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第十六話 ジェシカの決意

召喚魔術登場です!

目の前に突如として現れた謎の集団。5人ほどはいるだろうか。にやついた顔でこちらにゆっくりと近づいてくる。ジェシカたちも怒りに満ちた眼差しでにらみつける。


立ち止まるとリーダー格と思われる男が話し出す。


「初めましてジェシカさんとそのご一行さん。私たちはちょっと悪い冒険者でしてね。闇の冒険者とでも言いましょうか。まあ、そんなに怖い顔しないでくださいよ」


「私を知っているとは…光栄なことです。でもあいにくですが、悪人たちと話すような口は持ち合わせておりません。ここでおとなしく私たちに捕まるか、抵抗して命を落とすか……さあ、選んでください」


ジェシカも毅然とした態度で対峙する。これに対し、ひるむことなく男はやれやれといった態度で話始める。


「あまり我々を甘く見ない方がいいですよ。まあこれだけの人数だ、いくら王国騎士でも無事とはいかないですよねぇ?」


そうすると男は指を鳴らす。その合図と同時に陰に潜んでいた集団が姿を現した。数は全部で20人はくだらないだろう。さすがのジェシカも動揺を隠せない。


(余裕な態度の理由はこれでしたか…、20人はまずいですね。致し方ない…)


焦っている姿に満足したのか、男たちがにやつきながら武器を構えてジェシカたちにプレッシャーを与える。


ジェシカも相手が投降してくれる可能性に1パーセントぐらいは賭けていたが、やはりならず者は痛い目を見ないと分からないようだ。


「そうですか、残念です。あなたたちの答えは分かりました。私は手加減が苦手なので、恨まないでくださいね」


ジェシカの言葉遣いはいつも丁寧だが、このときはそれがまったく意味を成さないほどに、静かに燃え上がる強烈な怒りが込められていた。

思った以上に相手は厄介で、ここまで用意周到だとは思わなかった。さすがのジェシカでも正直この人数は勝てるかどうかわからない。だとしても村人と仲間をここで死なせるわけにはいかないのだ。


ジェシカは覚悟を決める。体の末端に至るまでマナの流れを全身にみなぎらせる。


カイルとエイミーも圧倒的なオーラを放つジェシカの姿を見て、師団長右腕の凄さを改めて思い知らされる。


同時にジェシカの異変にリーダー格の男が気づく。肌でも感じられるほどに周りの空気がピりついているのが分かった。



(あれは召喚魔術!これはいよいよ本気でかからないとこちらが死んでしまいますな。いやはや王国騎士団の、その中でも彼女の使い魔を実際にこの目で見れるとは)




「氷熊の使い魔よ。我と誓いし盟約に応じ、力の根源たるマナと引き換えにここに顕現せよ―。サモン!」



―――――召喚魔術。それはサモナーの切り札であり、使い魔を行使する魔術である。故にそれを発動させたときはサモナーが本気になったことを示している。


地面に魔術紋様が浮かび上がり、眩い光で周囲が照らされる。バリバリと音を立てながらジェシカの使い魔である氷熊<フロストベアー>が召喚される。圧倒的なパワーと氷属性の魔術を行使できるため、ジェシカとの重斧との相性は抜群だ。


「根源たるマナと引き換えに力を示せ―。<インテグレーション>」


召喚された使い魔とサモナーが一体化する魔術<インテグレーション>をジェシカが発動させる。この状態では大幅に戦闘能力が向上し、詠唱無しに固有のスキルを発動させることができる。

一切の容赦はしない、ただ正義のもとに悪を断罪するのみ。ジェシカが重斧を構えて闇の冒険者たちに立ち向かう。


「容赦はしない。覚悟してください。」


地面を蹴り上げ空中に躍り出たジェシカが重斧に氷塊をまとわせてその質量を大幅に上昇させる。重斧も相当な重さになっているが、インテグレーションを発動させている状態では軽々と扱うことができる。


「はあぁぁぁー!」


その大きな塊を重力に従って地面に一直線に叩きつける。


「くそっ、あんな化け物がいるなんて聞いてないぞ!」


敵も慌てて防御魔術でシールドを発動させるが、今のジェシカには紙切れに等しい。シールドごと敵を悉く粉砕し、中心部には大きなクレーターが出来上がる。


何とか直撃を回避した敵もいたが、その衝撃波によって体勢を大きく崩される。


「後ろががら空きですよ!」


着地と同時にすぐさま重斧を持ち直し、大きく横へ薙ぎ払う。大きな鉄塊が無慈悲にも敵の背後に襲い掛かり、為すすべもなく周囲へ吹き飛ばされた。


「まずいな…こうなれば、お前たち!まとめて周囲を取り囲むように襲い掛かれ!」


闇の冒険者たちが使い魔を召喚しジェシカにまとめて襲い掛かる。カイルとエイミーも他の敵に苦戦してなかなかジェシカの応援に向かうことができない。


「ここで村人共々終わるんだよ!王国騎士団サマァ~!」


敵がインテグレーションを発動させ、特攻覚悟でジェシカに同時に襲い掛かる。


「人数が多すぎるっ!」


ジェシカも重斧を横に構えて、背後から襲い掛かる敵を迎え撃つ。相手の剣と重斧がぶつかり合い鈍い金属音が周囲に響き渡る。撃ち漏らした敵がジェシカにメイスを振り下ろす。


「王国騎士団さまも後ろががら空きだぜェ~!」


ジェシカの背中に大きな衝撃が降りかかる。しかし寸前で背中に氷の塊を生成して衝撃を和らげ、それと同時に生成された氷がメイスを取り込み相手の動きを封じていた。全てジェシカの狙い通りだった。


「この女ぁー余計なことを!」


敵が慌ててメイスから手を放すが、その一瞬の遅れをジェシカは見逃さない。


重斧を両手に構え、バク中をしながら勢いよく後ろへ振り下ろす。一撃は敵の脳天を容赦なく叩き潰す。


「今のはさすがに危なかったですね…」

 

インテグレーションを発動していなければ自分がやられていたかもしれないと状況を振り返る。しかしまだ嫌な予感がする、何か見落としていないか、、そう思った瞬間だった。

地面が激しく揺れジェシカに襲い掛かる。


「しまっ」


大きな土の流れにジェシカは飲み込まれる。


「私を忘れてもらっては困りますねェ、ジェシカさん?」


リーダー格の男がにやにやと笑いながら使い魔を行使する。


「言い忘れていましたが、私もまあまあ戦いには自信がありましてね。実はBランクなんですよぉ。まあジェシカさんには及びませんがねェ」


男が自身に満ち溢れた表情で話し出す。ジェシカはAランクだが、今までの戦闘でマナも体力も相当消費しているため、Bランクの敵の相手は相当分が悪い。



ジェシカも今までの戦闘と地面からの攻撃でダメージを負い、Bランク相手に反撃に打って出るには限界だった。


(今ので左腕を持っていかれた…、Bランクが敵にいたとは…さすがにまずい。心苦しいがノア様に伝達しなければ)


内心今すぐ戦線離脱したかったが、村人や仲間がいる状況ではその選択はできなかった。必死に痛みをこらえて再び立ち上がる。


「Bランクが敵にいたとは驚きました。しかし私の前では誰も逃がしやしません。覚悟してください」


悲鳴を上げる体に鞭を打って重斧を振りかぶる。口ではあのように言ってみせたが、正直今の状況でBランクの相手はかなり厳しいのは分かっていた。


(せめてノア様が来るまでの間だけは、耐え抜かなければ!)


こうしてジェシカの長い長い耐久戦が始まった―――――。


ここまで読んでいただきありがとうございます。ブックマークやいいねをいただけると創作の励みになります。よろしくお願いいたします!

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