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第六話

 

 俺達の懐はだいぶ温まってきていた。ジョナサンのおかげで魔晶石は完成したし、評判も上々だ。


 ちなみにジョナサンへの支払いは歩合制だ。アクセサリー1個につき6万ウェンを支払う契約になっている。ジョナサンは額に驚いていたが当然の金額だ。これには口止め料も入っているからな。


 魔晶石は完成することによって価格が30万ウェン上がったので、その20%をジョナサンの取り分にした。材料費はかかるが、月に6個だから36万ウェン。王都庶民の平均月収が大体20万ウェンなので他の工房にも負けていないはずだ。1個作るのに1日かからないから空いた日に別の仕事をすればもっと稼げるし。暇な日にはこれからの大量生産に向けてのマニュアルづくりも頼んでいる。量が多くなればそれだけ忙しくなるので、ジョナサン1人に押し付けないようにとの配慮だ。


 ただ俺は失念していたが、毎回アクセサリーごと購入する必要はないってことが分かってきた。魔力が無くなったのならば、それに再び魔力を吸収させれば良いのでは?と思いついてしまったのだ。使い捨て前提で高い買い物をさせれば俺の名に傷がつく。


 よって2つのアクセサリを交換しながら使ってもらうのが良いのではないかと結論付けた。フォルネウス家のように月に2個のアクセサリ契約なら、初期投資が2ヶ月で400万、翌月以降は魔晶石の交換だけなので140万づつ。魔法を使わなければ、取り替える必要はないので収入にはならないのだが……どうなるかな。


 ただ嬉しい誤算もあった。魔法が使えないジルベルト用だけでなく、アイリーンさんも自身専用アクセサリを欲しがったのだ。やはり商売で儲けているだけに敵もそれなりにいるらしく、身を守る術を欲していたんだ。彼女は魔法を使えるが、それでも使いきった後に保険があるのは大事だそうだ。それはよくわかる。話を聞いてから俺も常に身に着けているし、ネネコにも渡している。


 そして俺たちはいま悩んでいた。


 商会を設立することにしたが、何を扱うか決まっていなかったのだ。そこでネネコに相談を持ち掛けている最中だ。


「リーベルト様、ニャんか綿花が暴落しているみたいだニャ」

「隣国から安い綿花が入ってきたから、だぶついてるみたいだな。しかしそうだな。何かないか……そうだ!パンツのレンタル業を始めるってのはどうだ?クリーニングして返すんだ」


「本気で言ってるニャ?パンツニャんて人から借りたくニャいニャ。それに売った方が高くニャりそうニャ」


「うーん。パンツはオナラを吸収するのにもってこいなんだがな~。良い考えだと思ったけど無理か」

「絶対無理ニャ」


 結局いい案は出ずに外食する事にした。


 最近は色んな店に行って調査を進めている。レストランの運営も考えていたからだ。なんといっても食事は毎日するもの。だからこそ競合店が(ひし)めいてるわけだが、何か売りがあればいけるのではないかと考えていた。


「別に1からやらなくてもいいと思うんだよな。そうだな……例えばイス用のクッションのレンタルなんてどうだ?」

「またレンタルニャ?」


 大事な話なのでひそひそ声で話す。


「クッションってのはお尻に近いわけだろ?それなら魔晶石を細かく砕いて埋め込んでおけば魔力の強い人に反応して吸収してくれると思うんだ」

「うーん、ネネコにはわかんニャいのだ」

「とりあえずよく観察しておこう」


 それから毎日のように俺たちは外食して過ごした。結論から言うと、俺の策は全く駄目だった。ほとんどの店は椅子のカバーがしてあったし、高級店に至っては柔らかなソファーが設置してあったからだ。俺が考えたようなちゃちな椅子カバーじゃ太刀打ちできない。


 それでも何かヒントにならないかと街を歩く。


「おい、ネネコ見ろ。テラスの女の人が周囲を確認してもぞもぞしてるぞ。オナラするんじゃないのか?」

「ニャっ!」

「よし、周りには誰もいないぞ。ほらっ今だ。勢いよく出せ」


 スススッ


「なにーー!!」

「ど、どうしたニャっ!」


 風で流れてきたマダムのオナラは確かに期待通りの質だった。だがなぜお尻を僅かに上げたんだ?周りには誰もいないじゃないか。そのまま気にせずブッとだせよ。


 …………っ!!


「お、俺は根本的な勘違いをしていたというのか……。人間ってのはこうも注意深い生き物なのか。そこまでしてオナラの音を聞かせたくないと。椅子から離れたら濃度が半分以下になってしまうぞ」


 恐らく公共の場では誰もが彼女のようにオナラの音を出さないようにしているのだろう。酔っぱらいでもなければありえないんだ。音さえなければ誰がしたのか分からず、他人に(なす)り付けることができる。ではどうすれば誰もが自由にオナラをできるようになるか……。


 周りのレストランを見渡す。年齢、性別、人数。全ての情報を頭に入れて導き出せる答えは……!!


「個室だっ!!」


 俺は今まで何をやってたんだ。自分がしてきたようにすればいいだけじゃないか。


「リーベルト様。どういうことニャっ?」

「説明は歩きながらだ。とりあえずこれから冒険者ギルド……いやまずは商業ギルドに向かうぞ」


 庶民よ。今の内にこそこそ隠れてオナラをするがいい。だがすぐに俺がお前らのオナラを集めてみせる。お尻を洗って待ってな!

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