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剣王子と盾役者  作者: ゆきまろ
第1章ー影武者ー
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第2話

剣王子と盾役者、第2話です!1話を読んでいただきありがとうございます!

ここからシルドの異世界生活がスタートします!


(ーーなんだ?良い匂いが、する)


真っ暗な視界の中に動かない体。だが徐々に頭が覚めていく。やがてうっすらと嗅覚も利くようになってきた。体が完全に覚醒するまであと少し。


石鹸のような匂いがした。それも安っぽいものではなく何だか良い石鹸のような。ふんわりとした匂いに安堵する。

自然と周りの音も聞こえてきた。鳥のさえずる歌声、穏やかな風の音。


ーーーパラ、


何か、紙をめくる音。


(誰か、いる...?)

シルドは、ゆっくりと覚醒した。


ぼや、と視界が揺れる。高く白い天井。それも綺麗だ。続いて左へ視線を動かす。いくつもの窓が部屋の奥へと続いていく。だいぶ広い部屋のようだ。

それも、記憶にない部屋。



「ーー起きたか」


少し冷めたような声色。シルドは声の聞こえた右へと視線を向けた。





(ーー俺は、夢でも見ているのか?)

シルドはぼんやりとそう考えていた。だって、おかしいのだ。

なぜ、



自分と同じ顔が自分を見下ろしている?




「ーーーーえ..」

「起きろ、いつまで寝腐るつもりだてめぇ」

突然、自分に罵られた。


「え...?、は?..は??」

驚きと整理がつかないとで言葉が出てこない。

はくはくと口を開閉させながらぷるぷると自分を指差した。すると、


「誰に向かって指差してんだてめぇ!!」

ドンッッ

「ひぐぁっ!??」

怒る自分に思い切り蹴飛ばされたのだ!..シルドはその勢いでベッドから転げ落ちる。

痛い。本物の痛み。


ーー夢ではない



「っ、」

「てめぇ、誰だ。どこの(モン)だ!何故俺と同じ顔してんだ!!敵のスパイか!!?」

「ちょ、ま、」

「それにさっきの愚行、俺がアスベルト王国の第一王子と知っての行為か!??ああ!!!?」

「い゛っっ!!?」

シルドの襟を掴み無理矢理にでも起き上がらせてくる。

なぜ、こんな知らない場所で寝ていたのか

なぜ、自分と同じ顔をした人間がいるのか

なぜ、その人間にこうして一方的に暴言を吐かれているのか

(何で、俺がこんな目にーーー!??)


「ご、ごめん、まさかそんなに怒るなんて」

「ああ!??」

「ひぃっ...」

シルドは喧嘩は得意ではない。そもそも殴り合いなんてしたこともなければ、まず相手を怒らせるような事はしなかった。

だからこそ、ふつふつと不安や恐怖がせり上がってくる。

目を泳がせ怯えているシルドに対し、もう1人のシルドは「チッ」と舌打ちする。

「おい!!」

もう1人のシルドが突如誰かを大声で呼び出した。

すると、

「はい、ルード様」

キィ、と両開きの華美な扉を開けて1人の青年が入ってきた。

栗色の髪に、西洋の騎士を思わせる鎧を着た爽やかな印象の男だ。

騎士の様子を見てもう1人のシルドはギロリと視線を鋭くさせる。


「てめぇ、ハール。俺が呼ぶまで何をしていた?まさか呼ばれるまで外で待っていたとかじゃねぇだろうなぁ?俺がこんなにも声を荒げているってのに、なぁ」

この騒ぎを外で聞いていたにも関わらずなぜすぐに来なかったのか。ルード、と呼ばれていたもう1人のシルドは一層声を低くしハールと呼んだ騎士に問いかけた。

すると、ハールは目を伏せ、「申し訳ございません」と謝罪し跪いた。

「その者はまだ子供であり、戦士ではありません。ルード様ならば心配は無いとフェリオ様が」

フェリオ、という名前を聞いてルードは「チッ」と舌打ちした。


「あの愚弟め」

そう吐き捨てるとシルドから手を離した。

圧迫感から解放され口から沢山の空気が入り込む。思わずゲホゲホとシルドはむせた。

「おい」

鋭い声がシルドに降りかかる。

おそるおそる顔を上げると、ルードは未だに怖い顔のままこちらを見下ろしていた。


「え、えと」

「言え。名前と出身地」

「え」

「さっさとしやがれ」

だんっ、と床を踏み鳴らす。思わず「はひっ」と情けない声が出た。それを見てハールは困ったような表情を浮かべた。


「え、えと..赤木記人。シルドって呼ばれて、ます..しゅ、出身地はその....ま、まずここってどこ?が、外国??」

「聞いてんのはこっちだよ寝腐れ野郎」

ギロリと凄まれる。恐ろしい


「と、東京..」

「...あ?」

「えっ、じ、じゃあ日本..」

「何言ってんだふざけてんのか?」

(なっ、なんでーーーーーーーーーっ!??)

シルドは至って真面目に答えているのだ。なのに、ふざけているだなんて。

そもそも、ここは何なのだと頭を働かせる。

もしや、とひとつの答えが浮かんだ。普通はありえない。マンガやゲームの世界でしかありえない。


「た、多分...違う世界、から?」



シルドの答えに、部屋の中が一気に静まり返った。

直後ルードは始めは怒りを露にしたが、途中で何かに気付き、驚いた表情に変わっていった。


「てめぇ..今別の世界からって言ったな?」

「お、おお」

「..嘘じゃねぇな?」

「も、もちろん!」

力強く頷くシルドに、ルードは


「っーーはははははは!!聞いたかハール!!!別世界の人間だとよ!!笑えるな!!!」

「んなっ...う、嘘じゃない!俺の世界には騎士はいない!だ、大体アスベルト王国なんて聞いたこともない!!」

噛みつくようにそう叫ぶと、ルードは一瞬驚いた表情になったが、すぐに笑みを浮かべた。


「っは、そこまで言うんだったら信じてやっても良い。ただし、お前は捕虜だ。当たり前だよな?無断で俺の領地のある空から降ってきたんだから」

「え、ふ、降ってきた!?俺が!!?」

「ああ。アリスが驚いてたさ。「お兄様!空からお兄様が降ってきました!」なんて最初は頭でも打ったのかと思ったが」

面白そうに笑うルード。


(そんな、あれ、俺...どうしたんだっけ。確か学校で..)

学校での出来事を何とか思い出そうとするもなかなか思い出せない。

そんなシルドを見てルードは


「と、いうわけだからな捕虜。俺と同じ髪色同じ顔なのは気になるが...しばらくの間牢屋でゆっくりしていきな」

にこ、と笑ってハールに目配せをした。

「え」

ぽかんとするシルドに、ハールは申し訳なさそうにシルドの顔を覗き込んだ。

「申し訳ありません、少年」

優しげな声色でそう言われた直後、シルドの首に衝撃が走った。


シルドは再び目の前が真っ暗になっていった。



シルドと同じ赤毛の同じ顔を持ったキャラクター、ルードの登場です。

途中でハールやフェリオ、アリスなどの名前が出ましたが今後活躍しますのでお待ちください!

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