表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/15

十五話

「本当にごめんなさいっ……!」


 時間は夜。宿の食堂でご飯を済ませた僕らは、四人で男部屋に集まっている。そして、いざ話を始めようとした時、サフィーがそう言って頭を下げてきた。


「気にしないでよ。僕たちが選んだことなんだから」


「でも……」


「心配すんなよ、サフィー。この俺が華麗に解決してやる!」


「バカッツ、夜だから静かにして。私たちが恥ずかしい」


 昼夜問わずに元気なブリッツは、もちろん夜であろうと宿であろうと気にせずにうるさい。


「真剣な話、サフィーのお父さんとぶつかることになると思う。ただ、私たちは「神級」の冒険者がどれほどの力を持っているのか知らない」


「そうだね……。サフィー、お父さんについて詳しく聞かせてほしい」


「……分かった。まず、みんなも知ってる通り、お父さんは「神級」の冒険者。その中でも「武神」の称号を与えられているんだけど、それはお父さんの戦闘スタイルからきているんだ」


 武神……。武ってことは、武闘術とか格闘術ってことかな?


「お父さんの通り名は「嵐塵のサーキス」」


「ランジンのサーキス……? なんか、ニンジンみたいな通り名だな。俺、ニンジンは好きだぜ」


「ニンジンじゃなくて「嵐塵」だよ。戦闘時には、嵐が吹き荒れる。戦闘後には、その一帯に塵しか残らないと言われているんだ」


「嵐を起こす魔法ってことでいいのかな?」


「正確には、風の刃をうず巻かせているんだって、お父さんから聞いたことがある。幼い頃だけど……」


 風の刃って、かなり危険な魔法だ……。接近戦になるブリッツの魔法じゃ、相性が悪い。


「正直、ボクもお父さんの戦闘は見たことがないんだ。どんなに簡単な依頼でさえ、絶対に連れていってくれなかったから……」


「……ねぇ、なんでサフィーは冒険者になりたいと思ったの?」


「憧れだったんだ。お父さんは忙しくて、家に帰ってきてくれることは少なかったけど、とっても優しくて真面目なお父さん。仕事に出ていく後ろ姿が、今でもボクの憧れ……」


「なんでそんな親父さんが、サフィーを無理やり結婚させようとしてんだよ? ウチのクソジジイなんか、メリーナは絶対に嫁にやらんってうるせぇのに」


 たしかに変だ。娘であるサフィーに憧れなんて言われているんだ。きっとサフィーを大切に育ててきたはずなのに……。


「……お母さんが、病気で死んじゃったんだ。それから、父さんはボクを結婚させようとし始めた。だけどボクは、冒険者になりたかったから、逃げ出した」


「……そっか」


「ビー。理由も大事だけど、今はサフィーのお父さんとどう戦うか」


「そうだね。サフィーの魔法ってどんなの?」


「ボクの魔法は「風踏み」って名付けてるんだけど、風を踏んだり蹴ったりできるんだ」


 風踏みか……。魔法に名付けとか、そういえばしてなかったなぁ。僕の魔法はあんまり名付ける意味もなさそうだな、目に見える形の魔法じゃないし。


「サフィー、それは手で触ったりもできるの?」


「ううん。あくまで足限定みたい。ニアの魔法は?」


「……私のは、氷の鎖を生み出して操る魔法」


「名付けとかはしてないの?」


「名付け……。魔法の名前……。うーん……?」


 ニアが名付けで悩みだしてしまった。昔からニアは、名付けがあんまり得意じゃない。幼馴染四人でなにかを作る対決をした時も、一人だけ名付けに時間がかかっていた。


「俺の魔法は、徐々に身体強化されていく力だぜ! あと、なんか爆発とかもできるぜ!」


「徐々に身体強化……? それに爆発を起こせる……? ブリッツの魔法ってかなり特殊かも。ボクは今まで、そんな魔法は聞いたこともない」


「まぁ、この俺だからな! ちなみに名前は「超絶・爆熱・究極拳」だぜ!」


「ブリッツ、その名前はどうかと思うよ……」


「そうか? そんじゃ、ビーが考えてくれよ」


 う、うーん……? 考えてくれと言われても……。


「身体強化が増していく……。爆発も起こせる……。習った魔法定義に、当てはまらない魔法……」


「サフィー。ブリッツの魔法はそんなにおかしいの?」


「……魔法にも、様々な種類があるけど、基本的には「ナニ」かの「ナニ」か。「ナニ」かを「ナニ」かする魔法って決まってるんだ」


「ニアだと「氷」の「鎖」で、サフィーだと「風」を「踏める」ってことでいい?」


「そういうこと。でも、ブリッツの魔法は「身体」を「強化」し「続ける」上に、「爆発」を「起こせる」って、効果が何個もある」


 ブリッツの魔法は、僕の魔法で付与されたものだから特殊なんだろうか? それだと、ニアの氷の鎖も同じはずなんだけど……。


「つまりは、俺の魔法は強い! そういうことだろ?」


「私は、バカッツがあまりにバカ過ぎて、魔法も意味の分からないものになったんだと思う」


「僕もそう思うなぁ……。ニア、魔法の名前は決まったの?」


「……別に、名前なんていらない。今まで通り、氷の鎖で充分」


「ニアは名付けにセンスがねぇからな。なんなら、俺が名付けてやろう。そうだな……。「超・氷・絶・鎖」なんてどうだ?」


 チョウ・ヒョウ・ゼツ・サって……。どうしてこう、ブリッツの名付けはセンスが飛び出てるんだろうか。


「そんで、もう一つの魔法は「ビー覗き眼」だ。ニアはいつも、遠くからビーを覗いてたからな。ピッタリだろ? プププ……」


「……バカッツ、コロス」


 僕、いつも覗かれてたんだ……。


 あ、二人が取っ組み合いを始めちゃった……。もう夜だし、宿だし止めた方が良いよね。


「あれ? ビー、ニアのもう一つの魔法ってどういうこと?」


「……そういえば、言ってなかったね……」


 父さんに、あまり魔法のことは話すなって言われてるけど。サフィーは仲間だし、どうしよう……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ