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倫理などない。

『復元』と言い切った芹馬を、心の奥底から軽蔑する。

「復元…!まさか」

思わず礎の口から侮蔑を隠し切れない声色が漏れるが、芹馬はすぐに『礎隊員、お前は頭が悪いのか?』と不快そうに切り返した。

「<クローデル>の能力は立派な兵器足りうるもの。そもそも、この二ホンエリアの能力者に関するすべての権限は私にある。()()()()()()()()()()()()()()()()。先人である梵元司令官が、能力者の遺骸があれば生前のオリジナル人格よりも都合のいい人格を刷り込み再利用する理論を完成させてくれていたからな」

「そんな…!そんなの、許される行為ではないでしょう!」

高橋が憤りを隠せずに口走る。礎が会話している間、ずっと沈黙を決め込んでいた彼女からは荒ぶる呼吸が漏れ出ていた。

そんな高橋の憤りは、およそ普段の彼女が表す感情ではなかった。

玄森の側についている時も、芹馬の傘下に入れられた報告を聞いた時にも、高橋は感情の機微をあまり見せなかった。

その高橋が、このエリアの絶対的な存在である高官にハッキリと言葉を出したのが礎としては予想外だった。

「…ああ、すっかり忘れていた。その色素のない目を見て思い出したぞ。高橋唯鎖、貴様も被験者だったな。勿論、『()()()』だが」

クックック、と芹馬は意地悪く嗤う。

高橋が被験者?そんな話は聞いたことがない。内心焦る礎を尻目に、高橋は今まで見たこともないような怒りに満ちた目で芹馬を睨みつけていた。

「やはり、あれは芹馬高官主導だったのですね。いや、貴方はほぼ全ての人体実験に関与している」

辛うじて敬語を使えてはいるが、それももはや限界に近いところまで来ている。歯を食いしばりすぎて、噛み締められた奥歯が砕ける音がした。

「はあ。どうして被験者共は、逆らうことを続けるのかねえ。理解に苦しむ。高橋研究員、貴様はやはり死罪にするか?」

ドスの利いた低い声で、芹馬は睨みを聞かせた。

その眼光は若者だった頃と何ら変わりないような、狂暴なものだった。

「私に逆らっても、何も良いことはない。貴様が一番分かっているだろう、高橋研究員」

芹馬がスッとストレスカウンターに触れると、突如高橋が激しく痙攣した後、床に倒れた。

「高橋研究員!」

「だい、じょうぶ。気にしないで」

悶絶した顔を数秒続けた後、高橋はゆっくりと立ちあがった。

「無駄話が過ぎたな。時間が惜しい、今すぐ退室し、兵士に付いていけ。いいか、手早くだ。遺骸の鮮度が良いほど、復元手早くできるからな」

芹馬はハン、と汚物をみるようにして手を払い、鈴を鳴らして室外に待機させていた兵を呼んだ。

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