その程度なら、余裕だね〜跳宰のバカヤロウ…〜
揺れが収まると、今度はプシューと大きな排気音が外で鳴り響いた。
『コンテナ、開きます。転送地点は、プレスキーエリア軍の第一基地倉庫群の真後ろです。プレスキー軍は当倉庫で出撃準備中。なお、こちらの存在には気づいていない模様。直ちに出撃し、殲滅してください」
アナウンスが状況を述べた後、コンテナが開く。
『ストレスカウンターリミット、解除』
その言葉と同時に、ストレスカウンターの縁が赤く光った。
「出撃開始。玄森特殊隊員は、私に付いてきなさい。散れ!」
跳宰がコンテナから駆け出して行くと、10名の能力者達は三手に別れて3つある倉庫へ向かった。
跳宰の走るスピードは、正直玄森はついて行くのが精一杯なくらいの速さだった。玄森も訓練で基礎身体能力を鍛えていたつもりだったが、驕りのようだった。
「ちょ、待っ、速い速い」
「この程度で根を上げないでね?ここは貴方の力を試す格好の場でもあるんだから」
部下と別に跳宰が向かったのは、倉庫のそばにある軍隊待機場所だった。
物陰に隠れて、集団の動きを観察する。
プレスキー軍は蟻の群のように集団が規律を作ったように綺麗な列を作って集合し始めていた。
軍隊の集まる正面には、勲章?をゴテゴテと大量に身につけた肥満気味の将校が台座に乗って直立し、手にステッキをピシャリピシャリと構えながら軍隊を凝視していた。
その様子を確認した跳宰は、ニンマリと好戦的な笑みを浮かべた。
「私は今日は貴方能力を試させて貰うわね。他の事は気にしないで、存分にヤって」
「何をしたらいいんだ?」
「ほれ、行きなさい!」
跳宰は突如巨大な土人形…15m位の大きさだろうか、そんな巨体を2体作り上げた。
「バッ、そんなことしたら気づかれ…!」
「それでいいのよ」
巨大な土人形は出現する際に待機場所の建物を勢いで損壊させた。当然、ただ事ではないと感知した野外の軍人と、待機場所からもワラワラと兵士が湧いてくる。
「じゃ、あとは頑張ってね!」
跳宰は次に、待機場所全域を囲む土壁を急速に作り上げ、中に軍隊と玄森を隔離して自身は外壁の外に待機しているようだった。
(土人形の目で状況は見てるから安心して、屍になっても回収してあげる)
「あのアマァ…!やってくれるぜ…!」
突如放り込まれた修羅場に、思わず冷や汗を掻く。
軍隊は既に玄森を囲い込み、何やら訳の分からない言語を喚きながら発砲準備をしている。…が、撃ってはこない。
「貴様、その軍服から見るにニホンエリアの狗だな?」
囲いの一部が、さっと道を開ける。悠然と歩くのは、先ほど台座に立っていた将校だった。この人物は、ニホンエリアの言葉を話すことができるようだ。
「いつ忍び込んだのかは知らないが…貴様を捕獲し、情報源にさせてもらおう!」
将校が合図を送り、再び軍隊の列を割って去ってくと、兵隊達は銃を一旦納め、直刀に切り替え襲いかかってきた。
「跳宰のクソ女、あとで見てろよ!」
焦りで両腕は既に一番鋭いブレードに変化させてある。
飛びかかってくる軍人達を、玄森は人の合間を縫うように移動し首を深く切ってゆく。
「!?!?」
「訓練受けてる軍人の割には、遅いな」
銃に持ち替える隙を与えず前衛を切り裂いて行くが、後衛は銃の準備を済ませているようだ。
一発、敢えて撃たせてみる。弾の速度もニホンエリアのものより遅い。
これなら、見切れるだろう。
そして玄森の能力が<身体の兵器化>ならば、身体を鋼のように硬質化させることが可能なはずだと本人は踏んでいた。
まず、死ぬことはよっぽどのことがなければ無さそうだ。
「総勢2000位か。軽い運動だね、こりゃ」
そう言って玄森は間髪入れずバタバタと兵隊を斬り伏せていった。
切る時の感触が、心地よく感じる。
自分の手が、人をスパッとなんの抵抗力もなく綺麗に切って行く。敵兵達の断末魔を上げる隙も与えない。
手応えが玄森の精神を高揚させ、ますます手のブレードの鋭利さが増して行くのが分かる。
口元には笑みすら浮かばせていた。
數十分で、2000人の兵隊と逃げ出せず慌てふためいていた将校を全員斬り伏せ、そこには多くの斬首体と玄森だけが残されていた。




