第1話 学園最強と学園最弱と炎の再会
総集編があり、すぐにシーズン2から読めるようになっているので、熾烈なバトルをすぐに読みたい方は
https://ncode.syosetu.com/n0482hm/32/
のシーズン1総集編から読む事もできます。
宜しければどうぞ。
魔法学園エンドランド。ここは王国きっての魔法学園である。
超実力主義を謳い、実力の劣る者は徹底的に虐げられていた。
そして俺は学園の最低ランク、Fランカー。人呼んで最底辺のリューリ。
そんな俺は、Sランクの天才美少女、アシェッタから呼び出しを喰らう。
身に覚えが無いSランカーからの呼び出しに、俺は死を覚悟した。
学園第一校舎の屋上。強い風が吹くこの場所が、待ち合わせの場所だ。
太陽が西の空に沈み始めた頃、金のツインテールと豊満なバストを揺らしながら、彼女はやって来た。
「リューリ、好き!」
「え……?」
なんと、彼女はいきなり抱き付いて来た!
(うおっ……色んな所が当たっているっ)
「まっ、待ってくれよ、どうしていきなりそんな……」
困惑の表情を浮かべる俺を見上げた彼女は、少し悲しそうな顔をして頬を掻いた。
「えへへ、ごめんごめん。いきなりこんな事言われても迷惑だよね。」
名残惜しそうにしながらも、彼女は俺から離れた。
そんな彼女の姿を見ていると、何故だか心が締め付けられる。
俺は手を伸ばした。
「いや、待ってくれ。お前を拒絶したとかじゃないんだ……」
「え?」
「ただ、全てがいきなり過ぎて、何も分からねぇ……だから、説明してくれよ」
彼女と、目が合った。
サファイアの様な彼女の瞳が揺れる。視線を外したら負けな気がして、じっと見つめる。
やがて、彼女は根負けした様に視線を逸らし、「うん、分かった」と受け入れた。
Sランク女子寮。
寮とは名ばかりで、Sランクの生徒には一軒家が与えられている。
何と言うかこう……全体的に白くて高そうな内装だ。
「しかし、どうしていきなり女子の家に……」
「説明してあげるって。ささっ、どうぞ座って〜」
促されるままに、ソファに腰掛ける。
柔らかい。抱きつかれた時のあの感触に比べればまだまだだが……
「って、何考えてんだ俺は!」
「? どうかした?」
「なっ、何でもない……」
コトっ。
ティーカップがテーブルに二つ置かれた。
そして、アシェッタは俺の隣に寄り添う様に座る。
「なんか近くないか?」
「いーの、私とリューリの仲なんだから」
「まず、どういう仲なのか説明してくれよ……」
「っと、そうだねぇ〜」
アシェッタは少し考える様な仕草をすると、何か思い付いた様に手を叩いた。
「見てもらった方が早いかな」
「? 何を?」
リューリが聞くや否や、アシェッタは突然脱ぎだした。
「うおっ! いきなりどうした!?」
咄嗟に手で顔を覆ったが、胸とか見えちゃったじゃねーか。
ありがとうございます。
「ほら、見て見て〜」
嘘だろ……
でもまぁ、本人から許可が出てるし、犯罪にはならねぇよな……?
リューリは指の隙間からアシェッタの姿を覗いた。
白く美しいがちゃんと血の通いを感じる健康的な肌、たわわな双丘、ムチムチな足、深い深緑を思わせる鱗を纏った尻尾……
尻尾!?
その尻尾をよく見ると、古い傷があった。
それは、リューリにとってはとても思い出深い……
「お前まさか、あの時の!?」
「そうだよリューリ、久しぶり!」
俺が気付くと、彼女はぱあっと表情を明るくした。
「やっと……会えたね……」
アシェッタは、あの時のドラゴンだったのか……
リューリは幼少期、山で遭難し、死にかけた事があった。
遭難、それだけでも大変なのに、雨まで降ってきた。
空腹や疲れで力を失っていく小さな身体。
彼の消えかけの命の炎を、冷たい雨がさらに追い詰めていく。
もう何時間彷徨っただろうか、最早手足の感覚が無い。
その時、リューリの目に止まったのは、ケガをしたドラゴンだった。
ドラゴンもまた、リューリと同じく力を失い、冷たい雨に追い詰められている。
あのドラゴンは、俺と違って這いずり回る力すら残っていないらしい。
喰らって飢えを凌いでしまおう。
リューリはそう思って近付き、ドラゴンを拾い上げた。
ずっしりとした重みと、鱗のザラついた感触。そして—————その命は、暖かかった。
自分より弱っている命、冷たくて然るべき命。だが、それが何故だか暖かい。
それに触れていると、不思議と自分の手足に熱が戻っていく様に感じた。
リューリは、その命を抱きしめた。
「俺の炎をお前にやる、だからお前もお前の炎を寄越せ……」
ドラゴンが、リューリに身体を寄せる。
リューリは服を脱ぎ、ドラゴンと抱き合う。
雨は未だ、俺達の命を蝕む。
それでも、二人は必死で身体を寄せ合い、励まし合った。
どれほどそうしていたのだろう……
二つの炎は、冷たい雨の終わり、その先の先まで、絶える事は無かった。
「お前、俺が山から脱出した後も、ちゃんと生きていてくれたんだな……」
気付けば、リューリはアシェッタを抱きしめていた。
熱い、熱い熱を瞳から零しながらも、それより熱い抱擁を交わす。
「ありがとう……ありがとう……」
「うん、これからはずっと一緒だよ……」
こうして、物語が始まる。
人とドラゴン。ドラゴンと人。
否。
炎と炎の物語が—————————