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哀れな神様②

神は下界に降りてきた理由を、とても申し訳なさそうにミコトに伝えた。

ぽつりぽつりと子供が一人遊びの最中に独り言を呟くように、取り留めもない散文のような言葉で話すのが精いっぱいだった。

"私は最初から期待外れなのだ。そして、決められた役目を全て無駄にしてしまう、どうしようもない存在なのだ…。神の世界を追われて、迂闊に人里に近づいてしまった。怯えさせる、だけなのに”

タツノオトシゴはギュッと目を瞑った。その目じりからは、ルビーの輝きのように赤く透明な涙が流れている。

ミコトは身体を震わせて涙を流す神を見ても、その瘴気が濃くなっても、その噛みしめている言葉を優しい眼差しで黙って聞いていた。

恐らく、この神は愛されなかったことがないために言葉をいくら繕っても精神は幼い子供のままなのだろう。他の神と呼ばれる存在に悪意を向けられても、人間に攻撃されて大怪我を負っても、怒りも確かに存在するがそれ以上、この神はあくまで『自分』が悪い、自分が至らないからだと自己否定し続けている。

彼は苦しみの海を、ずっと彷徨っているのだろう。

ミコトはそっと、羽衣をかけるように神の横顔に手を添えて優しく撫でた。

まるで荒削りの古い石像のように、神の皮膚は堅く、ザラザラとしている。

”私に触れては…命を失うぞ…??離れてくれ…!”

戸惑う神に、ミコトは一度ゆっくり左右に首を振った。

「貴方は…とっても、優しいのですね」

そのままミコトは、神の身体をギュッと抱きしめ、ぐずる子供をあやす様に軽く背をポンポンと擦った。

”…!!!”


神は、動けなかった。初めて向けられた愛に、動揺を隠せなかった。

同情でも、欺瞞もない。一切の濁りのない、純粋な愛情だ。

人間が一般的に謳う愛ではない。それを超えた、全てを包み込んでくれる、神の愛よりも打算のない真っすぐな心。

――――とても、暖かい。


神は嗚咽が止まらなくなっていた。『もう我慢しなくていい』『頑張ったね』『大丈夫』…そう言われたような気がして、神は人間の子供が感情の堰が壊れたようにワッと声を上げて泣いた。






――――――かあさま、とうさま。生命の種を今日も巻きました。

きっと、新しい命たちがまたあの星で生を謳歌できるでしょう。


―――-私達には生命などどうでもいいの。早く術式の素材にしたいのだから、それらがどうしようとしったことではないわ。


―――――おいおまえ、いつまでたっても人型になれないんだってな。変化すらできないなんでて、どんな無能だよ?


―――――「おい、化け物が天から降りてきたぞ!あいつのせいで、村の人間が何人も狂い死にしている!


『殺せ!』『無能』『どうしてこんなモノが生まれてしまったのかしら…』

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