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全てが破壊されるのか

「くそっ…!あのできそこない、人間の屑ごときが…!!」

二ホンエリア軍中枢管制塔では、パニックが起きていた。

一時間前、プレスキーエリア軍がキュウシエリアに上陸。

現地では能力者30名を操作し、また兵士も万全の態勢で交戦状態に入った。

プレスキーエリア軍は数こそ多いものの、装備や戦術は未熟である…というのが長らく通説だった。

そして今回も、それは覆らずに二ホンエリア軍の装備で撃退できるはずだと誰もが思っていた。

だが、今回は違った。敵軍は二ホンエリア軍と同等の装備を携え、統率された動きをしていたのだ。

プレスキーエリア人は狡猾かつ残虐な志向を持つ者が多いことで知られており、特に軍人はその傾向が強く、捕虜は例外なくなぶり殺しにされる。

予想とは裏腹に、一般兵は敵軍に劣勢を強いられていた。

そして何より予想の範疇を超えていたのは、能力者30名の特徴を相手が完璧に把握していたのだ。

それも、どこに誰を配置するかさえ筒抜けのようだった。

能力者のことは、軍部でも一部しか知らない。

内通者の報告も受けておらず、また更に一部しか知らない機密情報が洩れているのだ。

その混乱に合わせて、交戦中に一人の男が戦地に現れた。

玄森漆…<リッパ―>である。

交戦地帯に現れた玄森は、目に見えぬスピードで二ホンエリア軍もプレスキーエリア軍も分けることなく殺戮していった。

あまりに洗練され無駄のない動きと速さで、最初は両軍とも何が起きていたのか把握できないほどだったが、彼は刃物・銃器を使い分けてものの30分強で両軍とも殲滅してしまったのだ。

そして玄森の矛先は、軍の拠点にも向いていた。

拠点にいた跳宰を躊躇なく銃撃し、あの桜井にも仕掛け傷を負わせた。

桜井の能力で手負いの跳宰と共にヤンガジ地区に移動できたようだが、それも玄森は分かっていたのか船舶を乗っ取り自身もヤンガジ地区に向かっている。

一応兵を差し向けたが、それも全て玄森の能力で沈没・墜落させられてしまった。

プレスキーエリア軍にもやられ、挙句利用すべき反逆者・玄森にも殲滅される。

二ホンエリア軍のプライドは大いに傷つけられたのだ。

混乱真っ只中・一人の高官が管制塔に現れる。

『落ち着くのだ。まだ我々には武器がある。最強のカードがな』

「あ、貴方様は…!」

「芹馬宗二…殿…!!」

二人の屈強な私兵に挟まれ、芹馬は邪悪な笑みを浮かべながら姿を現した。



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