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ことの始まり・1

この最奥での仕事内容は。被験者(能力者)の検査と先ほどのように実験中の様子を監視することだと黄瀬に言われた。被験者たちは他の時間はどうしているのか尋ねると、独房で軍に監視されながら残りの時間を過ごしているらしい。

「人権はこの二ホンエリアにはないのだよ、詠斗君」

へー、と詠斗はひどい棒読みをした。

「今日は案内だけだ。くれぐれも言動には気を付けてくれよ」

黄瀬は入口に戻り、最奥から出て行ってしまった。

「これから退屈しなさそうですね。理解を深めるために、極秘書庫とやらに行ってみますか」

通りかかった研究員に、最奥の地下一階まるごと極秘書庫になっていると教えてもらった。地下一階に行くには突き当りの壁の前に3秒立ちどまると、入室鍵を読み取り階段への通路が開くという。

早速突き当りに立って、3秒待ってみる。白い石で造られた壁が横にゆっくりとずれていく。現れた長い螺旋階段を降りると、すぐに照明が点灯し、黄色の温かみのある灯りがユラユラと空間を照らしていた。

極秘書庫はとても広いが、入り口に検索用の小型パッドが置かれている。

<能力者因子>と検索すると、パッドに書棚の番号が何件か表示された。

『能力者経過観察報告書

 能力者の管理記録

 能力者プロジェクト回顧録』

経過観察報告書と管理記録は、今現在のものと50年前のもの二種類がある。能力者プロジェクト回顧録は50年前のものだけのようだ。まずは50年前の詳細が知りたい。書は42番2棚5列目にあるようだ。

指定された書棚に行くと、そこに埃を被った分厚い青い布製ファイルが陳列していた。

(能力者関係の書類は全てこの棚番に収められているようだな)

回顧録を手に取り、埃を掃ってページをめくる。

『2043年、上戸拝が能力者因子に関する論文を発表。

 同年8月12日、梵京介総司令官が上戸拝を本エリア特別顧問に任命。能力者因子についての研究を立ち上げる。ストレスカウンターでの情報収集を開始。翌年初めまでは能力未確認…」

今から57年前に、上戸という人物が能力者について初めて言及。当時の総司令官と共同研究をして能力者のことを調べ始めた。梵は調べていくうちに能力者の力に注目し、完全に管理下に置いて兵器とすることを目的とした。ここまでは、黄瀬からも聞いた話だ。

ストレスカウンターは今現在詠斗がつけているものと同じ腕輪で、負の精神や過剰な興奮を吸収し人間の精神を一定に保つ。また機能を追加することができ、黙秘順守のような鍵から家の鍵、万歩計、音楽をかけることや家族の位置情報など様々な便利機能を黒いパネルを押すだけで使用できる画期的なもので、これがあればまず普通の人間は誤った衝動に駆られたり、感情を極度に大きくすることは起こりえない。

当時のストレスカウンターのストレス吸収値も充分な値であったのだが、数例感情を吸収しきれないケースがあった。

その数例を検出したときに同時に起きたのが、北エリア総合病院の崩壊事件だった。



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