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第十二話 暗躍する影

とある地下階層にて  ノアとジェシカの作戦会議から4時間前――――――。


薄暗い地下施設にて男たちが話をしている。数は二十人はいるだろうか。ここにいる全員が犯罪歴をもった闇冒険者である。


その中に一際体の大きい男がいた。男の名はゴルドフ。もともとは貴族出身だが暴力事件や窃盗、女性の監禁など数えきれない犯罪を重ねてきた悪人である。その素行の悪さによって家から追放された過去を持っている。

ある時から自分の利益のためであれば、平気で人を殺めるなど完全にたがが外れてしまった。


ゴルドフの腕には肌色が見えないぐらいにぎっちりと刻み込まれた刺青があり、舌には複数のピアスが開けられている。一般人がこの男に目をつけられたら恐怖でその場を離れることはできないだろう。

また額には傷が刻まれており、今まで殺してきた人の数を自身の栄光として残しているのである。もはや悪魔といっても過言ではない。


厄介なのがその戦闘能力である。頭がおかしいだけならよかったものの、この男には天から間違えて戦闘センスを与えられてしまったようだ。ランクはA。冒険者の中でも到達できるものはほとんどいない。

もちろん使い魔を使役しており、その実態は謎に包まれている。唯一分かっていることは基本魔術によって自身の身体能力を向上させ、接近戦での戦闘を得意としていることだ。彼に殺されたものはみな、大きな岩が正面から衝突したのではないかというほど、圧倒的なパワーで押し潰されていたという。


男はこれからライル村で始まる蹂躙劇を楽しみに待っていた。


「なァ、お前たちィー!これからライル村で響き渡る絶叫と悲鳴を考えると興奮で頭がおかしくなりそうだぜェ!!ひゃはああァァァ!!」


ゴルドフにとって弱者が生み出す悲鳴と絶叫の瞬間はこれ以上ない至極の時なのである。

その掛け声に周りの男たちも歓喜に沸く。


「そうだァ!蹂躙した後は泣き叫ぶきれいな姉ちゃんで遊んでやるぜぇ」


「てめェ、俺より先に楽しんだらその腐った頭かち割ってやるからな」


部屋のあちこちから、おおよそ人の思考とは思えない言葉が飛んでくる。まるでこの世の地獄をみているかのような風景だ。


その中でも、まだわずかな良心が残っていた一人の闇冒険者が恐怖のあまりその場を逃げ出そうとした。


(…こんなところにいたら本当の悪魔になっちまう!まだ今なら引き返せる…)


今までは窃盗や口論となって暴力事件を起こしたことはあったが、ここまで心を悪魔に売ったつもりはこの男にはなかったのである。金儲けができる程度の軽い気持ちでこの話に乗ってしまった過去の自分を恨む。







―――――しかし、本当の悪魔はそれを見逃すことはなかった。


逃げ出した男の背後に、いるはずのない巨体がそびえ立っている。ゴルドフが基本魔術によって身体能力を向上させており、俊敏性と筋力強化を発動させたのである。

男へその巨体から繰り出される拳、いや大きな岩が猛スピード振り下ろされたときには痛みを感じる暇もなく、意識がこの世から喪失していた。


背後の壁には男の形をしていたはずの肉が飛び散っていた。

周りの男たちも一瞬の出来事に理解が追い付いていない。


静寂を切り裂くようにゴルドフが口を開く。


「もし裏切ったらァ、こいつみたいにミンチの材料になっちまうからなァ。そのつもりでいることだなァ」


その瞬間、この場にいる全員が束になってもゴルドフには遠く及ばないことだけは、頭ではなく体で理解できた。


ゴルドフが話を続ける。


「クソ野郎どもォ、盛り上がるのはいいが今回のショータイムは絶対に成功させなきゃなんねェーのは分かってるよなァ?そこのお前たちィ、お前らがライル村での指揮をとれェ。もしうまく魔物で蹂躙できなければ、お前たちが直接手を下せ。分かったなァ?」


指をさされた男たちもその威圧感にうまく声を発することができない。一人はその恐怖で返事をする声がひっくり返っていた。


「いいかァお前ら、■■■とはもう話はついている。あとは計画を実行に移すだけだァ。成功した暁にはお前らにも相応の身分と不自由ない生活環境を与えてやる。絶対にやり遂げるぞ」


ゴルドフは部屋の隅に置いてあった誘惑剤を実行部隊に手渡す。誘惑剤設置の際にはなるべく人に見つからないように対処すること、もし見つかった際には叫び声をあげられる前に始末することを念押ししておく。


「お前たちであれば、一般住民ぐらいならぁなんてことはねェよなァ?助けを呼ばれたらぁめんどくせぇ。王国騎士団でも呼ばれたら恐らく真っ先にどこぞのクソ真面目ねぇちゃんが来ちまうからなァ。まあ美人と殺り合うのもわるかぁねェけどな!っはああああああ!」


こうして、実行部隊は魔物の誘惑剤を持ってライル村へと向かうのであった。

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