆ける。朱鳥はゴブリンの頭目掛けて左足で蹴りを放ち、その左足を着地させると隣に居るゴブリン目掛けて突きを放つ。そのまま左手で他のゴブリンに裏拳を放つ。武も負けじと剣で3匹のゴブリンを切り殺した。

「う~ん、流石だな」

 武は賞賛の声を上げる。今回の戦いは前衛二人でのみで終わってしまったからである。

「いえ、それ程でもありませんので」

 朱鳥は謙遜の声を上げる。

「私たちの出る幕無かったわね」

 咲夜が笑顔でそう言う。

 そして四人は更なる道を進んで行く、途中4度の戦闘があったが朱鳥の加入で前線が二人になった事により咲夜と薫の二人は殆どする事が無かった。

「朱鳥はん加入した途端にやる事なくなりましたね咲夜はん」

「そうねぇ二人が突撃して直ぐ終わる様になったわね」

 薫の問い掛けに咲夜が答える。

「いや明らかに朱鳥が強いんだって、全部一撃だもんな」

 武が会話に加わってくる。

「いえ、武殿も十二分にお強いですよ、自信を持って大丈夫です」

 朱鳥が武にそう言ってくる。

「そっかぁ?」

 武は自信なさ気だった。

「はい真実です。我流ではなくて明らかに正統派の剣術の型が見て取れます。十二分に努力された結果が戦闘中にも分かります」

「そっかぁ~なら良かった」

 朱鳥は真摯に武を見ながらそう言った為、武も自分に自信が持てホッとした。

「そういや武はんは前に道場通ってた言うてましたな」

「あぁ前田剣術道場に通ってたんだ」

「成程、前田様の道場に通われていたのですね」

 武の言葉に朱鳥は納得した。

「え?福岡でも知ってるのか?」

「はい、前田剣術道場に通われていた方が九州支部にも何名かいらっしゃいましたので。それに前田剣術道場は実践的で厳しい道場で有名な所ですので」

「そっか九州にも先輩たちが居るのか」

 それを聞いて武は嬉しそうに言った。

「武はんはいつ頃から通ってはったんですか?」

 薫の問い掛けは咲夜から返答があった。

「武が通い出したのは小学校1年生の頃からよ。ね?」

「ん?そうだな小1からだな都合12年かな」

「そないに長くですか」

「あぁ強くなるには早いに越した事はないからな」

 武はそう答え、咲夜はクスクス笑いながら

「武ってば最初の頃は通う度に半泣きになってたわよね」

「言うな咲夜!」

 武は顔を赤くしながら言った。

「ホントに厳しかったんだからな道場。子供相手にも手加減しないし」

 ぶつくさ言いながら武は反論した。

「その長さが今の強さに繋がっているのであればよろしいではないですか」

「まっ確かに今は感謝だな」

 朱鳥の言葉に武はそう答えた。

 その後も2度戦闘があったが何の問題も無かった。

 そして両開きの扉が現れる。そして直ぐに薫が罠チェックに入る。

「ここが最後っぽいな」

 武は鞘から剣を引き抜き扉を開けた。中には5匹のホブゴブリンが居た。

 武は駆け出し1匹目のホブゴブリンの首を落とした。その間、朱鳥は切り掛かってきたホブゴブリンを小手返しの要領で転がし蹴り殺した。そのまま腰を落とすと3匹目のホブゴブリンの顔面目掛けて突きを放つ。武は剣を上段に構え4匹目のホブゴブリンを袈裟懸けに切り殺した。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 咲夜が魔法で5匹目のホブゴブリンの首を落とした。それで戦闘は終了した。

「よし完璧!」

 武は剣に付いた血を振り落としながらそう言った。

 そして迷宮核と共に宝箱が現れた。薫は宝箱に近付き罠確認した。罠が有るのを確認すると三人に伝え解除を開始した。

「罠解除終えました」

「どんな物が出てくるかな」

 武が宝箱の蓋を開けた。中を見ていると宝石のエメラルドが入っていた。

「宝石か、まぁ換金すれば金にはなるな」

 そう言い迷宮核の水晶球を壊し迷宮を脱した。その足で組合へ向かい宝石の鑑定へと赴いた。他の三人にはカフェで待っている様にお願いしてある。

「鑑定をお願いします」

 武はそう言いエメラルドを組合員に見せた。組合員は出されたエメラルドを宝石鑑定用ルーペを使いじっくりと観察した。

「この宝石ですと100万で引き取らせて頂きます」

「それで構いません」

 武は即決するとアプリを起動しチーム口座への入金を終わらせ組合20階のカフェへと向かった。

「お待たせ」

 武はそう言い三人が座っていたテーブルの椅子に着いた。

「幾らになったの?武」

 咲夜がカプチーノを飲みながら訊ねてくる。

「100万」

 人差し指を上げながら武は答えた。

「おぉ結構な金額になりましたな」

 薫がカフェオレを飲みながら嬉しそうに答えた。

 それに対し武は用意されていたダダ甘のアイスコーヒーを飲みケーキを摘まみつつ。

「まぁ臨時収入としては十分だな。そういや迷宮の級が上がれば宝箱の発生確率も上がるもんなのか?」

「そうですね、個人的な感想としては級が上がれば宝箱発生確率も中身の内容も上がっています」

 問われた朱鳥はコーヒーを飲みながらそう答えた。

「やっぱそうかぁ、今も黒字ではあるけどもっともっと稼ぎたいよな」

 ニヤッと笑いながら武は言った。

「なら直ぐにでも7級迷宮に潜るの?」

 咲夜が武に問い掛ける。

「いや暫くは慣らしも兼ねて8級迷宮かな?」

 武は視線で三人に問い掛け、三人は各自頷いた。その後は雑談タイムとなった。


 1週間後、武たちは組合19階の食堂で食事を取っていた。

「この1週間、8級迷宮に潜っていたが、そろそろ7級迷宮に挑もうと思う」

 武は天婦羅定食を食べながらそう告げた。

「良いと思うわよ、8級じゃ私のやる事殆ど無くなっているしね」

 咲夜は海老天蕎麦を上品に啜りながら答えた。

「うちも良い事だと思います」

 薫もカルボナーラを食べながら答えた。

「そうですね、8級迷宮に拘る理由はありません、良い事だと思います」

 明太子パスタを食べながら朱鳥も同意する。

「で、明日からは7級迷宮に潜るとして朱鳥に聞きたいんだが8級と7級の違いって何があるのか?」

「そうですね敵が強くなるのは当然として一番の違いは7級迷宮からは2日掛かりになる可能性がある事です」

「と言うと?」

「迷宮内で寝泊まりする可能性があります。只、7級ですとそこまでは多くないですが、そこが8級迄との違いですね」

「成程ねぇ」

 武は芋天を齧りながらそう呟いた。

「私の鞄に入れている携帯食も多めに入れた方がいいわね」

 咲夜が提案してきた。

「おう、そうしておいてくれ」

 武は咲夜にお願いした。

「じゃあ今日中に依頼を受けて明日は現地集合な」

 武は三人にそう伝えた。


 次の日、武は山手線で新宿まで出てそこから京王電車の急行に乗り変え調布駅まで出てきた。

 既に三人は来ており何やら会話をしている様だった。

「おはようさん」

 武は三人に挨拶をした。

「おはよう武」

「おはようございます武はん」

「おはようございます武殿」

 三人から挨拶が返ってきた。

「それじゃあ早速行くか」

 武がそう言い四人は調布駅東口を出て上布田公園の方へと歩いて行った。陸橋を越え上布田公園に入ると直ぐに目的のものが分かった。公園内にある遊具に立ち入り禁止のテープが張り巡らされていた。

「これじゃ子供たちも困るだろうな」

 武はそう言いテープ内に入ろうとすると

「そこはいっちゃだめなんだよ!」

 広場で遊んでいた近くの保育園児の女の子が武に叫ぶ様に言ってきた。

「あぶないからだめなんだよ!」

 武は忠告してくる子供の前に行き腰を落として目線を合わせる。

「嬢ちゃん、お兄ちゃんたちはなこの遊具で遊べるようにする為に仕事できたんだ。だから中に入らないとダメなんだよ」

「おしごとなの?」

「あぁ仕事だ」

「それであそべるようになるの?」

「あぁ明日には遊べる様になるぞ」

「じゃあおしごとがんばってね!」

 そう言うと女の子は走り去っていき職員と思しき女性と何やら身振り手振りで話していた。女性職員はこちらを見ると頭を下げてきた。武も女性職員に対し頭を下げる。

「さて、子供たちの為に頑張るとしますか!」

 そう言いテープ内に目的の渦を見つけると手を伸ばし迷宮内部へと入って行った。

「真っ暗」

 武がそう呟く。

「光よ光球となりて辺りを照らしたまえ」

 咲夜の魔法が辺りを照らし出す。

 内部は鍾乳洞となっており足元にはチョロチョロと川も流れていた。

「さて進むか」

 武の言葉に四人は道なりに進んで行く。暫く進むと広間に篝火を焚いたホブゴブリンが4匹居た。

 こちらに気付いたが構わず武と朱鳥は駆け出す。武は1匹目を袈裟懸けに切り殺し、返す刀で2匹目のホブゴブリンを切り上げ首を刎ねた。朱鳥は3匹目のホブゴブリンの首を蹴りで折り4匹目のホブゴブリンの顔面目掛けて正拳突きを繰り出し殺した。

「よし、ホブゴブリン4匹じゃ楽勝だな」

「油断は禁物よ武」

「あぁ分かってるよ」

 咲夜の忠言に武は頷いた。

 そして四人は進んで行くと大空洞へと出てきた。そこには。

「リザードマンか!」

 蜥蜴人間というべき剣と盾を構えた5匹のリザードマンがいた。リザードマンもこちらに気付いており襲い掛かってくる。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 咲夜の魔法が1匹のリザードマンの片足を切り落とす。朱鳥は切り掛かってくるリザードマンの剣を手甲でいなすと足を引っかけ転ばした。そのまま転んだリザードマンの顔面目掛けて拳を振り下ろした。武は盾を構えたリザードマン目掛けて駆け抜ける。構えている盾は木で出来ており構えた盾ごと横薙ぎ一閃で切り殺した。

 そして次のリザードマン目掛けて足を踏み込んだ時、ズルルッと足が滑り体勢を崩した。そこにリザードマンが剣を振り下ろしてくるが薫の放った矢が顔に突き刺さる。その間に武は体勢を整え下から剣を突き出しリザードマンの左胸を突き刺した。

「地よ巌となりて敵を圧し潰せ」

 1匹のリザードマンの頭上に巨石が現れ圧し潰した。武は片足の無いリザードマンに止めを刺すと戦闘は終了した。

「ふぅ~、体制崩した時はヒヤッとしたな。助かったよ薫サンキューな」

「いえ武はんに怪我無くてよかったです」

「思った以上に足場が悪いな」

 武は足を前後させながら確認していた。

「鍾乳洞型の迷宮ではよくある事です。注意しながら戦闘するしかありませんね」

 朱鳥がそう助言をしてくる。その助言に武は頷いて答えた。

 道を進み歩く武たちは途中、4度ホブゴブリンと遭遇し2度リザードマンと遭遇したが戦闘は問題無く終了した。

「脇道は無いもんだな」

 武はぼそりと呟いた。

「今まで1本道でしたもんね」

 薫が相槌を打つ。

「鍾乳洞型の迷宮は1本道が多いですね。逆に脇道が多いのは坑道型迷宮になります」

「坑道型の迷宮か・・・、今まで出会った事ないな」

「坑道型は脇道が多いですし多層階な事も多いので1日掛かりになる事が大きいですね」

 朱鳥が伝えてくる。

「そっかぁ~、余り関わりたくない迷宮だなそれは」

 武のぼやきに咲夜と薫も同意した。

「それとさ朱鳥」

「何でしょうか?」

「いや戦ってる時にふと思ったんだけど、着てる巫女装束って撥水加工してね?」

 武は返り血を浴びてるが、その雰囲気が無い朱鳥の服に疑問を持っていた。

「えぇ武殿が仰る通り私の着ている装束は撥水加工をしています」

「やっぱりかぁ~」

 そう言い武は朱鳥の服装をまじまじと見つめた。

(戦う巫女さんか、ちょっと良いよなぁ。武闘家って云っても暴力的って感じはしないしどちらかというと舞踏家って感じがするんだよなぁ。何かカッコ良くて色っぽいんだよなぁ~)

 相変わらずまじまじと朱鳥を眺める。

「あ、あの武殿?」

 朱鳥が戸惑いの声を上げる。

 そしてゴチンと武の頭を咲夜が杖で叩いた。

「いてっ!」

「武、朱鳥さんを見過ぎよ、そして変な事も考え過ぎよ」

「何だよ変な事って、分かりもしないで」

「どうせ、カッコ良いなぁとか色っぽいなぁとか考えてたんでしょ?」

「んなっ!?」

 武は考えていた事をものの見事に言い当てられ言葉に詰まった。

「ほらやっぱり」

 咲夜は呆れながら言った。

「で、でもカッコ良いってのは良く分かります」

 そこに薫が武に助け船を出した。

「武殿にそう思われていたのならば光栄です」

 朱鳥はそう言ってきた。

「そ、それよりさっさと進もうぜ」

 武は無理矢理話の方向性を変え、前に進んで行った。

「こいつで最後!」

 武は合わせていた剣を弾き飛ばし横薙ぎに切り裂いきリザードマンは倒れ伏した。

 進んだ先の広場では5匹のリザードマンの死体が出来上がっていた。

「う~ん、力だけでみるならホブゴブリンの方が上だな」

「そうですね。ですが装備と素早さはリザードマンの方が上となります」

 朱鳥は武の言葉に同意した上でリザードマンの強さの拠り所を言った。

「それに6級迷宮になると鉄鎧を着込んだゴブリンソルジャーやホブゴブリンソルジャーが出てくるので注意が必要です」

「うえ鉄鎧マジかぁ」

 それを聞いて武はため息を吐いた。

「魔法使い型も一緒に出てきたりもしますよ」

 朱鳥がそれに追い打ちを掛ける。

「はえぇ~魔法使い型もですか」

 薫もため息を吐く。

「あら朱鳥さんのお陰で事前に出てくるのが分かるし対処の仕様も分かるからいいじゃない」

 咲夜は前向きな発言をした。

「まぁそう言われればそうだな」

「6級迷宮を主として稀に5級迷宮も潜っていたのでそこまではお力になれます武殿」

「偶にでも5級迷宮も潜ってたのかよ、マジでありがたい」

 ありがたや~ありがたや~と両手を顔の前で擦る様に合わせながら武が言うと。

「お、お止めください武殿。その様な行為は困ります」

 朱鳥は慌てて武の行動を止めさせようとする。

「しかし、そしたら悪い事しちまったのかなぁ?」

「何がでしょうか?」

 行為を止めさせた朱鳥が問い掛ける。

「いや、そんな人材が抜けた穴は大きいんじゃないのか?」

 武は朱鳥が福岡で行動していた時に居たチームメンバーの事を思いそう言った。それに対し朱鳥が。

「確かにチームを抜け東京へ行くと言った時にはメンバー全員に止められ揉めもしました。しかし神社の娘として生まれ神意を得たとなればそれを無視する事など出来よう筈も御座いません。なので武殿が気にする必要はありません」

 そうキッパリと言った。

「そっか・・・、ならもう気にしない」

「それで宜しいかと」

 武の言葉に朱鳥も同意した。

 そして更に四人は鍾乳洞を奥へと進んで行く。途中2度のホブゴブリンとの遭遇、1度のリザードマンとの遭遇があったが武と朱鳥のペアの前には善戦空しく敗北した。

 1時間程鍾乳洞を歩き続けると広い空間へと出た。そこには蝙蝠風の翼が生えた小鬼3匹と槍を持った豚人間2匹が居た。

「オークとインプです。インプは魔法を使ってくるので注意して下さい」

 朱鳥がそう忠告し駆け出した。オークに近付き側頭部にハイキックを当てるとそのまま足をグラついたオークの膝目掛けて蹴り下ろし関節を逆方向へと捻じ曲げた。ブオォとオークは呻き声を上げる。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 咲夜は魔法でインプの翼を切り落とし、墜落させた。薫も飛び回るインプ目掛けて矢を射る。武は2匹目のオーク目掛けて駆け出すがその前にインプの火魔法が迫りくる。武は迫りくる火球に対し剣を振り火球を切り裂いた。

「熱っちい!」

 武は突っ込んだ勢いそのままにオークに対し剣を振り下ろす。だが、オームは腕で防ぎ骨で止まったのか切り落とすまではいかなかった。一旦武は剣を引き間を取った。オークは槍を突き出してきたが武はショートソードを抜きその槍をショートソードで受け流した。オークの力は強く耳元すれすれを槍が通過していく。ショートソードをそのまま滑らせオークの手元を切り付けオークの指を何本か切り落とした。

 2匹目のインプが薫の矢が何本も刺さり墜落していく。朱鳥はグラついているオークの頭を持つと顔面目掛けて膝蹴りを放つ。膝蹴りを放った足を地につけると逆の足でオークの首目掛けて膝蹴りを放ち首の骨を折った。武は指を失い槍が持てなくなったオークの首目掛けて突きを放ち、突き刺さるとそのまま横薙ぎに切り払った。

「風よ刃となりて敵を切り裂け」

 咲夜が3匹目のインプ目掛けて魔法を放つと同時に翼を切り落とされた1匹目のインプが咲夜目掛けて火球を放った。

「咲夜!」

 武が叫び声を上げるが火球は咲夜目掛けて迫りくる。そして火球が咲夜に当たる瞬間、パシッと音がし火球は消滅した。咲夜も何が起こったのか分からず戸惑っていたが咲夜の着るロープが淡く光り文様を浮かび上がらせていた。

「今のうちに!」

 朱鳥が叫び墜落した1匹目のインプ目掛けて走り顔面を踏みつぶした。武も墜落した3匹目のインプ目掛けて走り胴を切り裂いた。残りは首の骨が折れたオークに武が止めを刺し戦闘は終了した。

「咲夜、無事か!」

 武は咲夜の肩を掴み問い質した。

「え、えぇ私は無事よ何ともないわ大丈夫よ」

 咲夜も戸惑いながらそう答えた。

「はぁ~、無事かなら良かった」

 武は咲夜の肩を掴んだまま安堵のため息を吐いた。

「無事だった原因は多分、咲夜さんが身に纏っているローブでしょう」

 朱鳥がそう告げてくる。

「と言うと?」

 武が問い掛ける。

「相当に強力な防護の魔法が掛けられているのでしょう。それに前々から思っていたのですが咲夜さんの放つ魔法も強力です。本人の資質も有る事ながら杖による魔法的加護が強力なのでしょう」

 朱鳥がそう伝えてくる。

「そんなの強いのか咲夜の魔法って」

「はい、私が加入していたチームの魔法使いより強力です」

「そうなの!?」

 その言葉には咲夜もビックリした。

「はい、咲夜さんの武具の品質としては超1級品の物でしょう」

「わお、流石いちお・・・」

「たける?」

 咲夜がニッコリと武に微笑みかける。

「あ~、何だ。その、ごめんなさい」

「分かって貰えて嬉しいわ」

 咲夜は嬉しそうに笑っていた。

「それにしても再度、お父様に問い詰めないといけないわね」

 ポツリと咲夜は呟いた。その声音に武はちょっと引いていた。

「迷宮核も出た事ですし、壊して迷宮を出ましょう」

「おうそうだな。その前に咲夜、シャワー魔法頼むわ」

 返り血を洗い流す為に武は咲夜にそう伝えた。

「はいはい、分かったわよ」

 咲夜はそう言いシャワー魔法を唱えた。

「その魔法のそうなのですけどね」

 朱鳥はポツリと呟いた。

「何がですか?」

 薫が朱鳥に問い掛ける。

「お二人がシャワー魔法と言ってる水魔法も水量が多過ぎるのですよ」

「そうなんどすか?」

「えぇ通常と違い過ぎますね」

 そう朱鳥が言った。

 その後迷宮核を壊した武たちは現実世界へと帰還した。辺りはもう暗くなっていた。

「帰る前に立ち入り禁止テープを全部剥がしていこうぜ」

 武はそう提案し四人でテープを剥がしていった。

「へへ、これで明日からは子供たちも遊具で遊びたい放題だ」

 武は嬉しそうに言った。

「こういう終わり方も良いものね」

 咲夜は皆にそう伝え皆も頷いた。

 そうして最初の7級迷宮攻略は終了したのだった。

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