◆名誉
「うん、終戦はオーケイなんだけどね、"勇者"称号ははそのまんまってダメ?」
「"勇者"称号の返上はブレイザー以外のすべての"勇者"に求めています。これは例外はありません。今までの働きについては充分な報奨を贈ることは王国が保証いたします」
「うん、それは理解しているし、それについては不満はないよ。そうではなくてね、付随する特権とか支援とかはいらないんだ、"勇者"を名乗らせてくれるだけでいいんだよ」
「一体何が目的ですか? "勇者"ホナ―」
「うん、つまりね。いままで僕は"勇者"を名乗ってきたじゃない?」
「はい」
「うん、それでね、戦争が終わったからって途端に"勇者"でなくなるとさ、なんか"降格"って感じしない?」
何やら今までん連中とは別の方向に面倒なやつが出てきたな。
「"勇者"称号は戦時の特別称号であって、なくなったからといって各々を貶めようという意図はありません」
「うん、そうなんだろうけどさ、ブレイザーは"勇者"のママなんでしょ。それからすると僕ら他の"勇者"の格落ち感が半端なくない? まあ、魔王を倒したのはブレイザーだから少々差がつくのはいいんだけど、あれも結局のところ巡り合わせの面もあるじゃない?少なくとも僕の実力はブレイザーとさほど違いはないと自分では思ってるよ」
「別に"格下"などとは思っていませんよ。それとブレイザー殿も称号持ちというのは変わりませんが、今後は"勇者"を名乗りません。"英雄"ブレイザーになります」
「ああ、そうなんだ。だったらなおさら"勇者"の称号は僕らに残してよ。"勇者"と"英雄"で差別化できるんだからさ」
「なぜそこまで"勇者"の称号にこだわるのですか?」
「うん、王国が待遇に差をつけるとは思ってないよ。でもさぁ、市井の人たちはどうかなぁ。急に称号がなくなったら、"あぁ、こいつら何かやらかしたんだなぁ"っておもうんじゃあない。裏の事情なんか知らんし」
ああ、そういうことか。こいつは国民にどう見られるのかをきにしているのか。
「そういうことなら、その辺の事情をきちんと国民に周知すれば問題ないということかな」
「そうそう、その辺をしっかりやってくれるなら問題ないよ」
「承知いたしました。しっかり事情を周知するようにいたします」
「うん、頼むよ、本当に。きっちり周知徹底してくれよな。真面目な話」
やれやれだな。