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第五話 それぞれの道へ

契約の儀式から半年が過ぎた。俺はあの後人目を避けるようになってしまった。

転生してからは自分を大切にして生きていこうと決めた矢先の出来事だったので、正直自分自身に腹が立って仕方なかった。


今は何とか気持ちの整理もついてきてリズと一緒に魔術の練習をしているが、こんな自分と一緒にいていいのだろうかと申し訳ない気持ちにもなってしまう。リズは、レイに教えてもらうことはまだまだあるんだからと言ってくれてはいるが…


「レイ、炎を射出するときのタイミングはこれでいい?」


俺たちはいつも通り魔術の練習をしていた。リズが、大きな炎を前方に勢いよく射出する。直撃したらひとたまりもない威力だ。


「そうそう、タイミングも完璧!もうこれ以上上達しようがないくらいだよ。」


「そんなことないよレイ、まだまだ教えてもらってないことがたくさんあるんだから。」


「気を使わないで大丈夫だよリズ、王国一の魔術学校にこれから通う子にnullヌルの俺が教えられることはないよ。」


この世界では使い魔を持たない者をnullという。所持していないという意味である。まさか自分がnullになってしまうとは夢にも思わなかったけど。とことん運がない男だと自分でもわかる。

そして、リズは王国のサモナー部隊に入るための登竜門といわれている魔術学校への入学が決まった。子供の中でも選ばれたサモナーしか入れない王国精鋭部隊の卵たちが集う場所だ。ちなみにジャック達3人も憎たらしいことにこの学校への入学が決まっている。なにか不正をしたのではと勘ぐってしまうが。


「私はnullっていう言葉が嫌いだよ。前から言っているけどレイは私には持っていないものをたくさん持ってる、それにまだレイには何か理由があって使い魔が現れていないだけだって、何かの間違いだって思ってるから。」


「そこまで言ってくれるとまだ諦めるわけにはいかない気になるよ、ありがとうリズ。」


俺に使い魔は現れないかもしれない。いや、現れないと断言する方が正しいだろう。でも持ち前の基本魔術と努力で、リズを手助けできるぐらいの術者にはなりたい。


「レイはこれからどうするの?」


リズが心配そうに尋ねてくる。


「俺は冒険者ギルドでまずは自分にできることを探していこうと思ってるよ。幸いなことに基本魔術は得意な方だからね。あとリズが言ってたみたいに活動しているうちに使い魔が現れるかもしれないし(笑)」


「かもじゃなくてそうなるから大丈夫!魔術学校は編入だってあるし、いつでもレイが来るのを待ってる」


リズが満面の笑みで励ましてくれる。とりあえず冒険者として自分にできることを探していきたい。

そんな会話をしていると練習場所にジャック達が近づいてくるのがわかった。こいつら暇人なのか。


「これはこれはかわいそうなnull君ではないですか、リズさんも彼から学ぶことはないでしょうに」


「魔術学校に入るどころか使い魔すら現れないとは(笑)」


「私も儀式当日は生まれて初めてnullをみたのでとても驚いたのを覚えていま~す」


三人組がそれぞれの個性たっぷりに嫌味を俺にぶつけてくる。前世でもそうだったけど、こういうやつらって何が楽しくてこういうことしてるんだろうか。暇人なのか?

ただ、今の俺が反論しても説得力にかけてしまうのも事実である。


リズが反論してくれる。


「あなたたちには関係ない、私は自分の意志でレイと魔術の練習をしているだけよ。」


「俺も君たちには敵わないことくらいわかってるよ、ただリズとは日常の会話をしているだけだよ。」


内心、今に見返してやるから覚えておけよって感じだったが、口には出さずにしておく。お楽しみは後にとっておいた方がいいからね。


ジャックがニヤニヤしながら憎たらしい顔面で話し出す。


「まあちゃんとわきまえているならいいんだけどね(笑)、リズさんは学校でまた会うことになると思うからまたよろしくです。」


そう言って三人組は去っていった。リズはというとものすごい剣幕で彼らの後姿を睨みつけていたが。


「レイ、あんな人たちは絶対に相手にしたらダメだからね。っていうかなんで言い返さないの、ちょっとお人好し過ぎじゃない?まあそれがレイの良いとこでもあるんだけど」


お人好しか、前世でもそうだったな。結局根本的な部分は転生しても直らないみたいだ。それが良いことなのか悪いことなのかはまだ俺にも分からない。少なくともリズはお人好しの俺で良いと思ってくれている。それだけで十分なのかもしれないけど。


「自分でもわかってるけどやっぱり性格は直らないみたい。」


「まあ、それがレイだしね。明日からは新しい生活が始まるけど準備はできてるの?」


「冒険者ギルドに登録してまずは基本から依頼を達成しようと思っているよ。その中で魔術の勉強も欠かさない。一回でもさぼったらあっという間にリズに抜かされちゃうし」


「なにそれ(笑)、レイには当分追いつけそうにないよ。私も王国サモナー隊に入るためにたくさん勉強してレイに負けないように頑張るから。あとさっきの三人組もこてんぱにできるぐらい強くならないとね(笑)」


「リズなら一人で楽勝でしょ、俺の分まで敵討ちおねがいします!」


「何言ってるの、レイも将来編入する前提だからね!」


「あっそうなんだ、がっ…頑張るよ」


これからはそれぞれの道へ歩みだす。リズは将来の王国サモナー隊の卵たちが集まる魔術学校へ。俺は、冒険者ギルドで自分にできることを探していくつもりだ。


いつかリズと同じ舞台に立てることを夢見て。


こうして数年の時が経過した。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次から冒険者ギルド編を書く予定です。いろんなキャラを出していくつもりです!

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