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第二十四話 レイ、傭兵になる

久しぶりの再開です!よろしくお願いします。

今見ている風景が現実なのかどうか一瞬判断が遅れる。


黒い塊がセイル村を覆い尽くしノアの心も絶望に染まっていく中で、一筋の大きな光が全てを飲み込んでしまったのだ。


「あんなにいたワイバーンが一瞬で‥」


何があったのかは把握しきれていないが、何かとてつもない大きな力が存在していることは明白だった。


「とにかくセイル村へ急がないと!」


残りの道のりをノアが駆けていく。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ノアがセイル村へ到着する。あたりは怪我をした村人達が横になっており、村人同士で治療を施しあっていた。


幸いにも死者は出ていないようだ。さらに奥に進むと見覚えのある服装の少女を見つける。


「フィオナ!」


「ノアお姉様!」


フィオナとノアは互いに抱きしめ合い無事であることを噛み締める。


「フィオナ、本当に無事でよかった‥もうダメかと思ったわ」


「ノアお姉様、私は大丈夫です、それよりこちらの方のバイタルの確認をお願いします」


フィオナの隣には一人の青年が全ての力を使い果たした様子でぐったりと横になっている。ノアがここに来るまでの間、必死にワイバーン達に抗っていたことが容易に想像つく。その一方で体には大きな怪我はなく単純にマナが尽きているだけの様に見えた。


(これだけのワイバーンを相手に無傷だなんて‥相当上位の冒険者なのかしら‥)


「私に任せて。大きな怪我はないようだけれど念のため回復魔術をかけておくわ」


「根源たるマナと引き換えに力を示せ―。グレート・ヒール!」


レイに向けて緑色のマナが光り輝き始め、次第にレイも意識を取り戻す。


「うっ、くそ‥頭がいたい‥。そうだ、ワイバーンはどうなった!」


つい先程まで押し寄せていたワイバーン達のことを思い出し、レイが一気に飛び起きる。まだ残っていたとしたらそのまま放置するわけにもいかない。


「意識を取り戻して何よりです。ワイバーンはもう姿を消したので安心してください。立てますか?」


ノアが優しく手を差し述べ、レイも感謝を述べながら起き上がる。隣にずっといたフィオナも泣きながら安堵した表情をしている。


「レイさん!本当に良かった‥。ワイバーンに切り裂かれた時はもう死んでしまったかと思いました。もうあんな無茶は絶っっ対にしないで下さい!」


フィオナの少し強い圧力にレイもごめん、ごめんといった表情でなんとかその場をやり過ごす。でもフィオナを、村の人たちを守り通すことができたのならそれに越したことはない。


「ノアお姉様。この方は冒険者のレイさんでワイバーンの襲撃から私たちを守ってくださいました」


「フィオナ。後で詳しく話を聞かせてくれる?」


フィオナもレイの勇姿を語らずにはいられないといった表情で大きく頷いている。


「レイ殿。挨拶が遅れて申し訳ありません。私は王国騎士団の第七師団長ノア=ラングナー。此度はフィオナを、村人を守っていただき最大限の感謝を述べたい。本当にありがとう」


そういうとノアが地面に膝をつき深々とお礼をする。それをみたレイは大慌てで、


「そんなノアさんやめてください!第七師団長でもあろう方が自分にそこまでしなくても。感謝の言葉だけで十分ですから!」


レイも必死にそんな真似はやめてくれと説得する。この光景をギルドの冒険者に見られたらおそらく命がいくつあっても足らないだろう。ノア様に対しての侮辱だ、このnullごときが!なんて声が勝手に脳内で再生される‥。


でも真面目な話、こんな風に感謝されることは今までほとんどなかったなーなんてことも思ってしまう。ラングナー姉妹は本当にできた人たちなんだろう。


「この恩は絶対に忘れません。必ずあなたが困った時は私たちが力になりましょう。あと私のことはノアでいいです。話す時も敬語は不用ですよ」


「わかりました‥、じゃなくてわかったでいいのかな。慣れないな‥。そうしたらお互い敬語なしで!ともあれよろしく、ノア」


呼び捨てはまだ慣れないが、何はともあれノアの手助けなんてこれほど心強いことはない。なんといっても王国最強の<セブンラウンズ>の師団長がそう言っているのだ。ギルドの冒険者が嫉妬と妬みの視線を自分に向けるのが簡単に想像できてしまう。


「これからよろしく頼むわ、レイ」


「ノアも困ったことがあればいつでも自分に声かけてくれ。もっともEランク冒険者の自分にできることなんてほとんどないと思うけど」


それを聞いてノアは驚いた顔をする。それも当然だろう。直接見たわけではないがフィオナ曰くレイがワイバーンを退けてくれたというのだ。そんな力がある冒険者がEランクという方がむしろ不自然なのだ。


「失礼ながらレイ、本当にEランクなのか?」


「本当だ。ほら、これがEランクのタグさ」

そうするとレイは弱くて恥ずかしいとばかりにすこし躊躇いながらタグを取り出して嘘をついていないことを証明する。


「信じられないわ。レイほどの冒険者がEランクだなんて‥。きっと何かの間違いね」


それは心からの言葉だった。フィオナの心眼の力はノアももちろん知っており、真実を見通す力だ。そのフィオナが言っているのだから、彼の力は間違いないと断言できる。そしてなにより誠実なレイの姿勢こそがノアが信頼を置いている理由だ。


ここでフィオナがこの機会を逃すまいと慌てながらも提案を行う。


「ノアお姉様、特別にレイさんに第七師団に入っていただくことはどうでしょうか」


レイも突然の話に開いた口が塞がらない。だってあの<セブンラウンズ>だ。黙っていられる方がどうかしているのだ。


「フィオナ、話はありがたいけどさすがに遠慮しておくよ。正式に試験を受けていないのに入隊するのも公平じゃないし、そもそも俺Eランクだよ?」


「たしかにレイの言う通りね。第七師団に入隊してもらうことはできないわ」


フィオナは明らかにがっかりした表情をしている。すごくかわいそうなのだが、ここは心を鬼にして提案を断らなければいけない、自分にはあまりにも荷が重すぎる!フィオナよ、すまない、本当にすまない。


「ほらノアもそう言っていることだし。ね、自分はコツコツ頑張って冒険者ギルドで大人しくしているとするよ」


「そんな‥」


「たしかに第七師団への入隊は難しいわ。けれど私の<個人的な傭兵>として協力してもらえるのなら文句は出ないはずだわ」


「えっと‥、つまり、んー、ノアさん、どういうこと?」


レイもまさかのノアの裏切りに困惑してしまう。こ・じ・ん・て・き・な・よ・う・へ・い?

意味は分かるのだが、なぜか理解するのを脳が拒否してしまう。なんでこうなった?


「そのままの意味よ。私個人の意思としてなら問題ないでしょ?あなたのような人が正当な評価を受けないまま人生を歩んでいくのは私が容認できないだけ。まだあなたには返しきれていない恩もたくさんあるわ。お願い、私のわがままだと思って引き受けてくれないかしら」


何かの冗談かと思ったが、その真剣な眼差しはノアが本気であることを示していた。ここまで女の子に言われて断るほど男が腐っているつもりはない。


「そういうことなら喜んで。こちらこそお願いします」


こうしてレイの新たな冒険が始まろうとしていた。


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