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能力者の記憶

時空の歪みが元に戻ることで、ひどい船酔いをしたような気持ち悪さに襲われる。

詠斗は過去の出来事への余韻を感じる前に、屈んで嘔吐してしまった。

「エイト、大丈夫?」

サオリはなんともないようだったが、詠斗の側に近づいて心配そうに彼の背中を擦った。

「だ、大丈夫です…。ちょっと、酔いが…ウップ」

「具合悪いの、飛んでけー」

サオリが再び右手に力を宿し、詠斗の頭をポンポンと軽く叩くと酔いはまるでなかったかのように治まってしまった。

「ありがとうございます」

「よかった!」

口元を手で拭い、詠斗は立ち上がってサオリに頭を下げた。

「これが、サオリさんが感じ取ってたものなんですね」

「お姉ちゃん、多分ここに一部をずっと残していたんだと思う。意味はワタシには分からないけど、誰かが来るのを待っていた」

「その誰かって…」

「ユカミシンか、エイトのお父さんかな。またここに来るかもしれない、ってお姉ちゃんは思っていたのかもね」

「湯神も父も、白藤さんは特別だったのでしょう。それは逆も同じ。何か思うことがあったのでしょうね」

詠斗が悟ったような口ぶりで言葉を返すと、サオリはウン、と一回頷いた。

崎下…いや、上戸のことは、メモリーキューブに記録されていた。

基本的に冷徹で、能力者の兵器化を目指す中心人物だった彼が唯一心を動かされた存在。それが白藤だったのだが、それは能力者の記憶の共鳴が関係していた。

白藤と上戸は前世でも関わりがあった可能性があるらしい。

らしい、というのは、証言が上戸の記した『不思義なフラッシュバック』と、監視カメラの音声に混じっていた白藤の『時折見える心象風景』に関する言葉だけだからだ。

二人が接触したときに見えるこの光景は、視点は違うが一致している部分も多い。

どちらも大昔の小さな村で過ごしており、上戸は女性の幼馴染を、白藤は青年の幼馴染を見ている記憶。いつか結婚をしようと約束していたが、当時の暗愚な領主の息子に畑を荒らされ、女性はキレた。その際、領主息子は突如起きたかまいたちに身体を呷られ、重傷を負った。

かまいたちが起きるような天候ではなかったのと、側にいたのは女性だけだったため、疑いが向いて捕らえられようとしていた。

二人は逃げた。だが後方から弓が放たれ、女性の胸を貫通した。

そんな記憶を二人は断片的にみていたようだった。

湯神の方も、白藤は桜井拓と共に長らく一緒にいた言葉では言い表せない強固な絆をもった人物だった。拓と白藤が附付き合うことになってから、湯神は陰ながら二人を守ろうと思っていた。

だが、湯神は拓の命も奪い、白藤の消滅も防げなかった。

お互い、白藤に対する思いがあったのだと詠斗は淡々と分析していた。


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