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【女、女、女…女】

『セント、随分とにぎやか…ね…』


『諸悪の根源、降臨…』

『こら、荒野。随分とせこい手を使ってくれますわね。引っかかる方も引っかかる方ですけど』


『クロネさん、頂いた服のことなんですけど…』

『セント、いいデザインじゃない。素敵よ』

『折角頂いた物の形を変えてしまって申し訳ありません』

『謝る必要は無くってよ。贈った相手が私のリメイクに賞賛を浴びせているのですから』

『へー、あなたがこのデザインを、素晴らしい感性だと思うわ』

『あなたなかなか見る目があるわ。私は「森林」の偉大なる女王バブエ様の使いフランよ』

『私は「荒野」のクロネ、よろしくお願いしますね』



ユーロさんは音も無く私の後ろに隠れて「喰えない女…」と呟く。


クロネさんは私のほうに体の向きを変えた。


『セント、後ろの方は…』

『「島国」のユーロ…よろしくは、しない』


微妙な空気感を変えようと2人に控え室を選んでもらう。


『鍵は1つしかないので失くさない様に注意してくださいね』



部屋決めは特に揉める事なく、決まった。部屋の内装や広さはまったく同じなので当然と言えば当然であるけれど…


この場はフランさんが仕切っている。

内容は着る物の重要性と着る者の品位について。


『私思いますの。人間は中身が大事ではありますけれど、見た目の印象というものを軽く考えてはいけないと。伝統の服はその国の歴史や誇りではありますがそれにとらわれてはいけない。それらを尊重した上で高みを目指していく、皆様そうは思いません』


『そうね、セントによかれと思って衣装を渡したけれど、考えが浅かったわ。こんなに素敵にリメイクしてもらえてよかった、セント、ごめんなさいね』

『いえ、私ももう少し考えていればよかったのですから』



『ふん、白々しい…』


『ユーロさん。あなたもお国の衣装をお持ちの際はこの私、バブエ様の使者フランが諍いなきよう素敵にリメイクしてさしあげますわ、ホッホッホホッホ』


ユーロさんはあきれたような表情で片手をひらひらさせている。

『素直じゃありませんこと。私は寛容なので許してさしあげますわ』


『フランさん、あなたの国の衣装はどうするの』

クロネさんの問いかけに笑い声をピタッと止めて、ハッと何かを思い出したように目を見開き、私にビシッと指を突きつける。


『危ない、危ない。セントさん…あなたに決闘を申し込みますわ。拒否権はございません。私の敬愛するバブエ様を誑かそうとした罪、私が裁いてさしあげます。お覚悟』


『やはり、馬鹿猿。いや、手先の器用な猿もやはり猿は猿…』

『何度言えば、私は高貴なるフランと言う名があるのです…』

『フラン、ここでセントと揉めることがあなたの大切な女王様と国にどれほどの損害を出すのか考えるべき』

『そうね…セントが個人的にどこかの国を貶めるとは考え難いけれど。それだけの力があるのは事実よね』


『ううぅぐうぅ…』

歯を食いしばりパッチリとした目を見開いて威圧してくる…

『フランさん、私、バブエ様とはそこまで親しくないですし。誑かそうなんて考えていませんから…』


『えっ。そうですの…』

『2回ほど五国会議の席でお会いしただけですから』




『あら、そう。そうでしたの、私の早とちりでしたのね。セントさん仲良くいたしましょう』

そう、そうでしたのねとか言いながら私の手を両手で握ってブンブン振り回すフランさんの表情はとても穏やかになっていた。




『取り込み中悪いがこの町の、いや、今後の世界の舵取りをする者に国の代表としてあいさつがしたいのだが』


とても頑丈そうな鎧を纏った、大柄な男の人が階段のところで立っている。


『先ほど仰られたほど大げさな者ではないですが、ここに住んでいます、セントです』

『あなたが…』

『どうかされましたか』


『いや、失礼。思っていたよりもお若かった上に女性だったので』

『聞き捨てなりませんわね。人の価値は能力ですのよ。発言の撤回を要求しますわ』

フランさんはビシッと指を突きつけて声高らかに言い放つ。


『そちらの方の言うとおりだ。申し訳ありませんでした。私は「鉱山」のゲンといいます。先ほどの失礼な発言撤回させていただきます。今後「鉱山」をよろしくお願いします』


フランさんは突きつけた指の持って行き場が分からずに固まっている。

ゲンさんは私に深く頭を下げて今後どのようにすればよいかと尋ねられた。


『控え室をそれぞれの国の方に選んでもらっています。3つは決まってしまいましたけれど』

『では、そちらの方々は国の代表ですかね』


そう言いながら部屋を選ばれた。


『では、今日はこれで失礼します。交渉は明日からお願いできればありがたいのですが、いいでしょうか』


どうしようか…正直に言った方がいいわよね。

『すいませんが…』

『聞き捨てなりませんわね、ゲンさん。我々を他国の代表と知った上でセントさんと直接交渉を宣言されるとは、喧嘩を売っているならば買いますわよ』


フランさんは再度ビシッと指を突きつける。


『そうでしたか。あの本の読み込みが足りなかったようです。もともと身体を動かす仕事が多かったものであの本の内容を理解できていなかったようです。教えて頂くことはできますか』


フランさんは指を突きつけたまま呆れながら口を開こうとする。

『あなたね、そんなこと…』

『セントの権限には制限がある。イマジニア産の謎鉱石の変換による恩恵は有限…可能な限り国同士での協議も必要』

『ユーロさん、折角わ…』

『セント様の権限を使うまでも無いものについては各国で取引を行い、有限である恩恵については国同士が揉めないようにするといった方針でいいですか』

『頭は悪くない様子…鎧熊…』

『それはどうも。各国の代表がその意見で一致すること。セント様が各国の合議制を認めればですけれど』

『…鎧熊も喰えない…鎧狸、ぽんぽん』


一同が口を閉ざす…ユーロさんが自分のお腹をぽんぽん叩く音だけが響く。



『まあ、後1つが来るまでは保留でしょうからそう急がなくても、明日くらいには揃うでしょう。ユーロさんもゲンさんもそれまで待てばいいじゃない、フランさんそろそろ腕辛くない下ろしたらどう』


『確かに、あなたの言うとおりだ…』

『「荒野」のクロネよ』

『よろしくお願いします、皆さん。それではまた明日お邪魔します。セント様失礼します』


ゲンさんは頭を下げて階段を降りていった。


『猿以外はなかなか手ごわい、よ・か・ん』

『だから猿じゃないっていって…』

『ユーロさん私には何か無いのかしら』



『蜘蛛女…』

『私の糸に絡め捕られないようにね』

『私は蟹にもなれる、チョッキンチョッキン、また明日』


ユーロさんは両手を鋏のようにして横歩きで階段を降りていった。


『面白い人ね、ユーロさん』

『あなた、蜘蛛女とか言われてよかったですの』

『私個人のことなど些細なことよ。それよりセント、思った以上に明日からは大変かも知れないわね』


クロネさんの言葉を受けて、私はどうすればよいのか…

皆自分の国を大切に思っていると思う…


私は…



不意に背中を叩かれる。

『セントさん、顔をお上げなさい。あなたが思うようになさればいいのです。自分を見失っては根無し草、枯れるのを待つばかりですわよ』



『フランさん…』


『勘違いなさらないように。私もバブエ様の為、「森林」の為あなたから利権を捥ぎ取りますわ、覚悟なさい』

『フランさんは優しいのね』

『フン、手ごたえの無い相手ではつまらないですから。クロネさん、あなたもいいセンスですけれどそれはそれ、これはこれですわ。ごきげんよう、また明日、ですわ』


『私も今日は帰るわね。セント、できる限り手助けするからよろしくね』




皆が帰っていった…私はどうしたら。いや、どうしたいかよね…


パンを食べながら1人、そんなことを考えて…外は暗くなってきて、今日は月が綺麗…




静かな時間は突然の訪問者によって終わりを告げた。


『セント姉様、お見えですか。この階段をあがってもよろしいでしょうか』

天井から聞こえる声に見に覚えはない…


『あなたはどなたでしょうか』


『私は「平原」のナセキ。母は違いますがあなたの弟です。こんな時間ですが今この町に着き是非お話したいことがあります』

『お上がりください』


私の弟…


きっと、お父様のそばにいた女性達のどなたかがナセキ君の母親なのだろう。




暫らく待っていると息を切らした少年が階段から姿を現した。


『初めてお目にかかります。ナセキです』

まだ、初々しさの残る顔立ちには急いで来たためか疲労の色が見える。


『実感は無いのだけれど…お父様は元気かしら』

何を話していいか分からず、当たり障りのないことを聞いたつもりであった。



ナセキ君の顔は悲しみに染まる…


『姉様…お父上は……殺されました………魔王の手によって、僕は、そばにいたのに、何もできなくて…ごめんなさい…姉様、ごめんなさい…』

気がつくと私はナセキ君を抱きしめていた。


『自分を責めては駄目よ。お話し聞かせてくれるかしら。ナセキ君』


お父様が亡くなった、魔王さんの手によって…


私は冷静だと思う。


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