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彼は何をした?

見て居た限りでは、リィエンは特別なことをしたようには見えなかった。

ただ桜井が彼を捕縛するために触れただけである。

「二ホンエリア()()()いつまでも技術力で最先端を行っているなどと思うな」

リィエンの姿が、一瞬で消える。桜井だけが動きを捉えているのか、やや遅れて桜井も稲妻の速度で消えた。

「…ほう、実力でも私と対等を装えるか。異能にかまけたただの若造かと思っていたが、そうでもないようだな。賛辞を贈ろう」

リィエンは手錠を紙細工のようにたやすく千切り、手刀を喉笛寸前まで近づけているのを桜井が間一髪で受け止めていた。桜井の方も余裕がないのか、いつものふざけた表情は一切ない。

「何をした、スイ・リィエン!」

手刀を振り払い、桜井は再び距離を取る。

雷撃が入ったのか、リィエンの素顔を隠していた精巧なマスクがドロッと剥がれ落ちかけていた。

『正体がばれているのならば、付けていても仕方がない』と呟き、マスクを引き剥がす。

手を見たときは老兵だろうと思っていたが、実際には若さをまだ残す30代から40代くらいの精悍な顔つきだった。頬がややコケているのが印象に残る。

リィエンはまた手をパチパチと叩き、桜井を見据える。

「答えてほしければ、対価を示せ。そうだな、私が何をしたかを知りたいのなら、そのサオリという女性を引き渡すんだな。()()()()()()()だ、容易いだろう?」

一般市民な訳がない。全部この男には情報が洩れているのだと桜井は苦虫を噛み潰す。

「彼女は二ホンエリア市民。私は守る義務がある…!貴様に引き渡したりはしない」

桜井は心の相反を目に起こしながらも、悔しそうにリィエンに答えた。

サクライが言葉にした『守る義務』とは、司令官になる際に心に決めた信念だった。

自分が司令官である間は、他エリアの人間に国民を傷つけさせない。リィエンが提示したような市民を売るような行為も、絶対にしない。

それが桜井の心の軸だった。

「交渉決裂だな。今の手合わせで判ったが、貴様とここでやるのは得策ではない。そのサオリという女の獲得は今回は諦めるとしよう。戦争で決着を付けようぞ」

(戦争…!?)

「待て、スイ・リィエン!」

「さらばだ」

リィエンが指をパチンと鳴らすと、どこかへテレポートするように瞬時に去っていってしまった。

「クソッ…!目の前で敵を逃がすとは…なんたる失態」

桜井は纏っていた雷を収めると、やり取りを見ていたサオリと詠斗に氷のように冷たい目を向けた。

「崎下詠斗、時間切れだ。その兵器を、司令官権限で回収する」


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