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四話

「話は分かった……。まず、ビー。よく魔法に目覚めてくれた。そして、三人には悪いが冒険者になることは、認めることはできない」


「え……? 父さん……?」


 建てられてから、まだ20年近い木造の家。それが僕の家。


 決して大きいわけじゃないけど、僕と両親の三人家族が住むには、少し広いぐらい。家具も全部、木で作られている。母さんと結婚して、この村に帰ってきた父さんが作ったもの。


 家の中でも、特に広めになっている居間。僕たち三人は、その居間で僕の父さんと向かい合っていた。


「なんでっすか! ビーの魔法があれば、俺たちは戦えるんです!」


「そのビーが、戦えないだろう」


「あ……いや。でもそれは……!」


「僕は二人に守ってもらえばいいし」


「……そこはそれで良いとしよう。だが、一番の問題はおまえの魔法だ」


 僕の魔法が一番の問題……? たしかに僕は戦えないけど、そこは守ってもらうから良いとして。なにが問題なんだろう?


「ビー。分かってないようだが、おまえの魔法にどれだけの価値があると思う?」


「……誰かが、ビーの魔法を知ったら、確実に狙われます」


「その通りだ、ニア。だから、ビーは国に保護してもらう」


「え……? 嘘だよね、父さん……」


 国に保護って。父さんの言ってることは分かる。危険なのは、よく分かった。でも、国に……。


「国にビーを売るつもりっすか!? 別に冒険者がダメでも、この村に居たら良いだけじゃないっすか!」


「どこからか、話が漏れたらどうする? 村では守れん。国に任せるのが一番の安全策なんだ」


「……ビー。そうしよ」


「ニア! またみんなで一緒にって、そう話し合ったばっかだろ! 悔しくねぇのかよ!」


 ブリッツのその叫びに、ニアは返事をしない。それでも、俯いて震えているから、悔しいのは一緒なんだ……。


「ニア……。分かってんのかよ。ビーの魔法を考えれば、かなり厳しく見張られるんだぞ。もう二度と会えなくなるかもしれないんだぞ!」


「……それでも、ビーが安全ならそれで良い」


「……あぁ、そうかよ。だったら、てめぇはずっとそうしてろ。俺はもう諦めたくねぇ。ビー、おまえはどうなんだよ」


「僕は……」


 僕はどうしたい……。このままじゃ、僕は国に保護される。父さんの言う通り、それが一番の安全策なんだってことは分かる。でも、みんなと会えなくなるかもしれない……。それだけ、僕の魔法には価値がある。


「ビー、おまえ次第なんだよ。ビーが諦めるってんなら、俺がどんだけ叫ぼうが意味がねぇ。ビー、おまえが決めるんだよ……」


「ブリッツ……僕は……。僕は、みんなと一緒にいたい! 国に保護なんて嫌だよ! また四人で一緒に遊んで、机を囲んで、並んで寝て……。みんなと、ずっと一緒にいたいよ……!」


「ならそうすんだよ! ビー、俺と逃げよう! そんで、メリーナも途中で拾ってこう! 今の俺なら誰だって止めらんねぇ!」


 そうだ……。ブリッツは今、魔法が付与されている。この村で、そのブリッツに対抗できるのは、同じように魔法が付与されているニアしかいない。


「ブリッツ、させると思う? ビーを危険に晒すことは、私が許さない」


「うるせぇ! いつまで大人面してんだよ、ニア! ビーが一緒にいたいって言ってんだ! 本気でビーのことが好きなら、ずっとビーの傍にいてやるべきだろ!」


「本気で好きだから! 会えなくても、無事でいてほしいって思うの! あんたこそ、いつまで子供のつもりなの、ブリッツ!」


「二人ともやめてよ! 嫌だよ! 二人が喧嘩するのは!」


 なんで! なんでこうなるの!? 僕たちはただ、ずっと一緒にいたいってそれだけなのに!


「ビーの親父さん。悪いけど、ビーは連れてく。ニアも力づくで連れてくから、ニアの両親に俺が謝ってたって言っといてください……」


「……たしかに俺では、魔法を使えるブリッツを止めることはできないな」


「ビーのお父様。この馬鹿は、私が力づくで止めるので大丈夫です」


 どうしよう、どうすれば良い……。この二人に喧嘩なんてしてほしくないけど、僕はみんなと離れたくない……。どうすれば良いのかの答えが見つからない。


「ビー。ちょっと我慢しろよ……」


「ブリッツ……? え、うわっ……!」


 ブリッツは、椅子に座っていた僕を抱え上げる。魔法の効果があるからか、簡単に抱え上げられてしまった。


「ニア、いつもの集まり場所だ……。ビーが望んでんだ。おまえも絶対に連れてく」


「……分かった。半殺しにしてあげる」


 ブリッツは僕を抱えたまま、走り出して僕の家を飛び出す。時間帯がお昼前だからか、村の人は畑から帰ってない。人目につかないのは助かる。


「ブリッツ! もう降ろしていいよ! 自分で走るから!」


「悪い! 実はさっきから、魔法を使ってっから、ビーに合わせて走るのは無理だ!」


「なんでもう使ってるのさ!」


「俺の魔法じゃ、今から熱くしとかねぇと、ニアに勝てねぇ!」


 本気なんだ、ブリッツは。本気で、ニアと戦うつもりだ……。なんでこんなことになったんだろう。これなら魔法になんて、目覚めなきゃ良かった……。



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