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男の正体

男の顔は目を開かれた今でも能面のように不気味な笑みを張り付けているようだった。

「その女は、白藤さおりのクローンだろう?無限の可能性を持つ女だと聞いている」

この男、何故白藤さおりという名前を知っているのだろうか?そしてサオリがクローンであることも既に知っている。詠斗は不用意に言葉を発さず、ただ男から目線を外さぬようにした。

「…警戒したところで、貴様には何もできない。私が少し力を出せば」

男の動きが、陽炎のように揺らめくようだ。ただ静かに近づかれているだけのはずなのに、気おされて身体が反応しない。

詠とが動けない間に、男はサオリの右手を強引に握り捉えていた。

「ッ、サオリさん!」

「…この通り、簡単に抜きとれるのだ」

「嫌…この人、キライ!」

サオリが掴まれた右手をブンブンと振ると、男は嘲るように手を離す。

「ほう、噂にたがわぬ力だ。瞬間的にスタンガンのような威力を作り出すとは」

男はにんまりと口元を綻ばせ、片手をじっと見る。変装のために使っていたと思われるゴム質の手袋が焼け焦げズルッと落ちた。

実際の男の手は、壮年特有のゴツゴツとした形に、百戦錬磨の証ともいえる無数の傷がついていた。

「私の元に在れば、素晴らしい力を存分に発揮できるだろう。一応声掛けをしておこうか。私の元へ来る気はないか?」

「俺たちは誰かの元へ下る気はない」

「そうか…。では、実力行使だな」

男の姿が、フッと見えなくなる。狙いは勿論、サオリだ。

せめてもと、サオリの身体を強く自分側に引き寄せ、最後の抵抗をする。

バチィン、と何かがぶつかるような音がした。


「おやおや…わざわざトップがこの場に来るとは」

「スイ・リィエン…!」

サオリを掴む寸前だった男は、突如現れた桜井に襟を掴まれていた。

桜井はハッキリと、『スイ・リィエン』と言った。研究施設にいた頃によく名前が挙がる敵国の将軍だ。様々なネームを部下に使わせて頻繁に軍の機密情報を狙わせたり、彼の息がかかったと思われる研究員が二ホンエリアで処分されたとの噂も聞いたことがある。

とにかく、このエリアにおいて非常に危険な人物であることは詠斗も知っていた。

「不法入国、そして先日の二ホンエリア攻撃の主犯として裁かせてもらうぞ」

桜井が錠をかけようとしても、リィエンは不自然なくらい抵抗しなかった。

「フフフ…こうも策に嵌ってくれるとは。直情は大損を被るぞ、カズマ・サクライ」

リィエンがカッカと笑うと、目にもとまらぬ速さで桜井の元から離れた。

「!?貴様…まさか」

リィエンの身体からは、桜井の黄金色の雷撃と対照的に白い電流が迸っていた。


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