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悪役令嬢に転生してしまったので必死に死亡フラグ回避をしようとしたが殺される運命になってしまったところ、神様が同情して百年後の世界まで私を凍結してくれて、素敵な仲間達に出会いました

作者: 夜炎 伯空

「あーあ、悪役令嬢に転生してから一年。自分なりにがんばってきたつもりだったんだけどなぁ……」


 悪役令嬢に転生した私の名前はクランシア。

 今は王国の牢屋に入れられている。


 交通事故に巻き込まれて、この世界の悪役令嬢に転生したんだけど、元のクランシアの性格が悪すぎたせいで、頑張っても頑張っても、死亡フラグを回避することはできなかった。


「……明日、私は処刑されるのか……」


 ……事故にあって人生終わったと思ったから、転生して人生が続けられると思ったのに……

 これは、ちょっと理不尽過ぎないかな………

 

 一年間の苦労を思い出して半泣きになる。

 

「神様のバカーーーーーー!!」


 私は看守かんしゅの目も気にせずに大声で叫んだ。


「呼んだ?」


「わぁっ!?」


 突然、牢屋の中に美少年が現れた。


「え、え、どこから入って来たの?!」


「その答えはどこからでもないかな。元々ここにいたといえば、ここにいたとも言える」


「どういうこと? なぞなぞか何か?」


 この美少年は何を言っているのだろうか?


「ごめん、ごめん、混乱させちゃったね。ボクはこの世界の神様だよ」


「……そうなんだ……」


「って、驚かないの?」


「いや、どうせ、明日処刑される身だし、神様だろうが幻覚だろうが、話せる相手がいるだけでいいかなって」


 死ぬ間際まぎわ、話し相手がいるだけで、少しは気も楽になる。


「……なるほど、それは面白い考えだね。でも、ボクなら君をここから助け出せるって言ったらどうする?」


「……そうなことが本当にできるんですか?」


 確かに、もし本当にこの世界の神様ならそれくらい簡単なことなのかもしれない。


「本当は、神様のボクが世界に干渉し過ぎるのはよくないんだけど……。君はこの世界の未来を変えた功労者こうろうしゃだからね」


「未来を変えた功労者?」


 ……死亡フラグすら回避できなかった私にどんな功績こうせきが……


「そう、君が転生した悪役令嬢クランシアの悪事は、本来、これから百年間の暗黒時代を迎えるほどの厄災やくさいになるはずだったんだけど……。君がこの一年を通して、それを見事に防いでくれたんだ」


「……百年の暗黒時代を迎えるほどの悪事って……。それで、どれだけ頑張っても死亡フラグを回避できなかった訳じゃないよね……」


「あ、よく分かったね」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 私がこの一年どれだけ苦しい思いをしたか分かる? それなのに、結果、処刑宣告されるし。もう完全に人生に絶望していたのよ!!」


 止め止めなく涙が溢れ出す。


「……それは、本当に申し訳ないと思ってるんだ……。だから、ボクは君を助けに来たんだけど……。でも、そんなに人生に絶望してしまったのなら、もうここで終わりにした方がいいのかな?」


「……グスっ……。ううん、助けてもらえるのなら助けて欲しい。死ぬのはいつだって出来るから……」


 私は涙をぬぐってそう答えた。


「……ほんと、君はなんだかんだしんが強いよね……。やっぱり、君に任せて良かったよ」


「それはどうも」


 喜んでいいのか、それは?


「それで、どうやって助けるかなんだけど……。まず、ダンジョンの最下層に転移した後、君を凍結とうけつさせる。そして百年後、君を仲間にしてくれそうな素敵なパーティが現れたら、ダンジョンの最下層から上の層に転移して、凍結を解除するという方法を考えてみたんだけど、どうかな?」


「うーん、よく分からないけど、神様が考えてくれた方法だから、たぶん、それが一番の案なんだよね?」


 たった一年しかこの世界にいなかった私では、何が最善なのかなんて分からない。


「ボクは神様だけど、さすがに未来には転移させられないしね。だからといって、田舎に転移したとしても、あまり目立った行動はできないから、不自由に感じるかなと思って」


「まあ、それはそうだと思う。一つ気になるのは、凍結している間、苦しくないのかなってことなんだけど……」


 意識だけ残って百年間動けないなんて、その方が地獄だ。


「それは大丈夫。凍結している間は意識がないから、君からすれば一瞬で百年後に移動したと感じると思う」


「……なるほど……、それならいいかな……」


「意見は一致したようだね。それじゃあ、まずはダンジョンの最下層に転移するよ」


「あ、はい」


 そう言って神様が私の手を握ると、私達は一瞬でダンジョンの最下層へと転移した。



「じゃあ、凍結を始めるよ」


 え、もう?


 ……でも、見渡す限り、何もなさそうだし、躊躇ちゅうちょしても仕方がないか……


「では、お願いします」


 私がそう言うと、神様が凍結の魔法をかけ始めた。


 徐々に身体が凍りついていくが、魔法だからなのか冷たさは感じなかった。

 そして、身体全体が氷に覆われると同時に、私の意識は途絶とだえた。


 ◇


「やっぱり氷姫アイスプリンセスの話は本当だったんだよ、レイティ!」


「べ、べつに、信じてなかった訳じゃ……。なあ、フィジア?」


氷姫アイスプリンセスが目の前にいるんだから、もうそんなのどっちでもいいんじゃないかな? それにしても、リンネシアが言っていた通り、綺麗な人だね……」


「でしょ!」


 徐々に意識が戻ってきた。

 リンネシア、レイティ、フィジアとお互いに呼び合っていた三人の女の子達が、何だか楽しそうに凍結された私を見ながら話をしている。


「でも、これ、どうやって溶かしたらいいんだろう?」


 リンネシアが二人に質問した。


「火の魔法で溶かしてみる?」


 フィジアが躊躇ちゅうちょなくそう言うと、

「ほ、ほんとうに溶かすの? 勝手に溶かしちゃっていいのか?」

 と、レイティが慌ててそう言った。


「だけど、このまま氷漬けなんて可愛そうだよね……」


 リンネシアが私を見ながら悲しそうに言った。

 きっと、優しい子なのだろう。

 

「まあ、それはそうだけど……」


 レイティは男の子っぽい言葉遣いだが、リンネシアに弱そうだ。


「どれくらい冷たいんだろうね?」


 なんとなくだけど、フィジアは研究者タイプだと思う。


「触ってみたら分かるよ」


 そう言って、リンネシアが氷に触れると、凍結された私に向かって強い光が照らされた。

 そして、徐々に氷が溶けていく。


「え、え、どうやったの?」


 レイティが驚いている。


「氷に触っただけっぽいけど……」


 フィジアが冷静に分析している。


「あ、もうすぐで溶け終わりそうだよ」


 光が収まると、身体をおおっていた氷は全て溶けていた。

 これで、晴れて自由の身になれたんだよね……


 ……凍結される前に神様が言っていた話からすると、目の前にいる女の子達が素晴らしい仲間達ってことになるんだけど……


 三人の会話を少し聞いただけだけど、悪い子達には思えなかった。

 ただ、私を仲間にしてくれるという保証はない…… 


「……えーと、あなたの名前は氷姫アイスプリンセスさんですか?」


 リンネシアが恐る恐る聞いてきた。


「あ、いえ、私の名前はクランシアといいます」


 むしろ、さっきから話に出てきてる氷姫アイスプリンセスって一体誰なの?


「で、伝説の氷姫アイスプリンセスと、お、お話できた!?」


 女の子達がキャッキャしている。


「……伝説の氷姫アイスプリンセス?」


「あ、わたしの家では、代々、氷姫アイスプリンセスの話が語り継がれていまして……、こうして本当に会えたことが夢のようなんです」


 私が不思議そうな表情をしていると、リンネシアが補足してくれた。


 ……そうか、なんとなく分かった……

 百年前、神様がこの子達の先祖に、そういう話を吹き込んでおいてくれたのだろう……


「ふふ、私は伝説と呼ばれるような人間ではありませんよ。百年間氷漬けにされていた、ただの人です」


 とはいえ、百年も氷漬けにされていたら、既に普通の人ではないか……

 

「……そうなんですね……。勝手に氷姫アイスプリンセスなんて呼んでしまい、申し訳ありませんでした」


 リンネシアがそう言って頭を下げると、レイティとフィジアも一緒になって頭を下げてくれた。

 

「あ、頭を上げて下さい。こちらこそ、期待に応えられなくてゴメンなさい」


 そう言って、私も頭を下げた。


「ク、クランシアさん、頭を上げて下さい。私達が勝手に盛り上がっていただけなので……」


 リンネシアが慌ててそう言った。


「私は氷姫アイスプリンセスなんて呼ばれるたいそうな人間ではありませんが、こうして逢えたのも何かの縁です。もしご迷惑でなければ、私をあなた方のパーティに加えていただけませんか?」


 三人の人柄に触れて、私は自然と仲間に加えて欲しいと思った。


「え、私達の仲間になっていただけるんですか? も、もちろん、大歓迎です!!」

「リンネシアが、そうしたいなら反対はしないよ」

「……氷漬けの女性……。なんて興味深い……」


「ありがとう」


 あー、人に歓迎されるって、こんなに嬉しいことだったんだ……

 

 この世界に来てからは、怒りや恨みの眼差まなざししか受けてこなかったので、女の子の純粋な瞳と言葉に、私の心の闇が溶かされていくのを感じた。


「百年前の話も、ぜひ、また聞かせてください!」

「確かに、それはちょっと聞きたいかも……」

「……百年前の生き証人の話……」


 ……本当にいい子達だね……


「じゃあ、目的も達成したし、ダンジョンから出よっか!」


「そうだな」


 リンネシアの提案にレイティが同意する。


迷宮脱出ダンジョンエスケープの魔石を使ってもいいよね」


 フィジアが迷宮脱出ダンジョンエスケープの魔石をリュックから取り出した。


「うん、お願い」


「ダンジョンエスケープ!!」


 フィジアがそう唱えると、私達は魔石から放たれた光に包まれ、ダンジョンの外へと脱出した。


 ◇


「まずはクランシアさんに必要な物の買い物ですね」


「え? でも、私、お金も何も持っていないから……」


 リンネシアに買い物を勧められたが、凍結される直前まで牢屋にいたので、お金は持っていない。

 それどころか囚人しゅうじん用の粗末なワンピースを服を一枚着ているだけで、まともな服すら着ていない。


「なに言ってるんですか。当然、私達が買いますよ!」


 リンネシアがそう言うと、レイティとフィジアもうなずいている。

 

 ……なんとなく、この子達のお家はお金持ちなんだろうなぁと思った。


「……では、今回はそれでお願いします……。……いつか返させていただきますね……」


 私が申し訳なくそう言うと、

「あ、お金は返さなくても大丈夫です! ですが、もしよろしければ、私達の誕生日にプレゼントのような物をもらえると嬉しいです!!」

 とリンネシアが言った。


「……そんなのでいいの?」


 それだと、全然、割に合っていないと思うんだけど……


「その方が嬉しいんです!」


 リンネシアがまばゆい笑顔でそう答えた。


 ……まあ、本人達がその方がいいと言うのであれば……


「分かりました。では、後で誕生日をもらってもいいでしょうか?」


「はい、もちろんです!」


 何故か、三人とも笑顔で嬉しそうにしている。



「……すごく可愛い……」


 百年前は中世時代のような装飾がされた衣類が多かったのに、百年後のこの世界ではアニメキャラが着ているような服や雑貨も並んでいた。


 ……百年の間に何があったの?

 百年前と世界が変わり過ぎている。


「……出店の食べ物もおいしそう……」


 クレープやアイスクリームのような食べ物の出店まである。

 

「百年前とはだいぶ違いますよね。なんでも、ある令嬢が持っていた書物が解読されてから、一気にこういった衣類や食べ物が広がったみたいですよ」


 私が唖然あぜんとしていると、フィジアが説明してくれた。


 ……その書物って私が事故にあう直前に、趣味で大量に購入して鞄に詰め込んでいたアニメキャラの設定資料集や料理本では……

 まさか、あの時の本が異世界の百年後にこんな影響を与えていたなんて……


 ………BL系や百合系の本は入れてなかったよね………

 入れていなかったと一年前の私を信じよう………


 ◇


「……まさか、魔力量を測る水晶が壊れるなんて驚きです……」


 リンネシアに連れられて、ギルドで魔法量を測ってもらったのだが、魔力量が多過ぎたせいで水晶が壊れてしまった。


「……長い年月ダンジョンにいた影響で、魔力がとんでもない量に増加してしまったのかもしれませんね……」

 

 と測ってくれたお姉さんは推測していた。


「……クランシアさん、実は私達、来月から中級魔法学校に一年間通うことになっているんです……。……もしよかったら、一緒に行って魔法の勉強をしませんか?」


 リンネシアから遠慮がちに提案された。

 

 そういえば私、高校を卒業する前に事故にあったから、卒業式には出られなかったんだよね……


 ……魔法学校か……

 なんだか楽しそうだけど……


「……行けるなら行きたいけど、百年前の魔法の知識しかないのに、いきなり中級の魔法学校なんて行っても大丈夫かな?」


「それは大丈夫だと思います。中級の魔法学校とは言っても、入りたい人は誰でも入れる学校なので」


 やりたいことがあれば誰でも入れる専門学校みたいなものかな。


「でも、お金を稼いでからだと、一緒には通えないかも……」


 来月からとなると、時間的にそこまでのお金を作ることは難しそうだ。


「いえ、もちろん、お金は私達が出させていただきます!」


 リンネシアの無茶な提案に、レイティとフィジアは躊躇なく頷いている。

 

 え、どれだけお金持ちなの?

 この子達のお家……


「……さすがにそこまでは……」


 すぐに必要な生活用品を援助してもらうのは仕方がないにしても、さすがに学校の授業料まで出してもらうわけにはいかない。


「……それでしたら、卒業後、私達と一緒にパーティを組んで、少しずつ返してもらうというのはどうでしょうか?」


「え?」


 このままでは話が進まないと思ったからか、卒業後は一緒にパーティをしませんかとフィジアから提案された。


「そっか、それならいいですよね、クランシアさん!! 一緒に冒険をしたり、ダンジョン探索したり、ギルドの依頼を受けて報酬をもらったりして、溜まったお金から少しずつ返してくださればいいんですよ!」


 百年前と世界観が変わり過ぎていて、リンネシアが何を言っているのか分からないこともあるけど……


「みんなとパーティを組んで一緒に冒険をしたらいいってことなのかな?」


「はい、そういうことです!」


 リンネシアが嬉しそうに返事をした。


 ……まだ、少ししか一緒にいたわけではないけど、この子達といると本当に居心地がいいんだよね……

 この世界に来てからは辛いことしかなかったけど、この子達と一緒になら私も幸せな日々が送れるのかもしれないなぁ……


「……私なんかが、みんなのパーティに入っていいの?」


「「「もちろんです!!!」」」


 三人揃って元気にそう答えた。


「それじゃあ、よろしくお願いします」


 私が右手を差し出して頭を下げると、みんなは両手で私の手を掴んで、

「「「これからもよろしくお願いします!!!」」」」

 と、満面の笑顔でそう返事をした。



 悪役令嬢に転生して死亡フラグは回避できなかったけど、百年間の凍結期間の後、こうして出会った素敵な仲間達との新たな人生が始まった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!!

連載小説のプロローグをイメージして書きました。


評価が多いと続きを書きたくなる気持ちになりやすいので、もし続きを書いて欲しいと思った方がいましたら、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をよろしくお願いします。

もちろんブックマークも嬉しいです!


『【連載版】悪役令嬢と思われて王国から追放されたのだが、実はその王国の運勢を上げていた女神の化身で、不毛の地と呼ばれていた王国の心優しい王子と出会い幸せになりました』


という連載小説も投稿しましたので、もし興味がありましたら、そちらも読んでいただけると幸いです。

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