表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

◆終戦

 国中がお祭り騒ぎだ。

 勇者ブレイザー一行によって魔王が討伐され、30年に及ぶ対魔族戦争が終結。ようやく平穏が訪れようとしていた。今日はブレイザー一行の凱旋、王城で終戦祝賀式典が行われる。我が王城騎士団第5師団は王都の警備を任されているが、第5師団長たる私は騎士団長の呼び出しを受けていた。詳細は聞かされていないが戦後処理の任務だとのこと。一体何があるというのだろう。重要任務とのこと、少々緊張しながら騎士団長の部屋をたずねる。


「第5師団長クリフォード、参上いたしました」

「おう、入ってくれ」


 部屋に入ると、団長以外にも私を待ち受ける人物がいた。文官のようだ。


「式典警備で忙しいなか呼び出して悪いが、あまり時間の余裕もない話でな」

「すでに手配は済んでいますので問題ありません。重要任務とのこと、なんでありましょうか」

「そのことだが。先に彼を紹介しておこう、内務省のルーイだ。任務の詳細は彼から説明してもらう」

 紹介を受けて、ルーイが一歩前に出る。

「今回の任務をクリフォード殿と一緒に遂行いたします、内務省のルーイです」


「任務の内容ですが、勇者の整理業務となります」


     ***


「整理業務ですか。ということは勇者ブレイザーをどうにかするということでしょうか」

「とんでもございません。英雄たるブレイザー殿をどうにかするなど。問題は他の勇者です」

「他の勇者?」

「クリフォード殿も"勇者制度"はご存知でしょう?」

 言われて思い出した。ここのところの勇者ブレイザーの活躍ですっかり頭の中からすっとんでいたが、そんな制度があったっけ。


 勇者というのは別に神に選ばれた存在ではないし、特殊な能力を持つわけではない。魔王討伐の象徴の意味合いが強い。もちろん人類側の最高戦力ではあるが、あくまで討伐の中心として騎士団と連携を取りながら魔王軍と戦う(すでに討伐はなったので"戦った"が正確だろうか)一人の戦士でしかない。当然、倒される可能性もあった。しかし、戦いの象徴が途中でいなくなるのも困る。そこで制定されたのが"勇者制度"である。

 勇者が道半ばで倒れたときにその遺志を継ぐだけの強者を次世代勇者としてバックアップ、あるいはそうなりうるものを優遇・育成するための制度である。要は事前に勇者の補欠を用意するための制度だ。これにより万が一勇者が倒れた時に速やかに新たな勇者を祭り上げ戦闘を継続できるわけだ。


「ありましたね。そういう制度が」

「戦争が終結した以上、"勇者制度"は終了になり、勇者というのはブレイザーのみの称号となります。その旨を"勇者候補"達に通告。今後は勇者を名乗らないようにしなければなりません。それが今回の任務となります」

「その"勇者候補"達というのはどのくらいいるのですか」

「概ね100人前後でしょうか。国内各地に散らばっているので、各々を訪ねていくことになります。なかには勇者でなくなることを拒絶する輩も居るでしょう。そのときには説得、場合によっては粛清が必要になり可能性もありますので戦力としての騎士団の協力が必要になります」

「あー、それ相応に優遇を受けてきた以上、可能性はあるか」

「私も同行いたしますが、その任務をクリフォード殿にお願いしたいのです」

「騎士団の中でもこの任務をこなせるのはお前だけだ。やってくれるよな」

 団長の言葉には有無を言わせぬ圧力があった。


 そんな訳で俺は"勇者の整理"任務を受けることになったのである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ