思わぬ告白
「いつか貴方たちが来ると思ってた」
白藤はそう言いながら、胸に当てていた左手を降ろす。
「お姉ちゃんの鼓動、ここから聞こえてた。ずっとここにいたんでしょ?」
サオリは神妙な顔をして、白藤に問いかける。
黄瀬にこの島のある方角を聞いたのは、白藤が居ると気づいていたからだったようだ。
「ずっとここにいた…あながち間違いじゃないかな。思いは中々消えないものだし」
「ここは幼馴染と上戸さんが戦った場所。私はそれを止めようとして能力が完全に開花した」
黄瀬の言っていた通り、湯神と崎下が激突した場所で間違いないようだ。
「白藤さんの粒子化が開花した場所、ということですか」
「そう。何を考えていたのか覚えていないくらい、必死に何かを願った。その結果できてしまったのが、粒子化だった」
全てを治癒する粒子になったのは全くの偶然だったと白藤は語る。
「粒子は多くの人に取り込まれたから、残った粒子で身体を構成しなおすのには数年かかったけど、なんとか今の姿に戻れたの。って、こんな話はいいか。貴方たちがここに来たのは、拓君の甥っ子が許可したからだったね」
そんなことも知っているのかと驚くと、白藤は『世界で起きてる大体のことは判る』と笑う。
「貴方たちを狙う人のことも、知ってる。スイ・リィエンと芹馬宗二だったよね。どっちも厄介な人間。私がこの島に来たは思い出を振り返るのもあるけど、もう一つはアナタたちに彼らの今の動向を教えてあげようと思って」
本当はあまり言えないことだけど、と前置きをして白藤は南西の方角を指差した。
「スイ・リィエンは今は軍備を整えている。恐らく部隊を分けて二ホンエリア本島とこの島に二カ月くらいで攻め込んでくるかな。芹馬って人は…能力者を私物化した。貴方のいた地下スペースに来た、クローデルって名乗る子と玄森っていう軍人さんを手元に置いてるみたい」
勿論、その動きは桜井司令官も知っていると白藤は付け加えた。
「甥っ子君は事前にリィエンの動きを潰そうとしてるけど、色々な場所に施設を作っていて潰しきれないみたい。それに、スイ・リィエンは…私と同じ系統の能力者」
「…え?能力者は元々二ホンエリアにしか出現していなかったのでは?それに現在は白藤さんの能力で直接の因子持ちは居ないはずでは」
白藤はハッキリと、スイ・リィエンは『自分と同じ系統の能力者』と言った。
能力者因子は痕跡として残るだけで、直接の能力者は例外の桜井以外いないのではなかったのか?
「彼、出自自体は二ホンエリアだった。父親がプレスキー人で、母親が二ホン人。本人は隠したいみたいだけどね」