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当時の現場

手をねじ切られたのは、崎下の予想外だった。

そして左手が壊れた後、崎下は能力を発することができなくなっていた。

勝負は決したが、崎下の鋭い眼光は揺らぎを見せない。

湯神の方も崎下を殺す気はないようだが、代わりに崎下を憐れむような表情で見下ろす。

『終わりだ…』

『まだだ。まだ…!』

崎下は腰に携帯していた拳銃を抜き出し、震える右手で構えた。

『テメエ…!』

湯神が僅かに能力を滾らせ向けた時に、誰かが二人の間に飛び込んできた。

『だめ!』

湯神にも崎下にも焼き付いている、聞き覚えのある声。

飛び込んできたのは白藤だった。

崎下の放った弾丸と、湯神の能力が白藤に直撃する。

『白藤…!?!?』

能力が当たれば、無事では済まない。だが、白藤の身体は直撃した瞬間霧散し、また身体を形作る。

『お前、能力者…だったのか?』

湯神の問いに、白藤は意味深に微笑む。その微笑みは、崎下には嫌な予感しかしなかった。

『もう、やめよう?こんなこと…』

『でも…』

『私、考えたの。何ができるかって。私にしかできないことをやるのが運命だったのかもね』

白藤の身体、淡い金色に輝きだし、周囲にはまた、粒子が無数に舞い始める。

『白藤さん、その力は…貴方を消滅させてしまう…!』

上戸は拳銃を手から落とし、宙ぶらりんにしていた左腕を押さえながらかすれ声で警告する。

湯神もこの異質な能力を見た瞬間、白藤がやろうとしていることがただ事ではないことを察知していた。

『大丈夫。どこかで…また会おうね、シン君、ハイリ』

『白藤!』

湯神が一歩踏み込み白藤に触れようとした瞬間、白藤の身体は大量の粒子となり、花火のように飛び散っていった。

慟哭する湯神は、異変に気付く。こんなに感情が高まっていたら、この地形は更に歪むはずだった。

だが、湯神の身体から能力が発せられていないようだ。

『!?!?』

戸惑う湯神に、崎下が近づいてくる。崎下の捻じられて原型を留めていなかった左手が、綺麗に元通りになっているのだ。

『何が…起きたんだ』

粒子はまだ宙に舞ってたが、それぞれかなりのスピードで消え去っていった。

『白藤さんの…能力です。身体の全てを癒しの粒子に変え、おそらく世界中に放った』

あくまでも冷静に語る崎下に、どうこう言う気力ももうなかった。

『能力者因子、及び細胞も白藤さんの力により消去されたのでしょう』

『馬鹿野郎…!本当に、馬鹿だ…!』

湯神がそう悔し気に吐き出したところで、時空の歪みが消え詠斗とサオリは元の島に戻っていた。

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