1.仕事に行かなくていいなら監禁も悪くない、と思ってた
「……仕事に行きたくなーい!」
毎朝、目覚めの第一声がこれ。
入社して早数年。
毎朝欠かさずこの言葉を眠気の絡まった声で叫んでいる。
三日坊主の私がこんなに何かを続けてこれたのはたぶんこれだけ。
社会人失格?
当たり前でしょ。
社会人ちゃんとできてたらこんな言葉が朝から出てくるわけがない。
社会不適合者が生きるにはこの世はあまりに生きづらくできている。
コミュニケーションとか、コミュニケーションとか、コミュニケーションとか。
昔「働かないと生きていけないなんて理不尽な世の中だ!」とリア充な友達に愚痴ったら「あんた大丈夫?」と真顔で心配されてしまった。
うん、大丈夫。
大丈夫すぎるくらい大丈夫。
いたって正常。
だからこそ辛いのだ。
まぁ、こんな風に働きたくないと思ったことがある人間なら一度は思ったことがあるはずだ。
もういっそ監禁でもいい。
私をどこかに閉じ込めて仕事に行けないようにしてくれ、と。
だって監禁されちゃったら出勤しようがない。
仕方ない、仕方ない。
私のせいじゃない。
悲劇のヒロインぶりながら休めてしまう。
でもできれば有給消化できるくらいの期間で助け出して欲しい。
イケメン刑事に救出されて即寿退職なんて流れが理想中の理想。
つまり、ちょっと危険なロングバケーションを夢見ていた。
半分、というか、ほぼ百パーセント冗談で。
だから、こんな状況は全く望んでいなかったのだ。
「……ここ、どこ?」
ここ数年ぶりの、仕事に行きたくない以外の目覚めの第一声だった。