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政府高官

そうであれば私も気が楽だったんだがねえ…。君の勘は当たっていたよ。お偉いさん方がまたロクでもないことを考えついたようだ」

嫌な勘ほど、的中する。これから政府が立案した計画が管理職に就く上級研究員に公表される、と黄瀬はボヤいた。

詠斗と会ったのは、丁度会議室に行く途中だったらしい。

「なに考えてるんですかね、このエリアのお偉いさんは」

「君も分かっているだろう。このエリアの高官たちは自分の利益しか考えていないことを」

このエリアに関する全ての決定権を持つのは12人の政府高官である。エリア内の物事は、この高官たちが決める。

高官になれるのは、何度も起きた戦争を生き抜いた一族だけ。そんな家系は大戦前には大勢いたが、今となってはそんな家系はニホンエリア全域で20に満たない。だが世界を様々な意味で崩壊させた戦争を全て生き抜いた知恵、運、財力は今では羨望の対象だった。

一度その地位に就けば死ぬまで引退することはできないが、このエリアの実権を全て握ることが可能だ。

現在の12人の高官たちは平均年齢70歳。ニホンエリアは唯一国の体系を残して国民を管理している地域だが、他のエウロパエリア、サヘイエリア、ゼロエリアには人が国境や権限を持たず点在して過ごしている。

そんな地域に住む人々を、高官たちは全て消滅させたかった。ニホンエリアに住む者が大戦を生き残った優秀な種族であり、他は乞食と変わらないと言う徹底的に見下している思いが根強いと噂されていた。

そして高官たちは、とりわけ財を成すことに意欲を燃やしていた。高齢故に実際に見える者への執着が高くなっているようだった。

「今から胃がキリキリと痛むよ。完遂させなければ、罵声を永遠に浴びせられるからね」

大きなため息をついて、黄瀬は会議室へ歩いて行った。


朝礼が行われたのは、定時の8時から一時間遅れだった。

今日は普段この施設に来ることがない軍人たちが険しい顔をして部屋の中を取り囲むように配置されている。

ピリピリとした空気の中、黄瀬が朝礼の開始を告げた。

「本日の連絡事項は、政府より通達された計画についてです。ニホンエリア軍団長桜井一馬(さくらい かずま)殿、宜しくお願い致します」

登壇した軍団長は、軽蔑するような目で頭を下げる研究員たちを見下ろした。

「この度、凍結していたエリアプロジェクトを再始動することが会合で決まった。始動するのは<能力者(アビリティヒューマン)プロジェクト>である!50年前に凍結された計画だが、貴様らの地道な研究により再びこの計画を動かすことが可能になった。これからこの施設では、軍で集めた対象者で実験を行ってもらう---」

<能力者プロジェクト>の名前は聞いたことがない。実験に直接関わるのは、上級研究員とその助手に選ばれた数名の助手だけであるとも通達された。

具体的な内容は告知されなかったが、その露骨な計画名に<最奥>のことを連想していた。

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