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本戦開始

コンテナの中での静寂が、長く感じる。

時間にしては10秒ほどなのに、体感では数分、目をつぶって黙祷しているような時間の遅さだ。

『中枢部に到着。敵軍はコンテナの周りを包囲中、警戒されたし』

「…こちらに来ることは想定内だったみたいね。全員、私の側に集合」

指示通り全員で固まると、跳宰は能力を展開し、コンテナの四方に高さギリギリの土人形を作り出し、自分たちを土で作ったシェルターの中に入れた。

「どうやらコンテナを破壊しようとしてる。一撃を凌いだら、玄森特殊隊員に一番手を任せるわね」

「外が見えるのか?」

「ゴーレムの感覚は、私たちよりも優れている。視点を向けておけば、外の声も聞こえるの。どうやら相手は砲弾で一気にこのコンテナを破壊して、まとめて殺せば解決と思っているようね。来るわよ」

跳宰がそう言い切った直後に、爆音が鳴り響いた。強い衝撃で座っていても土壁に何度も激突するくらい体が持っていかれる。

高熱が発生しているはずだが、土シェルターの中に熱さも伝わってこない。これが跳宰の本領なのか、と玄森は戦慄いていた。

「コンテナが完全に崩壊した。ゴーレムを出撃させて気を引くから、順次出撃!」

跳宰は人差し指で土壁を撫で、シェルターに人が屈んで出入りできるくらいの穴を作った。

玄森が穴から脱出すると、他の10名も続いて出て来る。

跳宰以外が土シェルターから出ると、穴は塞がれた。

ストレスカウンターには跳宰からのメールが入っていた。『真正面にある白い建物…軍事施設に、このエリアの長がいる。兵を殲滅し、その長の首を取ったらミッションクリアよ』

「ったく…。やるしかない、か。俺は今は軍人だからな」

ゴーレムの戦闘で土煙が立ち込めており、視界が悪くなっている。俊足で合間を塗っていけば、軍事施設の入り口にはすぐに着くだろう。

玄森は準備運動をして、人の目に付かぬように駆け出した。

ゴーレムと戦っている兵士は気づかない様子だったが、軍事施設に一歩近づくにつれ、確実に玄森を捉えていると思われる素振りを見せる兵士が増えて来る。そういった兵士に限って自分の実力に自信があるのか、銃を持たずに各々の剣?で切り込もうとかかってきた。

「てめえらで消耗するつもりはないんだ、果てな」

纏めて殺そう。こんなのにかかりきりになる暇はないのだ。玄森は両腕をマシンガンに変え、周囲の兵士たちを一緒くたに蜂の巣にした。

…が、弾丸が致命傷ではなかった兵士は構わずにまた突っ込んで来る。

マシンガンを発射するモーションで、防御が追いつかない。

傷を負うことを覚悟したが、それを味方の能力者がカバーするように能力を発現した。

長い茶髪の若い女性だった。

彼女の能力は<氷柱を作り出す能力>で、玄森の側にいた兵士たちをまとめて串刺しにした。

『彼女が手空きだから、貴方に付いて行かせる。二人で協力し、施設内部へ」

『了解』

周りに兵士はいない。一気に建物の玄関に駆け出していった。

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