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第十三話 デスマーチの始まり

ゴルドフから指揮の任を受けた闇冒険者は、仲間を引き連れてライル村へと向かっていた。道中は集団で行動すると目立つので、5人ずつ4つの別動隊に分かれる。


指揮役の二人が魔術詠唱を行い半径500mまで通信可能な基本魔術を組み立てる。


「よし、通信魔術は問題なく発動した。こちら指揮担当アルファだ。ベータ、ガンマ、デルタ、聞こえるか」


「こちらベータ。問題なく聞こえている」


「ガンマだ。通信は良好だ」


「最後にデルタだぜ。こっちも問題なく聞こえているぜ」


各々に通信が問題ないことを確認すると、作戦を次の段階へ移す。


ライル村では周辺の警備のために、見張り役を村外の出張小屋に入れ替わりで向かわせている。そのため、誘惑剤設置のためにはこの見張り役を先に排除する必要があるのだ。


「こちらアルファだ。遠視魔法で見る限り見張りは一、二…合計で二人だな。一人ずつだと増援を呼ばれる可能性がある。ベータ、ガンマの二班同時攻撃で奴らを無力化しろ。なるべく隠密に遂行するように」


「こちらベータ。了解した。我々は槍持ちを片付ける」


「ガンマも了解だ。こちらはショートソードの方を引き受けた」


見張りも緊張感のない様子で談笑していた。この機会を逃すまいとベータとガンマ部隊が見張り役へとゆっくりと近づいていく。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆


見張り役の二人はいつもと変わらない役回りに少し退屈しながらも、周りの村民たちと何気ない会話ができるこの時間を楽しみにしていた。

今日も風が穏やかで空も快晴。この村の平穏な様子を表しているようだった。


「レックさんの娘さんも基本魔術を使えるようになったらしいな。ご飯の準備の時もお母さんの料理を手伝っているんだってな。いい子じゃないか」


「まあ、火をおこしたり本当に初歩的な魔術しか扱えていないですけどね」


そう言って今日見張り役のレックとリーが談笑していた。


「そういうリーさんの息子さんもしばらく見ない間に大きくなりましたね。将来は有名冒険者、それこそ王国騎士団にだって入れるんじゃないですか」


「それは買いかぶりすぎだよレックさん。うちの息子はただ体がでかいどこにでもいるガキんちょだよ」


そういって二人は嬉しそうに自分たちの子供の話をしていた。しかしこの平穏な時間は突如終わりを迎えるのである。


あまりにも理不尽極まりない悪意によって――――――。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ベータとガンマ部隊は一度合流し、作戦を立てる。


ベータ部隊の班長が話しだす。


「よし、俺たちベータ、ガンマの班長はターゲットに近づいてダガー投擲で仕留める。残るメンバーは周りに敵がいないか監視を継続しろ。少しでも不穏な動きがあれば安全圏まで一時離脱するぞ」


「「了解した」」


班長2人は基本魔術によって筋力と隠密性を向上させて、ターゲット二人に近付いていく。そして腰に備え付けていたダガーと液体の入った瓶を取り出す。


「この液体には神経毒が含まれているから注意しろ。軽く皮膚に触れただけでも、命の危険があるからな」


「了解だ。ダガーの刃先に塗って一気に投擲で仕留めるでよかったよな?」


「ああ、それで問題ない。では行くぞ」


実行役の二人は有効投擲範囲になったところで相手の首元に向けて、ダガーを一気に投擲する。


筋力強化によって投擲されたダガーはものすごい速さで相手の首元まで近づき、放物線を描くことなくまっすぐに飛んでいく。



「今日も何もなかったですね。リーさァ、うォあ!ぐがはァ!」


レックの首に無慈悲にもダガーが突き刺さる。刃先には神経毒が塗られているため、大声を上げる暇すらも与えない。


「レックさん!誰だァっっゴハァッ!」


レックに異変が起きたことに気付いたリーもその状況を理解する暇もなく、のど仏をダガーに切り裂かれ地面に体が崩れ落ちた。


指揮担当のアルファ部隊が状況を確認する。


「よし、ベータとガンマがターゲットを片付けたな。あとは村周辺の分かりにくい場所へ誘惑剤を設置するだけだ。残りのメンバーとデルタ部隊も周囲の安全に留意しつつ、こちらへ合流しろ」


「「「了解した」」」


数分後、4つのチームが合流して誘惑剤の設置位置を確認し合う。同じ場所に設置するのではなく複数個所に分散させておくことで、ガーゴイルをばらばらに配置させ村への被害を大きくすることができる。


各々が設置し終わり、所定の監視位置へ引き返す。


問題なく作戦が遂行されたことを確認し、安堵した表情で指揮担当が話し出す。


「よし、これで設置は完了した。あとは離れた場所からガーゴイルたちが寄ってくるかを確認するだけだ。そこまでくれば9割方作戦は成功と言ってもいいだろう。だが、途中で茶々が入ったら俺たちが直接手を下さないといけないかもしれない。」


「ただ見張り役も片づけたし、王国騎士団にも気付かれた様子はない。まあ、杞憂に終わると思うがな。あと一応見張り役の死体も回収しておくように。バレるにしろ、ガーゴイルによって村が襲われた後の方が都合がいいからな」


また、メンバーも任務達成に安堵しているようで各々の感想を口にしている。


「これで、俺たちの安泰な将来計画に一歩近づいたってわけだ。これから楽しみだねぇ」


「そうだな。とりあえず俺たちがヘマをしてゴルドフの悪魔に殺られちまうことはなくなったな」


「あまりフラグを立てんなよ。そう言ってるとお前の首が一番に飛んで行っちまうかもな」


「てめぇ、そりゃ冗談でもきついぜ」


闇の冒険者たちは自分たちの仕事を終え、この後迫りくるであろうガーゴイルの群れに胸の高鳴りを抑えきれずにいた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。ブックマークやいいねをしていただけると創作の励みになります。よろしくお願いいたします!

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