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六話

「ブリッツ!」


 地面にうつ伏せで倒れているブリッツに、僕は急いで駆け寄る。


 その身体は傷だらけで、服は真っ赤に染まっている。僕だったら。いや、僕じゃなくても。普通なら、とっくに気を失っているぐらいの状態。


「待ってろ……。いま、立ち上がって、ニアを泣かせてやるからよ……」


「もういいよ! それよりも早く、手当を……!」


「よくねぇんだ……。ビー、おまえがくれたんだよ……」


「僕が、くれた……? なにを……?」


「とっくに諦めてた、魔法を……。夢を……。希望も……! おまえがもう一度、俺にくれたんだよ……!」


 僕が……。ブリッツの夢や、希望を……。


「いつか、ビーに魔法が目覚めたら……。俺は、おまえに置いて行かれるって。俺は、こんなちっぽけな村で、終わっちまうんだって。ずっと腐ってた……! ビーに魔法が目覚めなければって、そう思ってた!」


「置いてかないよ! 絶対に、二人も連れてく!」


「あぁ……。おまえは、そういう奴だ。自分より、俺たちのことを優先しちまう。だから、こんな俺なんかに、魔法をくれた……」


「違うよ……。たまたま、僕の目覚めた魔法が、そんなものだったってだけで……」


「違わねぇ……。ビーだから、そんな魔法だったんだ。頼むよ、ビー。おまえが諦めなければ、俺は戦える……!」


 僕が、諦めなければ……。


「おまえが戦えないなら、俺が戦う! おまえが怒った時は、俺が代わりに殴ってやる! だから、諦めてた俺の代わりに……。おまえが諦めないでくれ……!」


「……ブリッツ、僕。また、みんなで一緒に遊びたいな。それで、冒険に出よう。昔みたいに二人じゃなくて、今度は四人で!」


「おぉ……。待ってろ、相棒……」


 ブリッツが、ゆっくりと立ち上がる。


 僕は、その身体を支える。手には、血がにじんで。ブリッツがどれだけ無理をしているのかが、伝わってくる。本当なら、泣き叫びたいぐらいに痛いはずなのに……。


「ニア……。そういうことだ……。絶対、おまえも連れてく……」


「……昔から、変わんない。あんたは馬鹿で、口だけで、行動だけで。いつだって、結果が伴わない……」


「うっせぇ……。だから、大人面してんじゃねぇよ……ニア……」


 ゆっくりと、ニアへ向かって歩き出すブリッツ。その身体から、血が地面へと滴り落ちていく。僕には、それを見ていることしかできない……。


「よぉ、ニア……。覚えてるか……? てめぇは、俺たちの中で、誰よりも早く魔法に目覚めた……。そんで、大人たちに期待されたよな……」


「……だから?」


「だけど……。大人たちは、ハズレの魔法だって知ったら……。すぐに興味をなくした……。てめぇ、落ち込んでたよな……」


「……だから、それがなんだって言うの!?」


「ビーは……。そんなてめぇに、森釣りに行こうって言った……。そんなに凄い魔法なら、きっと森魚もいっぱい釣れるって、そんな馬鹿なこと言って、笑いやがった……」


「……覚えてるに決まってる。私が、ビーにどれだけ救われたか……」


 そうだったんだ……。僕には、ニアの視力強化が、本当に凄い魔法だって思えた。ニアが落ち込んでたなんて、まったく気づいてあげられなかった……。


「俺もだよ……。15になった時、やっぱりなって言われた。ウチのクソジジイ、俺には魔法が目覚めないって、そう思ってたって言われた。クソババアも、メリーナに期待してたから、俺は別にってよ……」


「それは、あんたの両親なりの気の使い方でしょう。どっちも不器用な人たちだから」


「分かってんだよ、そんなこと……。それでも、俺には辛かったんだ。そんな時、ビーはありがとうって言いやがった……。僕を待っててくれるんだねって言いやがった……! 俺も、ビーに救われたんだよ!」


「……あんた」


「今だってそうだ……。ビーの魔法があるから、俺は戦える……。嬉しかったんだよ……。ビーの魔法が、俺に力をくれたことが……。ニアだって、そうだろ……?」


「……」


「今度は……。俺が……。だから……。だから……。ビー……」


 ブリッツは、ニアの目の前に倒れた……。


 最後の力を振り絞って、ニアに訴えかけたんだ……。ブリッツの戦いは、ニアに勝つことじゃなくて、その心に訴えることだったんだ……。


「……まったく、さっさと倒れればいいのに」


「ニア……」


「ビー、ごめん。怖かったよね……」


「怖くなんてなかった……。ただ、二人の戦いを見るのは、辛かった」


「ビー……。悪いけど、この馬鹿を運ぶの手伝って」


 ニアは、倒れているブリッツの右肩を支え上げる。


「……ニア。僕は――」


「大丈夫。ビーのお父様は、冒険者になることを許してくれてる」


 え……?


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