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ヤナギ・ショーコ

黄瀬は基本的に、研究棟から出ることはない。会うのは容易なはずだ。

ポータルを使って、黄瀬の居る研究棟に二人で飛んだ。

転送先は研究棟の受付窓口だ。事務員に腕の軍章を見せると、事務員はすぐに佇まいを正す。

「どのようなご用件で」

「黄瀬上級研究員に取り次いでもらいたい」

「お約束は?」

「していない」

「…少々お待ちください」

本来、管轄の違う研究員と会うにはアポは取らなければならないのを忘れていた。

会うのは難しいだろう、と玄森は自分の迂闊さに呆れた。

「黄瀬上級研究員は、現在休職されてますね」

「なんだって?」

「療養中だそうです」

黄瀬は高齢だと紺野は言っていた。身体にガタが来ているのだろうか。

いずれにせよ、すぐに話を聞くことはできなさそうだ。

「…もし復帰されたら、話を聞きたいと言伝を」

「承知しました。玄森漆特殊隊員と、紺野秋也一等兵から面会希望という事をお伝えさせていただきます」

会えないのならば、ここにいても意味がない。

玄森と紺野は軍の宿舎に戻った。

「時間が空いてしまったね。今日はやることが無くなってしまったなあ。またアニメでも観るかな。玄森はどうするんだい?」

「俺は少し疲れたから、部屋で寝てるよ」

「そうか。まあ、ゆっくり休んで。君はいつ任務が来るか分からないんだろう?」

カラカラと笑う紺野に、玄森は仏頂面で目線を送ったあと、自室に戻った。

(また、あの女と会ってしまった…)

自室に戻りベッドに横たわると、玄森は左腕で顔を覆った。

休みの日だった紺野を暇つぶしと偽って、白藤の捜索に来ていただけだったのに、タイミングを見計らったかのように、柳を見つけてしまった。

老夫婦が柳に放った『人殺し』という言葉が、妙に頭の中に残っていた。

だが老夫婦の話ぶりでは、その事件があったのは最近の話ではなくかなり昔のようだった。

柳の見た目は20代になったあたりとしか思えない容姿だ。そんな彼女が、過去の人殺し?

柳のことを『当時の姿で生きている』とも言っていた。

瓜二つの人がいる?それとも、観察対象にされているだけあって柳にも何らかの秘密がある?

一度老夫婦の尋問記録を見た方がいいかもしれない。

ストレスカウンターで記録を検索すると、老夫婦の尋問記録が数十分前に更新されていた。


『動機:サホロ地区中心部で会った女は、50年前に容疑者の家族を皆殺しにした犯人と酷似していたように見えたため、気が動転した。

過去の事件:当時の犯人の名前はヤナギ・ショーコ。20歳の女子大生だった。

後に彼女は数多の殺人事件の犯人であることを自白した。手持ちのナイフと不思議な力を使い、殺人行為を繰り返していたという。


ヤナギは死刑判決を受け、それは大々的に情報でも流れ安堵していたが…と述べていた。


事実:ヤナギ・ショーコは当時の司令官・梵京介及び研究員上戸拝に特赦され、上戸拝の監視下(部下として)に置かれた。

後に湯神震との衝突で殉職』



「ヤナギ・ショーコって…名前も同じ…だよな?」

柳が過去の犯罪者であり、能力者?そして、既に死んでいるはずの人間?

それが全て正解なのだとしたら何故今この時代に生きているのだろうか?

そして玄森自身、なぜその柳を見ると記憶が共鳴するのだろうか。

そういえば自分も殺人者で、過去に銃殺されていると言われた。その記憶は一切ないが、性格を顧みるにそれは偽りでもなさそうだった。

柳も記憶を消されて復元されている?

彼女に関しても、謎が多かった。




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