弍
彼女と顔を見合わせて笑っている間に
その女性は、闇に溶けたように見えなくなっていた
さて、そろそろ出口
扉が2つある
ひとつは道に沿っていて、このまま出るのだろうなという、自然な形で
もうひとつはまるで、きた道を引き返すような、ちょっと不自然な形で…
「どっちを開けてみる?」
彼女に聞いてみる
多分、どちらかはフェイクで、最後のびっくりが企画されているのだろう
「うーん、どうしよう…?」
彼女も、フェイクの扉には気が付いていて、
その怖さ次第では、ちょっと見てみたい気もするようだ
「普通は、こっち開けるよねー」
と、道なりに続く扉を指さす
「そうだよね、こっちの方が自然…」
扉に手をかける
少しだけ開けた扉の隙間から、不自然な赤い光が漏れてくる
『あれ?こっちがフェイクだった?』
思わず、扉を閉める
赤い光を見た彼女も、少し顔がこわばっていた
「いやいや、手がこんでいるね〜?」
わざと明るい声を出して話しかける
「じゃあ、こっちか?」
不自然な角度に取り付けられた扉を開けてみることにする
しかし、そこには怖い顔の魔王のオブジェが飾ってあるだけ…
ガラス張りでそこから後ろに通り抜けられそうもない
「えっ?じゃあ、やっぱりこっちなの?」
今度は彼女の意見を聞く余裕もなく、始めの扉を開ける
赤い光に照らされていたのは、
廃園になったような遊園地の、真っ赤な夕暮れの姿だった