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幽玄神話世界  作者: 元橋
11/23

11話

 武は次の日、武具店へと向かっていた。バスタードソードのメンテナンスの為である。

「こんちは~」

 何時もの様に武は挨拶しながら店に入って行った。

「おう大和か。今日も得物のメンテか?」

「そうっす、お願いします」

 武はそう言いバスタードソードを出した。

「ちょっと待ってな」

 そう言い大将はバスタードソードを手に取った。その間、武は店内の武具を見回していた。

「おい大和、こりゃ駄目だ」

「え?」

 暫くして大将がそう言ってきた。

「芯に罅が入っちまってる。こりゃその内折れるぞ」

「マジっすかぁ~」

 武はため息を吐いた。

「何と戦ったんだ?」

 大将が聞いてくる。

「鬼っす」

「鬼か。そりゃ途中で折れなかった事に感謝しな。中古のバスタードソードがそこまで持ってくれた事にな」

「そうっすかぁ」

 武は探検者を初めて最初の武器が使用不可能になった事に哀愁をおぼえた。

「で、どうする?処分するか?」

「いや奉納処理でお願いします」

 武は答えた。奉納処理とは神社、特に武神を主神としている神社に奉納した後に処分し新しい武具へと作り変える事を言う。探検者はゲンを担ぐ事が多く、奉納処理も今まで自分を守ってくれた事に感謝を神に祈る事によって次の武具も自分の命を守ってくれる様に願う為である。

「そうか、なら初穂料5万な」

「ういっす」

 武は5万を支払った。

「なら新しいバスタードソード買うかなぁ」

 武の呟きに大将は暫し考え。

「おい大和、おめぇ手持ちはあるか?」

「え?資金っすか?そりゃある程度はありますけど」

 大将の問いに武はそう答えた。

「そしたらおめぇ和剣使ってみねぇか?」

「和剣っすか?」

 武は聞きなれない武器の名前に問い返した。

「あぁ和剣は日本製のバスタードソードと考えてもらってもかまわねぇ、但し製法が玉鋼から作る刀と同じやり方だ。ただ刀は片刃だが和剣は両刃の違いがある。」

「へぇ~そんな剣があるんすか」

「あぁ作り方が刀と同じだからバスタードソードと比べて切れ味は段違いだぜ?」

 大将はそう言いニヤリと笑った。

「一度、現物見せてもらっても良いっすか?」

 武は大将にそう問い掛けた。

「おう、裏から持ってくるからちょいと待ってな」

 大将はそう言うと店の裏へと入って行った。暫くして桐の箱を持ってきた。

「こいつだ」

 そう言い桐箱を開けると中には鞘に収まった剣が1本入っていた。

「手に取っても?」

「あぁ構わねぇぜ」

 そして武は和剣を手に取った。鞘や剣把には細かい装飾が施されている。剣身の長さ自体は今まで使っていたバスタードソードとほぼ変わらないが剣身の太さは少し大きくなっていた。

 そして剣を鞘から抜いた。抜いた瞬間今まで使っていたバスタードソードとは違うと分かった。触れればスパッと切れるであろう剣刃、顔が映る程の剣背、剣突は刺せば手応えなく刺さりそうな気配すらある。手に取って武はその美しさにゾクリとした。

「・・・・・・良いっねぇ~」

「だろ?」

 大将は得意気に言った。

「幾らですか?」

「250万だ」

 新品のバスタードソードの2本以上の値段だ。

「買います」

 武は即決した。

「おう、じゃあ早速入金してくれ」

 そう言われ武はアプリを起動すると入金を済ませた。

「桐箱ごと持っていきな」

 大将は剣を箱に収めると武へと渡した。


 数日後、武は阿佐ヶ谷駅で待ち合わせをしていた。

「おはよう、武」

「おはようございます、武さん」

 咲夜と薫の二人がやってきた。

「おう、おはよう」

 武も挨拶返した。

「それじゃ行くか」

 そして三人は歩き出した。

「武、武器変えたの?」

 道中、咲夜が訊ねてくる。

「うん?あぁ前のバスタードソードが駄目になったから買い換えたんだ」

「そうなの、随分雰囲気の違う剣なのね」

 咲夜が今までのバスタードソードと違う見た目に問い掛けた。

「あぁ使い方はバスタードソードと変わらないらしいけど、制作方法が違う位かな?まっ使ってみてからのお楽しみって所かな」

 武は楽しそうにそう答えた。

 そして暫く進むと目的の迷宮へと到着した。

「じゃあ潜るぞ」

 武はそう言い渦に手を近付けた。

 その日の迷宮は何時もと同じ様な洞窟型迷宮だった。出てくる敵も大蝙蝠、ゴブリン、ホブゴブリンと変わらずだった。ただ変わったのは。

「せいっ!」

 武は身体を半回転させ片手に持った和剣でホブゴブリンの首を落とした。そして近くに居たホブゴブリンを袈裟懸けに切り殺した。

 戦闘は終わり武は呼吸を整えた。

「あぁヤバいわ、この剣今までのバスタードソードと違ってマジでスパスパ切れるわ」

 武は半笑いになりながらそう言った。

「武はん、サポートする暇もないどすわ」

 薫が武にそう言ってくる。

「いや薫それがな、切れ過ぎて身体が未だに付いていかないんだわこれが」

 今の戦いは6匹のホブゴブリンだったが4匹を相手にしていたが剣の切れ味が良過ぎ一刀の下にホブゴブリンを倒せた為、危険な事は一切無かった。

「持つ剣が変わるだけでここまで武の戦い方が変わるなんてね」

 咲夜も少し呆れ気味にそう言った。

「まだ剣に弄ばれてるな、暫く慣れるまで気を付けないと自分を傷付けかねないな」

 武はそう言い剣を鞘に納めた。

 そして現れた迷宮核の水晶球を壊して迷宮を後にした。


 半月後、武たちは相変わらず8級迷宮に潜っていた。最初は武自身持て余してた和剣だが半月も使用していると身体も慣れて自分の思う様な戦闘を行う事が出来ていた。

 そしてある日、三人は組合19階にある食堂で昼食を取っていた。

「それで武、話って?」

 咲夜はミラノ風ドリアを食べながら聞いてくる。

「あぁそれなんだがな、二人共明日の14時に組合来れるか?」

 武は天丼のセットに付いているうどんをズズズと啜りながら聞いてくる。

「うちは構いませんけど」

 薫はクリームコロッケ定食を食べながら答える。

「私も構わないけど、何があるの?」

 咲夜が問い掛けてきた。

「う~ん、人と会う?」

 武自身が疑問形で返答した。

「どういう事よ?」

「いや俺もイマイチ状況が分からんのだが俺に会いたい人が居るらしい」

「武はんにどすか?」

「うん」

 薫の問いに武は天丼を食べながら答えた。

「それって売り込みって事じゃないのかしら?」

 売り込みとは武たちが特定職を探してる方法とは逆に個人が特定のチームに入れてくれと売り込む事である。

「何で俺に?言っちゃ悪いが俺たちなんてまだまだ駆け出しのヒヨッコ同然だぞ?売り込まれる要素は何処にもないぞ?」

「まぁ確かにそうよねぇ」

 武の言葉に咲夜も納得する。

「武はん知り合いちゃいますか?」

「いや、聞いた事もない名前だった」

 武はそう答えアプリを起動させた。

氷室朱鳥(ひむろあすか)って名前だ」

 武は目線で二人に知ってるか?と問い掛けた。

「私も知らない名前ね。学校には居なかったはずよ」

「うちも知らないです」

 二人はそう答えた。

「で、明日の14時に会う事になってるって訳ね?」

 咲夜が武に問い掛けてきた。

「あぁそういう事だ」

「場所はここ?」

「あぁ組合の5階会議室だ」

 武は咲夜にそう言った。

「そもそも、うちらが居てもいいんですか?」

 薫が武に聞いてきた。

「あぁそれは大丈夫だ。相手にもチームメンバーも同席するならと伝えてあるからな」

 武は薫の問いに答えた。

「なら明日は14時前に組合に集合ね、場所は待ち合わせ室で良いんじゃないかしら」

 咲夜がそう言ってきた。

「おう、それで構わないぞ」

 武が咲夜の意見に賛成した。

 そして三人は食堂で食事を終えると解散した。


 次の日、武は組合の待ち合わせ室で練乳入りコーヒーを飲みながら咲夜と薫の二人を待っていた。

「こんにちは武」

「こんにちは武はん」

 暫くすると咲夜と薫が待ち合わせ室にやってきた。

「おいっす二人共」

 武は軽く挨拶を返した。

「約束の時間まではまだ30分程はあるわね」

「二人共何か飲むか?」

 武が聞いてくる。

「私はいらないわ」

「うちもかまへんどす」

 二人は答える。

「どんな話が出てくる事やら・・・」

 武はコーヒーを飲みながら呟く。三人は暫し雑談をし時間を潰した。

「おっと、そろそろだな」

 武はスマホを見て確認した。

「じゃ行くか」

 そう言いコーヒー缶を捨てると三人は組合の5階へと向かった。

 14時丁度に指定された会議室の扉をゴンゴンと武はノックした。

「どうぞ中へお入り下さいませ」

 中からそう女性の声が聞こえた。武はノブを回し扉を開けた。

 部屋の中には女性が立って待っていた。身長は170㎝前後、衣装は巫女姿で意思の強そうな切れ長の目、薄い唇、腰処か膝裏まで長く伸びた黒髪、その黒髪を毛先辺りで撚り紐で結んでいた。有体に言えば美人だった。

「今回この様な場にお越し頂き誠にありがとうございます」

 そう言い腰を90度近く折り曲げた。

「あ、あぁ」

「どうぞ席へとお座りくださいませ」

 そう言い奥の席、所謂上座へと席を進めてきた。武たちが席に着くまでジッと立ったままだった。

 そして三人が座ると女性も席へと着いた。

「まずお話の前に、お茶をご用意しておきましたが何か他にお飲みになりたいものがあればお言いつけ下さい」

「いや、お茶で構わない」

 武は少し場の空気に飲み込まれていた。

「では、再度となりますが、本日はお越し頂き誠にありがとうございます」

 そう言い女性は頭を下げた。

「いや、構わない」

「では、私の自己紹介から始めさせて頂きたいとおもいます」

 女性はそう言い再度姿勢を正した。

「私の名は氷室朱鳥、年は今年で二十歳となります。出身は福岡です。福岡支部で探検者をしてまいりました」

 そして頭を下げた。

「あぁ、俺は大和武、右に座ってるのが四ノ宮咲夜、左に座ってるのが結城薫だ」

 武も自分たちの自己紹介をし咲夜と薫も頭を下げた。

「で、今回のこの場は一体どうゆう事だ?」

「どういう事とは?」

 氷室朱鳥は訊ね返す。

「いや所謂、売り込みって考えていいのか?」

 武が問い掛けると氷室朱鳥は一度目を閉じ再度目を開けると。

「そうでございますね。売り込みの一種とお考え頂いて構わないと存じます」

「何で俺なんだ?」

 武は直球に尋ねた。

「先ずは私の実家は福岡の神社で私自身も巫女の職を持っております」

「だろうな、巫女さん姿だしな」

「はい、そしてある日私は天意を賜りました」

「天意か・・・・・・」

 武はそれである程度は把握した。

 天意とは神託、お告げ等と云われる一種の人非ざる者からの言葉を賜る事を言う。その内容はハッキリしたものであったり漠然としたものであったりと多種多様であるが神職等に就く者が昔から極稀に聞く事がある。

 それが実証された最近の事件と云えば2011年3月11日の東日本大震災がある。

 3月11日より半年近く前から僧侶、尼僧、神主、巫女、修験者等のありとあらゆる神職スキルを持つ者が言葉を発し始めた。曰く「巨大地震が発生する」、「巨大な津波が押し寄せる」、「多くの死傷者が出る」、「東日本に甚大な被害が出る」、「多くの悲しみが押し寄せる」等々多種多様な言葉が出てきた。一人二人なら気のせいで済むかもしれないが言葉を発した数は千人を超えていた、時の政府はこれを重く捉え神祇院を使い数多くの言葉を纏めていった。

 その結果は2011年3月上旬頃、岩手県、宮城県、福島県を中心とした一帯に今までにない規模の巨大地震が発生し30mを超える津波も発生し死傷者が数十万人を超えるというものだった。

 そして政府はその結果を見て強硬策に出た。3月1日から15日まで3県を含む海岸線近くに住む住人を強制的に他県や高台のホテルや旅館に住まわせ、それに合わせて福島魔導発電所の停止を発表した。それに対し海岸線付近に住む住民は猛反発したが政府はもし何も問題なければ議員総辞職すると、そして退避している間の予算は全て政府が見ると伝えた。

 そして2011年3月11日14時46分18.1秒にマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震と30mを超える巨大津波が発生した。結果としては物的損害は甚大なものとなったが、人的被害は最小限となったと言われている。その結果、時の政府は支持率が爆上がりし、言葉を発した僧侶、尼僧、神主、巫女、修験者等は非常に感謝されたという。

「はい、私が賜った天意は大和武様に付き従い手足となって働けというものでした」

「ホントに俺に?」

「はい本当で御座います」

 氷室朱鳥は唯々武の目を真っ直ぐに見ながらそう言った。

「同姓同名の人違いじゃないか?俺そんなに強いわけでも無いぞ?」

「いえ貴方様で間違いは御座いません」

「根拠は?」

 氷室朱鳥はチラリと咲夜と薫を見て。

「大和武様、お耳を少々拝借しても宜しいでしょうか?」

 そう訊ねてきた。

「お、何だ?」

 武は机から身を乗り出し氷室朱鳥に近付いた。

 氷室朱鳥も身を乗り出し武の耳に唇を近付ける。その時、白檀の良い香りがした。

 ボソボソと呟く言葉に武は目を見開いた。

「・・・・・・それも神意に?」

 真近にある氷室朱鳥の目を見ながら呟いた。

「そうでございます」

 武は椅子に座り直すとはぁ~とため息を吐き。

「そういう事なら俺だなぁ」

 そう言いお茶を一口飲んだ。

「では!」

 氷室朱鳥は嬉しそうに聞いてきた。

 武は咲夜と薫に視線を送ると二人は頷いた。

「まぁこれから一つヨロシクという事で」

 武は氷室朱鳥をチームに入れる事を受け入れた。

「しっかし巫女さんって戦闘でどんな事するんだ?」

「あっいえ、私は巫女は副で主とする職は武闘家です」

「え!?前衛職なのか?」

 武は驚きで身を乗り出した。

「はい、そうでございます。実家である神社は主神を天之手力男神あめのたぢからおのかみとしており幼少の砌より武術を学んでおりました」

「じゃあガチの前衛なんだ?」

「ガチとは何処までを指すかは分かりかねますが、それなりにと」

 氷室朱鳥は武の問い掛けにそう答えた。

「う~ん、これもタイミングなのかぁ?」

 咲夜を見ながら武は呟いた。

「そうなんじゃないかしら?」

 咲夜は笑いながら武にそう言った。

「タイミングとはどういった事でございましょうか?」

 氷室朱鳥は訊ねてきた。

「いや俺ら今前衛職の人を探してる真っ最中だったわけよ」

「なれば未だ若輩の身なれどお役に立てると存じます。福岡に居た頃は主に6級迷宮に潜っておりましたので」

「6級っ!?マジか!?」

 嬉しそうに武は叫んだ。今までずっと探していた前衛職が向こうからやってきて、しかも自分たちより上級の迷宮に潜っているとは思わなかった。武は心の底から神意に感謝した。

「大和武様たちは何級の迷宮に潜っておられるのですか?」

「まだ8級だ。それよりチームメンバーになるんだから武でいいぜ」

「では武様と」

「いやいや様付けは止めてくれ」

 武は自分が無駄に偉そうになった気になるので止めて欲しかった。

「はぁ、では武殿と呼ばせて頂きます」

「まぁ呼び捨てでも構わないんだけどな。俺は・・・」

「武殿は私の事は朱鳥と呼び捨てて下さいませ」

 朱鳥はピシャリとそう伝えた。

「分かった、朱鳥これからヨロシクな」

「こちらこそ宜しく御願い致します武殿」

 朱鳥はそう言い頭を下げた。

「じゃあ武から紹介あったけれど私は四ノ宮咲夜、咲夜って呼んで下さい。私も朱鳥さんと呼ばせてもらいますね」

 咲夜がそう言い。

「うちも結城薫いいます、薫って呼んでください。うちも朱鳥はんって呼ばせてもらいますんで」

 薫もそう自己紹介した。

「咲夜さんに薫さんですね、こちらこそこれからよろしくお願いします」

 そして暫く依頼料の取り分、武具道具等が出た時の事、依頼の受け方等を話し合いその日は互いに別れた。

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