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高官の命令

中央エリアにある通称『審判塔』最上階の会議室に、高官たちは集まっていた。

審判塔は普段一般人の裁判が行われる場所で、毎日何かしらの裁決が下される。

その最上階は、軍司令官と高官、認められた者以外立ち入りを禁じられているエリアだ。

高官の招集が決定されると、彼らはこの最上階会議室に集まることになっている。

明るい茶色を基調とした、裁判所の構造とほぼ同じ形をした内装だが、司令官は高官と同じ高さの席に居ることはできず、見下ろされるように証言台に値する場所に立たされる。

今まさに、桜井はその場に立たされていた。

立ち位置では高官の顔を許可がない限り見上げてはいけない。高官たちはいずれもこの二ホンエリアを様々な形で守護してきた一族であり、現代では半ば神格化されているような存在と位置付けられている。

「遅い、桜井司令官。招集の連絡があれば1分以内に来るのが原則であろう」

高官の4番席に座る兎丸(とまる)がそっと嫌味を言う。

「大変申し訳ございません」

頭を淡々と下げる桜井を、高官席にいる芹馬が汚物を見るような顔で見下していた。

「まあまあ、兎丸殿。そんなに厳密に決めてもしょうがないでしょう、桜井司令官は常々お忙しいのだから」

芹馬の声はネチネチと低く、耳障りな声質を演じている。兎丸も不快に感じるのか、ブスッと眉間に皺をよせてそれ以上は何も言わなかった。

「今回、新たに我々で決議したことがある。それに先立って、桜井司令官に確認したいことがあるのだが」

高官の5番最年長で取りまとめ役の龍峰(たつみね)が顎の白髭を撫でながら、会議室の隅々まで反響するような通る声で桜井に話しかける。

「なんでございましょうか。謹んでお受けいたします」

「桜井司令官は先々代の司令官・上戸拝の代から復元を試みられていた柳祥子と玄森漆が『一般人』だと今代の私たちに報告していた。だが、実際は二人は50年前の能力者だということではないか。

少なくとも私は、二人は50年前の能力者事件に巻き込まれた一般人で、遺骸を当時の最新技術である肉体復元の被験者になって再生されたとしか聞いていない」

「恐れながら申し上げます。先代・赤晴の在任時に、貴方方の先代にはお伝えしている事案でした。しかしながら、先代の方々には全員一致の賛同を得られなかったもので…」

「知っていた者は挙手を」

龍峰がそういうと、高官の3分の1が挙手した。その中には、芹馬は含まれていなかった。

「…なるほど。手を下げてよろしい」

手が下げられると、芹馬が口を開いた。

「しかし桜井司令官殿。今代の我々に何故直接伝えてもらえなかったのかね?圧倒的兵器として能力者研究を再開させたのにもったいない。それに、柳祥子と玄森漆は素晴らしい能力を持っているのだろう?ホッホッホ…」

この狸野郎、と桜井は心の中で唾を吐いた。

時期は分からないが芹馬は恐らく高官権限で極秘書庫の資料も閲覧している。50年前のことをほぼ知ったうえで、他の高官に持ち掛けたのだろう。

「他の者から報告を受けたところ、玄森は従順に従い、柳は未だ記憶を封印しているという。桜井司令官は能力開花よりも記憶の因果を調べる為に彼らを観察していると聞いた。間違いないか?」

「はい、その通りでございます」

「協議した結果、柳祥子を能力者として開花させ、玄森及びその他能力者と共に兵団を形成し全エリアを掌握する計画を進行させよ」

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