玄森の能力
玄森の髪は、全面真っ白だった。
毛は細く、生命力がないのか軽く引っ張ると抜けてしまう。
「俺はなんで、こんなところにいるんだ?」
過去の忌々しい記憶は蘇ったが、なぜ牢獄にいるのかが思い出せない。
両手を見れば、リストカット跡を薄くしたような切り傷だらけ。腕を見れば、鞭で打たれて出来た痣。
服を捲って身体を見れば、全身にタバコの押し付け跡や打撲跡。一部に弾痕もある。
荒んだ環境にいたことは間違いない。どの傷も古く、おそらく夢の中の両親につけられたものだろう。
「両親を、殺したのか?」
あれだけの仕打ちをされれば、逆襲していてもおかしくない。
「不正解。貴方は罪もない人を殺した」
カツカツと足音が聞こえると、鉄格子を挟んで看守と思われる女が立っていた。護衛だろうか、軍服を着た男が二人、女を挟むように構えている。
「だれだ、アンタは。俺が罪もない人を殺した…?」
玄森が床に座り込んだままキツめの視線を送ると、看守が軍人に顎で合図を送った。
軍人は鉄格子を開け、一人が玄森の肩を思い切り蹴り飛ばし、倒れ込んだところをもう一人が背後から抑え込んで立たせる。
「無礼だぞ。身を弁えろ。目の前におられる方は二ホンエリア軍幹部、跳宰香様だ」
軍人がドスのきいた声で跳宰を紹介すると、彼女は胸に手を当てて冷たい笑顔を向けた。
「貴方は大量殺人犯。天性のセンスで、少なくとも20人は殺している。貴方が懸念した両親は手にかけてないけど」
「俺は捕まったってことか」
軽く言おうとすると、軍人がまた玄森を殴る。
「貴方は居場所を我々に掴まれて、銃殺された…貴方は不思議な能力も持っていた。全身を凶器に変える技」
「能力?そんなもんないね。単なる絵空事だろう」
「だから、今から試すの」
軍人は玄森を床に叩きつけ、伸縮する警棒を手に持ち構える。
「お願い」
「ハッ!」
軍人二人は素早く玄森を警棒で何回も打ち据えた。警棒は電気も帯びており、当たる旅に身体を中から破壊されるような激痛が走る。
「ぐあっ…!」
反撃してやりたい。だがこちらは丸腰だ。段々と心に3人へのヘイトが溜まっていく。
「やめろよ…!」
怒りを滾らせたとき、玄森の左手が変化し始める。
人差し指から小指が一同にくっつき、ダガーのようなものを作り出した。
「攻撃を」
「痛ぇんだよ、クソが!」
玄森は創りだ出したダガーを的確に警棒に当て、一刀両断する。そして目にもとまらぬ速さで軍人二人の喉を切り伏せた。
「ハアッ、ハアッ」
やってしまった。人を、殺してしまった。
だが跳宰は満足したようにいい笑顔で拍手をした。
「素晴らしい。貴方はやはり逸材。ああ、貴方はこの人たちは殺してないから安心してね」
軍人の遺骸に目をやると、意外は土くれのように崩壊していた。




