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第二十五話 生き残った自分にできること

レイと騎士団の冒険が始まります。

ワイバーン襲撃からしばらくした後、レイは街に戻っていた。件のフェネクス顕現から頭の中でフェネクスと会話ができるようになっていた。最初は使い魔ってちゃんと人間みたいに会話できるのか!と感心していたのだが、鍛冶屋のバルクに聞いたところ「レイやっぱお前は面白いことを言うな!でもそんな使い魔がいたら毎日退屈しないだろうな(笑)」と馬鹿にされたので、おそらくフェネクスが特殊なんだと言うことは理解したのであった。


今日も今日とてフェネクスと頭の中で会話をする。


(じゃあその話だと俺の今のスペックだとフェネクスの力を制御できていないってことか)


(ああ、その通りだ。ワイバーン襲撃の時も我の一部を顕現させたのは覚えているであろう。そのあと力尽きて敵に反撃されていては意味ないからな。まずは力の制御をできるようにすることだ。最終的には我の100%の力を制御することが理想だが、まずは徐々にマナの流れや出力の仕方を覚えていけばよいだろう)


(確かにあの時はとりあえず持っているマナを放出することしか頭になかったな、、というかあれで100%じゃなかったのか?)


(あまり舐めるでないぞ。我の力はあんなものではない。あの時はまだレイへの負荷を抑えるために我の方で力を抑制したのだからな。もっともこれからはレイ自身でそれを制御できるようにならなくてはこの世界では生きてはゆけぬ故、精進することだ)


あんな馬鹿げた威力でほんの一部分に過ぎないらしい。なんとも恐ろしい使い魔と契約してしまったものだ。だが、フェネクスとの会話で今後自分がやるべきことは見えた気がした。

もう何もできない無力な自分ではないのだ。


(よし、これからは少しずつ出力を上げて制御する練習をしていくか!ノアたちのためにも)



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



数日後、レイは第七師団の本拠地に足を運んでいた。<セブンラウンズ>の一角である第七師団は専用の拠点を構えており、その敷地の大きさと雰囲気にレイは圧倒される。周りでは団員同士が模擬戦を行なっていたり、淡々と魔術の練習や剣術の素振りなどに勤しんでいた。


そこに集結しているものたちは冒険者ギルドにいるメンバーよりも熟練度が高く、高度な技術を擁していることがレイの目でも分かる。


「ノアの個人的な傭兵になったはいいものの、俺なんかで本当に良かったのか?」


断るのが野暮な雰囲気だったとはいえ、実際に騎士団を目の前にすると自分がこれから張り合える存在になるのか不安にもなるが、ここはノアやフィオナのためにも期待を裏切るわけにはいかない。初めて自分のことを認めてくれた大切な存在だ。


拠点の正門まで来ると門番と思われる騎士が仁王立ちで立っている。筋肉隆々の見るからに強そうな団員だ。盗賊なんかが手を出したら一発でお空に飛んでいきそうな力を持っているのが容易に想像つく。


見るからに場違いなやつが乗り込んできたなと思われていそうだが、そんなことも言っていられない。

せめて外面だけでも馬鹿にされないように堂々と乗り込む。


「お疲れぇえー様です!私はレイといいます。ノアはいま、じゃなくて、騎士団長はいらっしゃいますか?」


緊張で声がひっくり返る上に危うく呼び捨てしてしまうところだった‥と反省する。こんな所で無礼者なんて追い返されたら元も子もない。


とても野太く力強い声で門番が返答する。


「あなたがレイさんですね。お待ちしておりました。ノア様から話は伺っておりますのでこちらへどうぞ」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「こちらの部屋です。それでは私はこれで失礼いたします」


「案内ありがとうございます」


門番がノアの部屋の前まで案内してくれノックして扉を開ける。


「問題ないわ、さあ入って」


部屋に入るとノアと隣に女性が一人立っていた。おそらくノアと同じ騎士団員だろう。だけれど普通の団員とは違う独特のオーラを放っている。美しいショートヘアでスタイル抜群の見た目こそ完璧な女性だが、レイの直感がこの人は怒らせたらやばいとフラグを立てている。


「この間はありがとう、レイ。ああ、紹介が遅れたわね。隣にいるのはジェシカで私の右腕で副団長よ」


「ご紹介に預かりましたジェシカと申します。ノア様からレイ殿のお話は伺っております。先日のワイバーン襲来の件では我々騎士団にご助力いただき感謝申し上げます」


「レイと申します。こちらこそノアさんたちに力尽きていたところを介抱してもらいました。とりあえず何とかなって良かったです」


「とりあえず自己紹介は済んだことだし、ジェシカもレイもそんなに硬くなくていいんじゃないかしら?」


「たしかに先ほどノア様がレイ殿を呼び捨てにしていましたが‥。レイ殿はいいのですか?」


「問題ないです!じゃあ、よろしくジェシカ」


「わかりました。よろしくお願いします。レイ」


お互いに信頼関係も生まれたところで、ノアが今後の話について口を開く。


「じゃあ早速本題に入るわ。先日のセイル村での調査の結果、私たちも警戒していた誘惑剤が利用されていることを確認したわ。これに惹きつけられてワイバーンが襲来し、フィオナやレイたちに襲いかかった。ジェシカも現物は見たかしら?」


「はい。私も現物を確認しましたがここまで誘惑効果が上がっているとは想定外でした。相当厄介な者たちが裏で糸を引いているかと」


一気にノアとジェシカの顔つきが険しくなる。レイもマイクたちに誘惑剤の罠に貶められた時のことを思い出して怒りが蘇ってきていた。


「私も同じ考えだわ。そこらの無法者が起こした事件にしてはスケールが大きすぎる。それと計画性もね。そのあと少し調査したけれど、やはり闇の冒険者がいよいよ本格的に動き出してきたとみて間違いないわね」


「ええ。噂によるとAランク冒険者もいるとの情報も入っています。本当だとしたらかなり厄介になりそうですね」


「闇の冒険者ってもしかして三人組のことだったりするのか?」


「レイがこの前言っていた冒険者ね。まだ確証はないのだけれどその可能性は高いわ。不自然なことに彼らの表でのパーティ名<希望の灯>はメンバーの素性を探っても全く出てのないのよ」


たしかセイル村で襲われる時に、今まで罠に嵌めた冒険者を全員始末したとロキが言っていたのを思い出す。全員が口封じのために殺されたのだ。


「やはりそうか‥」


罠に嵌められた人たちはどんな思いで最後を迎えたのだろう。愛する家族や恋人、友人もいたことだろう。せめてその罪の重さを彼らには感じてもらわなければならない。彼らを捕えるのが自分の役目だと強く自覚する。彼らの本性を目の当たりにして生き残っている自分にしかできないことだ。


「ノア、ジェシカ。もしよければ俺も協力させてくれないか?」


「もちろんよ、レイ。むしろこちらがお願いする立場だわ」


「私も大歓迎です、レイ。フィオナ様を救ったあなたがいれば心強い」


こうして3人の意見が一致する。


「二人ともありがとう。まずは情報収集からね。それとレイの実力を把握しておきたいからジェシカと一回手合わせお願いできるかしら?」


「えっ、手合わせ?」


「私も賛成です。疑っているわけではないですがレイの実力をぜひ直接私も見たいですしね」


レイは冷や汗が止まらなくなる。このタイミングでやるなんか聞いていない。せめて何か良い言い訳を思いつかなくては、、必死に頭を回転させる。


ここで当の言い出しっぺから若干の猶予が与えられる。


「でもよく考えたら二人ともワイバーン襲撃の件で完璧な状態ではないと思うから、2週間後とかはどうかしら」


よかった、、これで時間に余裕ができたと言わんばかりに全力でレイも頭をぶんぶん縦に振って肯定をする。


「それもそうですね。レイが賛成であればこのジェシカも異論はありません」


「じゃあ決まりね。二人とも楽しみにしているわ」


こうして手合わせまでのレイの猛特訓が始まるのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。気に入っていただけたらブックマークやいいねをしていただけると創作の励みになります。

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