八話
「ニアッ!」
しっかりと気合いを入れた僕は、ニアたちの元へと飛び出す。
「ビー……。なんで出てきたの……」
「ごめん、ニア。だけど、「僕一人」でもやれることはあると思って」
「……仕方ないなぁ。ビーは、村長をお願い」
ニアのその言葉に頷いて、村長に駆け寄る。口の中を切ったのか、血が出ている。そうとう本気で殴られたらしい、気絶してしまっている……。
「オイオイ、いつもの生意気なクソガキがいねェな」
「一人だけ逃げたんじゃねェか?」
「お嬢ちゃんも、怖かったら逃げてもいいぜェ。ま、そうしたら二度と依頼を受けてはやんねェけど!」
こいつら……。
完全に僕たちを見下している。ここ最近までは、こんなあからさまに態度には表さない人たちだったのに。なんで急に……?
「依頼は、出されていないはず。なんでこの村にいるの……」
「それだよ! 依頼が出てねェのがおかしいんだ! もうそろそろ出ても良いはずだろォ!」
「……どうして、そんなことが分かるの」
「……そ、それは。あれだよ! ここ最近は、一ヶ月ぐらいで依頼を出してただろ! もう前回から一ヶ月過ぎてるのに、なんで依頼がねェ!」
なんだろう、なにか引っかかる。
たしかに、ここ最近は一ヶ月ぐらいで依頼を出さないといけないほど、モンスターの被害が増えていた。今回は、単純に被害が出てないから依頼を出してないだけ……。そんなの、考えなくても分かるはず……。
「じゃあ、なんで村長を殴ったの? このことを、冒険者ギルドに報告すれば、あなたたちは冒険者としての資格を剝奪されるはず」
「……くくっ。そうだな……。別にいいぜ、報告してくれても。そうしたら、もうどこのパーティもこの村からの依頼を受けなくなるだろうな」
「……そう。別に、これからはそれでも構わないから。今なら見逃してあげる。大人しく帰って」
「……は? 言ってる意味、分かってんのか? こんな村の依頼を、どこも受けなくなったら、この村は終わりだぜ……」
残念だけどこれからは、それを僕たちが受ければ良い。だから、もうこの冒険者パーティに受けてもらう必要はない……。
「別に、あなたたちにはどうでも良いことでしょ? 帰って」
「……オイ、さっきから調子に乗りすぎじゃねェか? ちっとは可愛いから見逃してやってたが、もうただじゃ済まさねェぞ……」
「……調子に乗ってるのは、そっちのほう。私はちょっと可愛いんじゃない。超絶、可愛いから」
ニア、自分で言っちゃうの……?
「そうか、そうか……。ならその帰って顔、ゆがませてェアブッ……!」
「近寄らないでくれる……? せっかく今の私は、ビーの匂いに満ちてるの。あなたたちの、悪臭が移ったら嫌だから」
ニアに、近づいていこうとした冒険者の一人は、氷の鎖に足をとられて顔から地面へと倒れる。そして、鎖から徐々に足が凍っていってる。
「なっ!! こいつ、なんで魔法をつぅぶっ……!」
「口を開かないでくれる……? 口臭、キツイから」
おぉ……。口に、氷の鎖が突っ込まれている……。
ニアは、まったく容赦がない。ブリッツと戦っていた時には、まったく本気じゃなかったんだ。これ、もしかしたら僕はいらないかも……。
「くっ! ほのぉぉぉぉおおおっ……! 冷たい! 手が! 手が!」
「魔法とか使おうとしないでくれる……? なんか臭いから」
ニア、もうそれはただの臭い人でしかないよ……!
「あ……? あれ……? 嘘だろ……。こんな、あっという間に……」
「もう、三人やったから、全員潰しても一緒だよね?」
「そ、そうだね。うん。良いと思う。ニアのお気に召すままに……」
「い、いや……! やめて……! それ以上近寄らないで……! あ、いやぁぁぁあああんっ……!」
「……きも」
なんか、最後の一人だけ反応がおかしかったな……。なんでかは、僕は知らない方が良い気がする……。
「……結局、ニアだけで良かったね」
「そんなことない。ビーが来てくれた時、凄くかっこよかった」
「そ、そう……? これでもけっこう、勇気を振り絞ったんだ。実は」
「うん。とっても可愛かった……」
「そ、そうかな……? あれ……? 可愛かった……?」
「ビー。それよりも早く、村長を起こそう」
なんだか釈然としないけど、そっちが先だよね……。
とりあえず村長を起こして、この冒険者たちをどうするかを聞かないといけない……。
「ビー……。あれ……」
「ん……? あ……」
ニアに呼ばれて、指差している方を見る。あれは……。
どうしよう、ブリッツだ……。他の人をたくさん呼んでくれって頼んでいたけど、もう解決しちゃった……。
「待たせたな、おまえら! 強者は遅れてくるんだぜ! あれ……?」
「ごめん、ブリッツ。もう終わっちゃった……」
「バカッツの出番はなし。無駄な労力、ご苦労様」
「……ビー、嘘だろ……? 俺、かなり声かけまくったぜ……」
ごめん……。ほんとに、ごめん……。