棒術使い
(さて…どう戦おうかしら。手の内はあまり見せられないけど、この男は手練れ。あまり隠せないかももね)
「…」
「表情がない女は殺し甲斐がないが…その妙な力を見せてもらうにはいいサンプルだ」
この将校の写真は、見たことがある。敵エリアの名簿に情報が載っていたはずだ。
名前はワン・ダルム。プレスキーエリア義勇軍の兵隊長で、棒術と相手の動きを読むことに長けている。特に相手の動きを読むことに関しては群を抜いており、大抵の攻撃は書劇でも見切ることができると記されていた。
戦いの映像は、おそらくどこかで記録されている。こちらが長く戦えば、後々戦法が見抜かれ対策を取られてしまうだろう。
早々に蹴りを付ける。
氷柱をダルムの足元真下に作り出し、一気に貫こうと試みた。
「なるほど、氷の柱を攻撃手段にも作り出すのか」
発動の素振りを見せたつもりはなかったが、氷柱の出現を容易くダルムは見切り、後退し体勢を整えた。
「今度はこちらから行く」
「…!」
間合いを詰めにかかるダルムに、動きを阻むように能力を発動するが、全て完全に読まれていてかすりもしない。
一度氷柱を空中に出現させ乱射しても、手に持つ棒で容易く砕いてしまう。
棒の威力が一番発揮される距離に立つと、ダルムは棒を激しく回転させた。
「棒術・変幻九龍」
ダルムの持つ金属製の棒が一気に伸びて、確実にバートリーの胸を強く突く。
貫かれこそしなかったものの、強い衝撃でバートリーは呼吸が乱れて動けない。
「終わりだ。棒術・穿孔鉄」
呼吸を整えるバートリーに、ダルムは棒を投げ槍のように構えて勢いよく心臓めがけて的確に突き刺しそうとした。
だがダルムにも、突き刺すのに刹那の動きの空白が出来ていた。
この一瞬は、回避も予知もしていない。この隙を、跳宰は見逃さなかった。
呼吸が乱れたのは事実だが、心を失っているバートリーにはさして痛みを感じさせていない。
隙を作るための演技だったのだ。
(バートリー、一点氷柱!)
ダルムの1・5倍の大きさであろう氷柱が、彼の踏み出そうとしていた左足と胴体を貫通した。
「!?!?貴様…!!」
何かを言いかけて、ダルムは絶命した。
戦いが終わり、バートリーは囲んでいた氷柱を静める。
玄森は中の様子が見れずやきもきしていたが、立っているバートリ―を見て勝利したことを知って安堵した。
「貫通か…」
『やっぱり、単調な動きではここから先の人たちには見切られてしまうわね。次、玄森特殊隊員が戦って。私はこの子の能力をもう一度考える』
「考えてどうにかなるものなのか?」
「能力者の力の真価は、その応用性なの。この子の力も、解釈を変えるだけでまた違う発現方法ができる…あ、中腹のエリアにいた将校は、今の戦闘を見て逃げ出したみたい。残りはターゲットの一歩手前の階にいるやつだけね。残党は外にいる残りの子で狩るから、貴方は最後の将校を確実に倒して」
「了解」
「この子は付いていかせるけど、戦力にならないから。外の状況次第で戻って来る。任せたわよ」




