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もう一度会った人

転送先のツク孤島群は、荒れ果てた地という言葉がピッタリ当てはまるような島だった。

送られた島は湯神と崎下が交戦した場所なのか、地面が相当強い力でぐにゃぐにゃに捻じ曲げられ凹凸著しい。茂っていたと思われる林も、地面と同じように不可解な欠損をして倒れ、長年放置されてほぼ朽ちかけている。

人の技術では作り出せない、異様な光景が島全体に起きていた。

島は小さく、広さは野球場3個分くらいの大きさだ。

その中にあった全てが捻じ曲げられるほどの戦闘だったということが、島を歩いて分かったことだった。

歩いている間、詠斗はいつになく真剣に風景を観察していた。

崎下がこんな強大な歪みの能力に打ち勝てたというのが信じがたかった。極秘書庫で確かに<力の倍増>ができる能力者と記されてはいたが、風景を見る限りこの地形を変えたのは湯神の方だと思われる。

そんな力を何回も吸収しては、許容量を超え身体が壊れてしまうはずだ。

歪まされた地形は規則的な進行方向があった。そしてその行く先には不自然な一本の直線がわずかに残っている。

湯神が能力を使い、崎下が立っていた場所で吸収されたのだろう。

そんな攻防を繰り返していたのではないだろうか。

慎重に歩く詠斗の横で、サオリはサオリで何かを探しているようだった。

何回かサオリの方から話しかけたが、詠斗は集中していて聞こえず、ただ自分のペースで島を歩いていた。サオリはしょうがないという表情で詠斗の側を離れなかった。

考えを整理していたところで、サオリのあげた声がようやく詠斗に届く。

「サオリさん、どうしたんですか」

「もー、エイト全然気づいてくれないんだもん。でも丁度、ワタシが探していたの見つかった。出てきてくれたっていうのが正しいかな」

頬を膨らまそうと思っていたサオリが、まあいいやと見つけたものへ目を向ける。

「粒子が、少し漂っていますが。まさかこれ…」

「お姉ちゃん、ここにいたんだね」

見覚えのある黄金色の粒子がどこからか漂って、くるくると集団を作って何かを形作ろうとしている。

「白藤…さん」

言葉少なではあるが、詠斗は一歩引いてその光景を硬直して眺めていた。

以前なら珍しい光景というだけでここまで動揺しなかっただろう。だが今目の前に揺蕩う粒子からは、言葉では言えない何かを帯びているような気がしてならない。

案の定、粒子が形作ったのは白藤さおりだった。

まるでここに詠斗とサオリが来ることを予知していたかのように、実体化した白藤は僅かに微笑んで立っているようだった。




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