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第七話

 

 俺は商業ギルドに向かう最中にネネコに説明していた。


「俺が考えているのは全室個室のカフェだ」

「個室ニャ?」

「そうだ。個室なら周りを気にせずオナラが出せるだろ?」


「でも音が気にニャる人はいると思うニャ」

「まあ、それも含めて考えてあるから、とりあえず聞いてくれ。確かに音を気にする人はいるだろうな。だからキカザルフロッグの素材を冒険者ギルドに依頼する」


 キカザルフロッグってのは奇声をあげて聴覚を攻撃してくる魔物だ。それだと魔物自身にもダメージがあるはずなんだが、音を遮断する特殊な皮膚で防いでる変わった生き物なんだよな。


「分かったニャ。その素材で個室を囲んで防音対策ニャ!」

「正解だ。それに研究室を最近改良しただろ?それと同じようにしようと思ってな」


 そうそう、資金に余裕ができたから思い切ってやっちゃったんだよな。部屋を小さくしたり、風除室を追加したり。それによって部屋全体の魔力濃度が高まって、魔晶石の濃度をあげるのが簡単になったんだ。さらに風除室によって魔力が外に逃げにくくなり、環境の維持が容易になった。今ではむしろ濃度が高くなりすぎないように注意しているぐらいだ。


 部屋が小さければ、個室の椅子カバーにオナラが直接来なくても部屋全体に魔力が漂うことになって集めやすくなる。


……いや、商売をするなら、いつまでも俺の感覚に頼ってちゃいけない。オナラの匂いが残ってたら次の客がやってこない。うん、換気はしっかりとやらなくちゃ駄目だな。


……いやいや、何を考えてるんだ俺は。オナラを集めることこそ至上命題のはずだ!最近の研究でオナラは空気よりも軽いって分かったんだ。ならば天井に仕掛けを作って魔晶石で消臭すればいいじゃないか。


……やっぱり無理があるか。オナラだけならともかく体臭とか服に着いたタバコの匂いなんかもあるはずだ。これらは後の課題だな。


「ま、まあ個室ができれば少しはオナラを回収できると思うぞ」

「ニャるほど」


 あれっ?ネネコがいきなり変な顔になったぞ。


「でもご飯はみんニャで食べる方が美味しいニャ」


「ああ、俺もそう思う。だけど王都は違うんだよ。王都では結構一人で食べている人が多い事に気づいたんだ。きっと嫌味な上司とかオナラが臭い人と一緒にいたくないんだろうな。男でも女でも一人客が6割くらいはいた。その人たちを取り込めれば充分勝負ができると思う。メニューは持ち込みありにして飲み物だけにするかな。いやサンドイッチくらいならあってもいい。いやいやバナナとかリンゴとかチーズを置けばオナラが出やすくなるかもしれない」


「キノコもオナラにいいニャっ!」

「キノコは絶対に駄目だっ!!昔、変な奴にキノコを食わさせてトラウマになったんだ……忘れたのか?」

「覚えてないニャ」


「そ、そんなことより、部屋にベッドを置くのはどうだ?眠たそうな人も結構いたし。ベッドの中ならオナラも恥ずかしくない……よな?」

「ニャっ!」


 話してたらいい考えが出てきた。ベッドの方は準備に時間がかかりそうだから客の反応を見てからになるかな。


 この後すぐ俺たちは商業ギルドに行って登録した。商会の名前は『リーベルト商会』だ。後々実家から横やりを入れられないようにログストーンの名前は入れなかった。あった方が信用が増すかもしれないが仕方ない。これから自分たちで名を上げればいいだけだ。


 そしてその足で冒険者ギルドに向かい、リーベルト商会の名で依頼の受付を済ませる。キカザルフロッグはそこそこ強敵らしいが、遠距離攻撃ができればそれほど難しいクエストではないようだ。どれだけの量があればいいのか分からないな。後で工務店に確認するとして、後々店舗を増やしたいから大目に依頼しよう。


 ……しまった。素材置き場を決めてないぞ。保存方法も分からないし。俺たちだけじゃ手が足りない。やっぱり人手不足はなんとかしなきゃ駄目だ。でも他の貴族にばれるわけにはいかないしなぁ。重要な事は俺が決めるしかないとして、簡単な作業を任せられる人材がいればいいんだけど。


「ニャにか困ってるニャ?」

「うーん。やっぱり人を雇わなくちゃ、これ以上やってけないと思ってな」

「ネネコの兄妹呼ぶニャ?」


 兄妹っ?!ネネコに家族がいたのか!孤児だと思ってたぞ。そういえばネネコは大分前から仕えてたけど、なんで侯爵家にきたんだっけ。


 あっーー!!!!


 そうだ、思い出した。リズミカルにオナラをしながら釣りをしていたネネコを見た俺が、親父に泣き喚いてお願いして……。それでネネコのオナラを嗅いでたら魔力の流れが見えるようになって研究が始まったんだ……。


 まあ、その話は今は置いといて……


「口は堅いのか?」

「ニャっ!」

「他の貴族と関わりはないよな?」

「ニャっ!」

「何人連れてこれる?」

「ニャニャ人ニャ」


 7人!それならかなり助かるぞ。


「頼めるか?」

「ちゃんと給料出せニャ」

「もちろんだ。働きがよければ昇給だって屁の河童さ」


 それから俺たちは忙しい日々を過ごした。


 まず、狙いを付けていた貸店舗の交渉。金はかかったが人通りの多い場所を確保できた。それから内装工事に従業員用のマニュアル作りも忘れてはいけない。


 カフェメニューの食材の調達は出産を終えたナターシャにお願いした。元の職場は既に別の人を雇っていて戻れなかったところに声をかけた。経験者だけあってそこそこ顔は広いそうなので、なんとか安く良い食材を手に入れて欲しい。彼女はオナラとは関係ないところで働いてもらうので、仕事さえできれば問題ない。まあ、オナラの匂いを嗅げば誠実にやってくれそうなことは想像に容易いけどな。


 店舗の完成が近づくと、ネネコが手紙で呼び寄せた兄妹もやってきた。彼らはとりあえず侯爵家の空き部屋に住んでもらうことにした。これから開店までに業務の訓練をしてもらう。ネネコは喜んでくれたし、気が緩んだのかプップ、プップしてくれたのは嬉しい誤算だった。交換用の椅子カバーもジョナサンに手伝ってもらい、なんとか間に合った。


 さて、これで明日の開店に向けて準備は万全だ。


 庶民よ。お前たちからオナラを搾取する俺を許してくれ……。この恩は一生に忘れぬ。必ず報いてやるからな。

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