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空間を支配する者

「おい、どうした!」

空間は重力が変えられているらしく、自由に動くことが出来ない。

それでもなんとか身体をばたつかせ、犬かきをするようにしてバートリーに近寄った。

バートリーの小刻みだった震えは今や全身を大きく揺さぶるような動きに変化している。

「わ、た、し…わたしは…」

「お前、喋れないんじゃ…」

「わたしは…」

不明瞭な言葉を呟きながら、バートリ―はガタガタと震えていた。

だがその反応を繰り返すことで、生気のなかった目が、意志を取り戻し始めている。

「ここは…どこ?私は…何をしていたの…」

「落ち着け。お前の名前は」

「三上…佐奈」

バートリーの本名は、三上というらしい。

三上が意識を鮮明にしていくと、震えは治まっていった。

「どうやら効果は覿面のようだな」

空間の中には三上と玄森以外誰もいないはずだったが、突如物音を立てずまた将校が立っていた。

一目見ただけで分かる。この若い将校、ただものではない。

一見知的でありながら豪胆さも垣間見える顔つきに、極限まで引き締められた身体。

研究者と軍人の良いところのみを足したような男だ。

「三上、お前は下がっていろ。危険だ…。この空間はアンタが作ったのか?」

「ふむ。貴様はこの空間に入ってもなんの反応も示さないのだな。映像では何らかの力を使っているのを確認したのだが。いかにも、私がこの空間を作った」

将校は仰々しく頭を一度下げる。

「アンタの名前は?」

「私はスイ・リィエン。プレスキーエリア軍大将だ」

リィエンは体勢を戻すと、鋭い目つきで玄森のことを見据える。

「50年前、二ホンエリアから突如放たれた粒子を我々は当時に回収・保存し研究を続けていた」

(また50年前…)

「詳しくその話、聞かせてもらいたいが…」

「…私に勝てたら、話してやろうじゃないか。勝てるなら、な」

リィエンから激情が噴出するかのようなオーラが放たれる。

「貴様は中々できるとみた。精々楽しませてくれよ」

両手にはバグ・ナウと言われるる小型武器が握られていた。

「貴様の名前を聞いておこうか。なんという?」

「二ホンエリア軍特殊兵士・玄森漆」

リィエンを見ていると、闘争心のようなものが沸いてくる。

空間の気力奪いの効果も、闘争心でかき消せるくらいの気持ちだ。

この男とは、是非肉弾戦で正々堂々と戦いたいというような気持ちにさせられるのだが、それはこの空間を支配するリィエンの術なのだろうか。

玄森も両手を鋭いブレードに変え、構える。

「楽しもう…!」

そうして、戦いの火蓋は切られた。




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