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南の方角の山脈を超えた先に、酷く辛そうな魔力の反応があった。
元からいた者ではなくて突然出現した者だろう。
皆が寝静まった頃の城を飛び出して私はその場所へと向かった。
山脈を過ぎ去ったあたりで目標を確認出来た。天へと向かって放出される桃色の魔力である。
かの者は少女であった。私と同系統の即ち龍である。
少女の服装は珍しかった。体に服をかけて着ているのである。服には桜の花弁の模様が施されていた。
少女の桃色の双角をゆっくりと撫でる。次元を超えてくる前に大きな危害を加えられたのであろう。それを保護する為に内なる力が暴走した感じかな。
何十年も前の私みたいに。
少女はすやすやと寝息を立てている。
落ち着いて良かった。
私は桃色の少女を抱いて闇へと紛れた。




