第1話
はじめまして。ゆきまろです。
小説家になろう初参加です。
読みづらかったり意味がわからないなど至らぬ点が多々ありますが、よろしくお願いします。
「おーい!シルドー!!」
背後からのクラスメイトの声にシルドーー赤木記人はパッと振り向いた。日本人には珍しい明るい赤毛。
高校へ入学した際、教師たちからは怪訝な顔をされたが、それも徐々に無くなっていき今では赤毛=シルド、と変換されごく普通に過ごせていた。
シルド、とはあだ名だ。記人は呼びにくい為、シルド。
特に嫌な訳ではないので止めてもらおうという気は起きなかった。
むしろ、あだ名をつけられることで友達感があっていい!とさえ思うくらいだ。
「なぁ、シルド!数学の課題どんな感じ?」
クラスメイトがこそこそと聞いてくる。
「んあ?..ふ、当然終わってるぜ!...良くない意味でな」
ふざけながら返すとクラスメイトはけらけらと笑う。
「本当にシルドって馬鹿だよなー!」
屈託のない笑顔。悪気のない笑顔。
「はは!だって難しくね?式使ったってわかんねーし!」
シルドもけらけらと笑う。
「いいわー!他の奴に写させてもらおー!!」
「おーおー、そうした方がいいぜー!」
んじゃ聞いてくるわ、とクラスメイトが手を振って去っていく。シルドはそれを手を振り返しながら見送った。
「...自分も分かってねーじゃん。俺ばっか馬鹿馬鹿言いやがって」
ぽつり、とシルドの口から漏れた愚痴。当然課題を終わらせていない自分も悪いのだが、だが。
「あっっ、シルドくんおはよー!」
今度は明るい女子の声。振り返るとそれほど仲の良いわけでもない女子生徒。顔はまぁまぁ可愛い部類だ。
髪を指でくるくるといじりながら近付いてきた。
「おはよー」
「ねぇね、シルドくん。ちょっとお願いがあるんだけど...ごめん、300円貸してくんないっ?」
挨拶した直後に、金を貸してくれと頼み込んできた。
「え」
「いやぁー、購買部で欲しいものがあんだけどね、お金足りなくってさー」
だから、貸して?と女子生徒が首を傾げてお願いをしてくる。
だが、この女子は
「..い、いやぁでもさ、..先週の250円まだ返してもらってねーし?」
「...そうだっけ?」
「え?」
きょとん、とシルドを見つめてきた。
「そうだってー!パン代!俺今月ギリギリでさぁ~」
笑いながらそうやんわりと断ろうとするが、女子生徒は「ふーん?」とわかっているのかわかっていないのか...人差し指をを唇に当て考えるかのようなポーズをする。
「ごめんごめん!ちゃんと返すからさー!だから..お願いっ」
退かない。ぱんっ、と手を合わせて頼み込んできた。
すると、
周りにいる他女子生徒たちの視線が少しずつ感じるようになった。
「お願いシルドくん!いえいえシルドさまっ!どうかこの哀れな乙女にお恵みを!!」
冗談混じりで言い出す彼女にシルドは内心呆れた。
だが、この女子は女子たちの中でも中心にいるような人物。当然味方も多い。彼女の一声で誰かをハブく事だって出来るくらいに。
シルドは「はぁーっ」とわざとらしくため息をつく。だがその声色に怒りや呆れの色は感じられなかった。
「しょーがねーな!このイケメンで人気者のシルド様が貸してやるよ!哀れな乙女に恵んでやろう!」
「わーお!さっすがー!!」
あははは、と笑い合いながらシルドは自身の財布を取り出した。
チャリ、と音を立てて彼女の手の器の中に小銭が入れられる。
「ちゃんと返せよー?」
「もっちろーん!!ありがとシルドくん!
シルドくん本当に優しいから好きーー!!」
なんて、絶対に思っていなさそうな事を声高らかに歌う女子生徒。
(...絶対返してくんねーだろーな..)
るんるんと去っていく彼女の背中と消えていく視線。
ああ、女子って恐ろしい。
「シルドって馬鹿だよなー!」
「シルドくん本当に優しいから好き!!」
嬉しくない言葉が、ずしりとシルドの中で沈んでいく。
自分がポジティブでいじられキャラで優しい奴だったら、こうしていじめも起きずに「友達」として接してくれる。
シルドは見てきた。正当な事を言った生徒たちが次々とターゲットにされていくのを。
自分1人が赤毛で白い目で見られていたとき、たまたまノリのいいキャラを演じてみたら、
「おもしろーい!」「変な奴ー!」と、笑われたのだ。
これが、スタートだった。
(卒業さえすれば、自由に振る舞えるかもしれない)
だからそれまでは、演じ続けようと考えていた。
だが、それもなかなかにしんどい。
本心を言えないのはしんどいのだ。
だが、今更言えなかった。
シルドは次の授業で使う教室に向かおうと、階段へ向かった。
このままさっさと教室に行って授業を受けたい。
だが、
「わっっ!!!!」
「うわぁぁあ!!?」
突如背後から大声で叫ばれしかもドンッッ、と肩を押された。
いや、押してきた本人にとっては叩いた程度だったのだろうが、無防備に階段を降るところだったシルドにとっては、完全に押し出された感覚だった。
ぐらり。
視界が下がる。
階段が迫ってくる。背後からの悲鳴、驚いた声。
ドタドタドタッッ
転げ落ちた音。直後の沈黙。
「シルドーー!!?大丈夫か!??」
「シルドくん!?」
「おい誰か転んだぞ」
一斉に騒ぎ出す生徒たち。だがそれも、シルドの耳には届いていなかった。
ぴくり、とほんの少し指は動いたが。
ーーーーーーー
「ーーお兄様、このままでは...せ、攻められてしまいます」
か弱そうな少女の声が、「お兄様」と呼ばれた少年の耳に届く。
「ま、魔王軍は次々と私達の領地をあ、荒らしていて..ゲルフの方たちも何だか動き出したみたい、です」
何度かつっかかるも言うべき事が言えたのか、少女はほっと安堵した。
「そうか、...なら俺たちからも出向いてやろうじゃないか」
迷いの無い少年の真っ直ぐな声に少女は「は、はい!」と意気込んだ。
その2人のやり取りを横目で見ながら、もう1人の少年は静かに腕を組んだ。
読んでいただきありがとうございました!
遅い更新ですが、気ままに書いていきます