十一話
「よぉ! 遅かった、な……? どうした、ビー。なんかやつれてるぞ」
「うん……。ちょっとね……」
「……満足」
やっと街についた……。正直、かなり危なかった。
「そうか。まぁ、深くは聞かねぇけど。それより、早くメリーナに会いに行こうぜ!」
「……そうだね。全然、それよりじゃないけど、そうしようか」
「なら、冒険者ギルドで聞いた方が早い。ついでに私たちの登録も済ませれば一石二鳥」
そっか、登録とかもしないといけないんだよね。でも、冒険者ギルドにメリーナの居場所を聞いて、教えてくれるのかな……?
「よーし! さっそく出発!」
「あ、ブリッツ。先に街へ入る受付があるから」
「……そうか。仕方ねぇ」
やる気を空回りさせたブリッツの背中を押して、僕たちは街へ入る為の受付に並んだ。
僕たちの前には、真っ白な服で身を包んだ、綺麗な男性が並んでいる。なんだか、凄く鮮やかな金髪で、男性にしては長めだな……。
「……キミ、さっきからなにか?」
「あ、すいません! その凄くカッコイイなって思って」
どうやら僕が見つめていたことに気づいていたみたいだ。
「……キミ、名前は?」
「あ、ビーです」
「ふむ。……どうだろう、ボクは立派な男に見えるかな?」
「えっと……? 凄く、中性的な男性に見えますね。女性みたいに綺麗だと思います」
「やはりそうか……」
真っ白な服の綺麗な男性は、僕の答えが望んだものじゃなかったらしいのか、落ち込んでしまった。
「ビー、おまえ誰とでも話せるよな。……俺はブリッツ。あんたは?」
「あぁ、これは失礼。ボクはサフ……。うん、ボクはサフィーだ」
「……私はニア。貴方、ほんとに男?」
「やはり、男には見えないか……?」
「悪いけど、私には男装した女にしか見えない」
あぁ、言われて見ればたしかに。もう一度、しっかりと見てみると、男装した女性だ。
「そうか……。キミたちは冒険者か……?」
「いえ、今から冒険者になるところです。サフィーさんは?」
「あぁ、ボクは冒険者なんだが……。キミたち、出会ってすぐでなんだが、ボクの頼みを聞いてはくれないか……?」
「頼み、ですか……?」
「あぁ、ボクをキミたちのパーティに入れてほしい」
僕たちのパーティに……? なんでわざわざ、僕たちみたいな、今から冒険者になるっていう新人以下にそんなこと頼むんだろう?
「……そんなこと頼んで、貴女にどういう利があるか聞いても?」
「……実は、ボクは色々と理由があって、パーティを組んでもらえないんだ。決して、パーティに迷惑はかけない! 一時期でもいいんだ!」
「……二人とも、どうしよう?」
「私は反対。理由は言わなくても分かるはず……」
「俺は別にいいぜ。先輩冒険者なら、分かんねぇこととか、教えてもらえるだろうしよ」
おぉ、珍しくブリッツが的確な意見を出した……。
ニアの理由は、たしかに言われなくても分かる。僕もよく知らない人とってのは、気が引ける。でも、なんだかサフィーさん。ほっとけない感じなんだよなぁ……。こう、小動物みたいな……。
「僕は、良いかなって思うけど。ニアがダメなら、ダメでいいよ」
「……私はビーが良いなら」
「んじゃ、決まったな。そういうわけだ、サフィー」
「……あの、ダメもとだったんだけど。キミたち、随分とお人好しだね」
サフィーさんは、驚いた顔でそう言う。まぁ、普通なら僕たちも断っていたんだけど。
「そんな、ほんとに困ってますみたいな顔されっとなぁ……」
「……涙目があざとい。あまりビーには、近寄らないでほしい」
「なんか、森で「転がリス」を見ている気分になるんだよね……」
「キ、キミたち……。ありがとう! ボク、きちんと役に立つよ! 戦闘のことから、冒険者の礼儀までなんでも聞いて!」
なんだかんだで、冒険者について僕たちは詳しく知らないから、助かるところもあるし。
「あ、じゃあ。さっそくで悪いけどよ、メリーナって知ってるか?」
「メリーナって、あのメリーナ?」
「あのメリーナは、あの美少女のメリーナしかいねぇよ」
いや、世の中にはメリーナって名前の人もたくさんいるから……。
「ノーマ村のメリーナでしょ、ボクは友達だよ?」
「おぉ! そのメリーナは今、どこにいるか知ってるか!?」
「うん、知ってるよ。三日前に王都に向かったからね」
「……あ?」
え、メリーナはこの街にいないの……? というか、王都に向かったって、どうして……?
「なんか、どっかの有名なパーティに誘われたとか、なんとか言ってた」
それじゃあ、僕たちはメリーナと一緒に、パーティを組めないってことになるんじゃ……。
「ふ……ふ……。ふざっけんな……! どこのどいつだ! 俺の可愛いメリーナを、王都なんかにさらった奴は!」
「……ねぇ、ビー。なんでブリッツは怒ってるのかな?」
「メリーナは、ブリッツの妹なんだよ」
「え……? ブリッツが……? ビー、ボクを騙そうとしてる?」
いえ、アレでもメリーナの兄です……。




