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第九話 鍛冶屋のおっちゃんはやっぱりいい人

薬草採取クエストという名のハウンテッド・ウルフ討伐クエスト(?)から、数か月が経過した。


その後は体力回復に努めて、猪退治や鉱石採取など自身の魔術向上も兼ねていろいろなクエストに参加していた。


お金にも少し余裕が出始めたので、装備を整えるのにはいい時期かもしれないな。

この街レイヴンだと、今の自分のレベルであれば十分すぎるほどのサービスがそろっている。


時間がある時は、穴場のレストランを見つけたり、今後クエストでも役に立つであろう鍛冶屋の場所などを定期的にチェックしている。


今日は前から気になっていた鍛冶屋に狙いをつけた。


「確かここら辺に古風な鍛冶屋があったはずだけど…あった、あった」


そこには歴史を感じさせるレンガ造りの建屋があった。決してキレイとは言えないが、いかにも鍛冶屋らしいたたずまいの方が逆に安心できる。


目の前の扉を開ける。


「こんにちはー。」


扉の先にはガタイのいいゴリゴリマッチョのスキンヘッドが立っていた。


これはあれだ、絶対裏切らない系のいい人だと俺の前世の勘が言っている!


「おっ、いらっしゃい。兄ちゃんは新顔だね。まあ、うちには自慢の製品がたくさんあるから見ていってくれ。どこの店にも負けないぜ?」


ほらね、やっぱり俺の予想通りいいおっちゃんだったな。


お店の中には、王国精鋭部隊の人たちが身に着けていそうな細かな紋様が施された煌びやかな防具から、誰が好き好んで着るかも分からない、魔物の目玉のような不気味な装飾が施されているものまで多種多様にあふれていた。


とりあえず鍛冶屋のおっちゃんにおすすめの製品を聞いてみる。


「最近クエストの難度が上がってきて、装備が心もとなくなってきたんですけど、お金もまだそんなになくて…。最低限の防御ができる防具ありませんか」


「それなら、このチェーンメイルがおすすめだな。外側はアリゲーター系の外皮を使っているんだ。中は鉄製のチェーンが内蔵されていて、斬撃や刺突からある程度は身を守ってくれるぜ。でも打撃には弱いから注意しろよ」


「機能性もばっちりですね。でも結構お高いんでしょう?何リディアです?」


ちなみにリディアというのはこの国の通貨単位である。古き伝承にもある女神リディアの名前が由来となっている。


「いまなら、兄ちゃんの今後の活躍も見込んで12万リディアのところ、特別に10万リディアでどうだい?」


このおっちゃん中々商売上手だな。決してお得な値段とはいえないが、かといって払えなくはないギリギリのラインを攻めてくる感じだ。


「んー少しまけて、9万リディアで!」


「それは欲張りすぎってもんだろ、兄ちゃん!9万8000だ。」


「いや丁度切りよく9万5000で!」


「ダメだ9万7000だ。」


「9万6000で!」


ここでおっちゃんも根気負けしたのか妥協してくれた。


「はいはい、わかったよ兄ちゃん。9万6000で成立だ。だけどこのつけは、兄ちゃんが今後活躍したらたっぷり払ってもらうからな(笑)」


おっちゃんが意地悪な笑みを浮かべて言ってくる。こちらとしても長い付き合いになりそうだから、この要望は断ることはできないな。


「あと俺のことはバルクでいいぜ。今後ともよろしくな兄ちゃん。」


「分かった。ありがとうバルク。あと俺のこともレイで」


「おう!よろしくなレイ」


こうして鍛冶屋のおっちゃんことバルクと出会ったのであった。


というか前世知識でいうとバルクって筋肉のことだよな…(笑)。偶然のいたずらにも程がある。


「そうだレイ。これを持っていきな。ちょっとした俺からのサービスさ」


バルクはそういってペンダントを胸ポケットから取り出して俺に渡してくれた。


「これは…何かの使い魔をモチーフにしたペンダント?」


「それは鳥をモチーフにしたペンダントで、自分の信じるがままに空へ羽ばたくって願いが込められているんだぜ。あとはちょっとした魔術効果もあるから、それはまた次の機会に話すさ」


「ありがたく受け取っておくよ。あと、次の機会に話すってことは、商品をもっと買ってくれってことだよな」


「まあ、そういうこった」


なかなかに食えないおっちゃん、もとい筋肉バルクさんであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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