第五章
開戦時の主な連合艦隊水上艦艇部隊の編成と司令長官及び開戦当初の任務
第一艦隊 (山本五十六大将直率、ウエーク島攻略)
第一戦隊 戦艦 「秋津洲」(連合艦隊及び第一艦隊旗艦)「備前」「美濃」
第二戦隊 戦艦 「安房」 「豊前」
第三戦隊 戦艦 「美作」 「伊予」
第十一航空戦隊 空母 「祥龍」
第二十一戦隊 軽巡洋艦 「石狩」 「鈴鹿」 「黒部」 「米代」
第一水雷戦隊
第一駆逐隊 駆逐艦 「秋風」 「雨風」 「天津風」 「浦風」
第二駆逐隊 駆逐艦 「海風」 「大風」 「沖津風」 「川風」
第三駆逐隊 駆逐艦 「北風」 「寒風」 「潮風」 「空風」
第二水雷戦隊
第四駆逐隊 駆逐艦 「上風」 「追風」 「東風」 「涼風」
第五駆逐隊 駆逐艦 「微風」 「太刀風」 「谷風」 「束風」
第六駆逐隊 駆逐艦 「玉風」 「辻風」 「旋風」 「時津風」
第二艦隊 (大川内伝七中将、フィリピン攻略)
第四戦隊 戦艦 「筑前」 「越後」
第五戦隊 戦艦 「出羽」 「志摩」
第六戦隊 戦艦 「伊豆」 「飛騨」
第十二航空戦隊 空母 「海龍」
第二十二戦隊 軽巡洋艦 「勝浦」 「四万十」 「九頭龍」 「天塩」
第三水雷戦隊
第七駆逐隊 駆逐艦 「波風」 「西風」 「野風」 「羽風」
第八駆逐隊 駆逐艦 「初風」 「春風」 「浜風」 「辺津風」
第九駆逐隊 駆逐艦 「神風」 「帆風」 「舞風」 「松風」
第四水雷戦隊
第十駆逐隊 駆逐艦 「南風」 「矢風」 「山風」 「山背風」
第十一駆逐隊 駆逐艦 「朝風」 「天狗風」 「夕風」 「夜風」
第十二駆逐隊 駆逐艦 「雪風」 「横風」 「陸風」 「若葉風」
第三艦隊 (南雲忠一中将、グアム攻略)
第十一戦隊 重巡洋艦 「白根」 「丹沢」 「赤石」 「雲仙」
第十二戦隊 重巡洋艦 「穂高」 「鶴見」 「蔵王」 「三室」
第十三航空戦隊 空母 「青龍」
第二十三戦隊 軽巡洋艦 「空知」 「渡良瀬」 「静内」 「千種」
第五水雷戦隊
第十三駆逐隊 駆逐艦 「大月」 「皐月」 「霜月」 「長月」
第十四駆逐隊 駆逐艦 「初月」 「睦月」 「秋月」 「居待月」
第十五駆逐隊 駆逐艦 「卯月」 「梅見月」 「閏月」 「朧月」
第六水雷戦隊
第十六駆逐隊 駆逐艦 「神楽月」 「菊月」 「小春月」 「小望月」
第十七駆逐隊 駆逐艦 「早苗月」 「桜月」 「時雨月」 「月見月」
第十八駆逐隊 駆逐艦 「二十日月」 「葉月」 「花見月」 「二日月」
第四艦隊 (小沢治三郎中将、フィリピン攻略支援)
第十三戦隊 重巡洋艦 「身延」 「八海」 「飯森」 「雲取」
第十四戦隊 重巡洋艦 「清澄」 「栗駒」 「塩津」 「愛発」
第十四航空戦隊 空母 「蛟龍」
第二十四戦隊 軽巡洋艦 「幌別」 「手取」 「十勝」 「遠賀」
第七水雷戦隊
第十九駆逐隊 駆逐艦 「青潮」 「赤潮」 「上潮」 「朝潮」
第二十駆逐隊 駆逐艦 「淡潮」 「荒潮」 「入潮」 「潮」
第二十一駆逐隊 駆逐艦 「渦潮」 「裏潮」 「追潮」 「大潮」
第八水雷戦隊
第二十二駆逐隊 駆逐艦 「落潮」 「表潮」 「親潮」 「風潮」
第二十三駆逐隊 駆逐艦 「黒潮」 「小潮」 「逆潮」 「高潮」
第二十四駆逐隊 駆逐艦 「立潮」 「出潮」 「中潮」 「長潮」
第一航空艦隊 (山口多聞中将、ハワイ空襲)
第一航空戦隊 空母 「潜龍」 「白龍」
第二航空戦隊 空母 「神鶴」 「天鶴」
第十五戦隊 重巡洋艦 「蓼科」 「武甲」 「市房」 「国見」
第二十五戦隊 軽巡洋艦 「奥入瀬」 「那賀」 「高瀬」 「元浦」
第九水雷戦隊
第二十五駆逐隊 駆逐艦 「荒波」 「池波」 「磯波」 「岩波」
第二十六駆逐隊 駆逐艦 「卯波」 「上波」 「浦波」 「大波」
第二十七駆逐隊 駆逐艦 「沖津波」 「沖波」 「男波」 「風波」
第十水雷戦隊
第二十八駆逐隊 駆逐艦 「風津波」 「片男波」 「川波」 「小波」
第二十九駆逐隊 駆逐艦 「逆波」 「細波」 「潮津波」 「四海波」
第三十駆逐隊 駆逐艦 「白波」 「立波」 「高波」 「縦波」
第二航空艦隊 (角田覚治中将、アリューシャン攻略)
第三航空戦隊 空母 「白鶴」 「雲鶴」
第四航空戦隊 空母 「夜鶴」 「飛鶴」
第十六戦隊 重巡洋艦 「道後」 「岩菅」 「乗鞍」 「横津」
第二十六戦隊 軽巡洋艦 「鳴瀬」 「余市」 「山国」 「高津」
第十一水雷戦隊
第三十一駆逐隊 駆逐艦 「青雲」 「風雲」 「天雲」 「黒雲」
第三十二駆逐隊 駆逐艦 「白雲」 「群雲」 「茜雲」 「雨雲」
第三十三駆逐隊 駆逐艦 「浮雲」 「薄雲」 「鱗雲」 「朧雲」
第十二水雷戦隊
第三十四駆逐隊 駆逐艦 「笠雲」 「霧雲」 「氷雲」 「白小雲」
第三十五駆逐隊 駆逐艦 「滝雲」 「棚雲」 「夏雲」 「旗雲」
第三十六駆逐隊 駆逐艦 「巻雲」 「山雲」 「夕雲」 「雪雲」
その他支援艦艇
工作艦 「大隅」「豊後」「常陸」「能登」「鹿島」「香取」「富士」「敷島」「朝日」「三笠」
(竣工時の武装を全て取り外し、各種工作設備及び対空兵装を装備)
標的艦 「出雲」「磐手」「浅間」「常盤」「八雲」「吾妻」「日進」「春日」
(武装は無し。小型爆弾及び小口径の砲に耐えられる装甲を装備)
その他、指定船を基にした給油艦、輸送艦、給糧艦、特設艦艇など多数。
開戦時の潜水艦部隊の編成、司令長官及び開戦当初の任務
第一潜水艦隊 (醍醐忠重中将、中部太平洋での通商破壊及び敵艦隊の攻撃)
第一潜水戦隊 潜水母艦 「富士丸」(全て8000トン級指定船)
第一潜水隊 潜水艦 「笠戸」 「大神」 「四阪」 「能美」
第二潜水隊 潜水艦 「石垣」 「沖鼓」 「白石」 「中甑」
第三潜水隊 潜水艦 「伊是名」 「得撫」 「志賀」 「中通」
第二潜水戦隊 潜水母艦 「妙高丸」
第四潜水隊 潜水艦 「伊平屋」 「喜界」 「式根」 「永浦」
第五潜水隊 潜水艦 「硫黄」 「来間」 「座間味」 「波照間」
第六潜水隊 潜水艦 「魚釣」 「久高」 「瀬底」 「歯舞」
第三潜水戦隊 潜水母艦 「那智丸」
第七潜水隊 潜水艦 「伊良部」 「古宇利」 「島浦」 「二神」
第八潜水隊 潜水艦 「天草」 「玄界」 「坂手」 「久賀」
第九潜水隊 潜水艦 「奥尻」 「国後」 「崎戸」 「福江」
第二潜水艦隊 (高木武雄中将、北方海域での通商破壊及び敵艦隊の攻撃)
第四潜水戦隊 潜水母艦 「羽黒丸」
第十潜水隊 潜水艦 「択捉」 「倉橋」 「末津」 「日振」
第十一潜水隊 潜水艦 「網地」 「北木」 「島山」 「平群」
第十二潜水隊 潜水艦 「鵜来」 「西表」 「竹富」 「伯方」
第五潜水戦隊 潜水母艦 「雲仙丸」
第十三潜水隊 潜水艦 「御五神」 「加唐」 「大東」 「八丈」
第十四潜水隊 潜水艦 「阿多田」 「神集」 「多良間」 「平戸」
第十五潜水隊 潜水艦 「生口」 「神津」 「津堅」 「舳倉」
第六潜水戦隊 潜水母艦 「葛城丸」
第十六潜水隊 潜水艦 「大津」 「小宝」 「高見」 「平安座」
第十七潜水隊 潜水艦 「青梅」 「神山」 「竹生」 「蓋井」
第十八潜水隊 潜水艦 「奄美」 「御所浦」 「渡名喜」 「保高」
第三潜水艦隊 (三輪茂義中将、西部大西洋での通商破壊及び敵艦隊の攻撃)
第七潜水戦隊 潜水母艦 「天城丸」
第十九潜水隊 潜水艦 「粟国」 「金輪」 「知林」 「針尾」
第二十潜水隊 潜水艦 「伊唐」 「古志岐」 「答志」 「鳩間」
第二十一潜水隊 潜水艦 「大矢野」 「唐戸」 「天売」 「幌筵」
第八潜水戦隊 潜水母艦 「高野丸」
第二十二潜水隊 潜水艦 「浮原」 「金華山」 「高根」 「宮古」
第二十三潜水隊 潜水艦 「小川」 「諏訪瀬」 「多々良」 「六連」
第二十四潜水隊 潜水艦 「鵜渡根」 「占守」 「津久見」 「宮戸」
第九潜水戦隊 潜水母艦 「衣笠丸」
第二十五潜水隊 潜水艦 「沖津」 「色丹」 「千振」 「円上」
第二十六潜水隊 潜水艦 「大久野」 「下地」 「手石」 「三宅」
第二十七潜水隊 潜水艦 「乙子」 「水晶」 「津多羅」 「室津」
第四潜水艦隊 (樋口修一郎中将 、フィリピン近海での通商破壊及び敵艦隊の攻撃)
第十潜水戦隊 潜水母艦 「愛宕丸」
第二十八潜水隊 潜水艦 「大島」 「宇和島」 「久米島」 「飛島」
第二十九潜水隊 潜水艦 「青島」 「江田島」 「神島」 「戸島」
第三十潜水隊 潜水艦 「請島」 「魚島」 「獅子島」 「手島」
第十一潜水戦隊 潜水母艦 「高雄丸」
第三十一潜水隊 潜水艦 「宇久島」 「男木島」 「猿島」 「角島」
第三十二潜水隊 潜水艦 「相島」 「祝島」 「菅島」 「父島」
第三十三潜水隊 潜水艦 「池島」 「網地島」 「篠島」 「月島」
第十二潜水戦隊 潜水母艦 「鳥海丸」
第三十四潜水隊 潜水艦 「粟島」 「江島」 「佐久島」 「鳥島」
第三十五潜水隊 潜水艦 「家島」 「黒島」 「竹島」 「長島」
第三十六潜水隊 潜水艦 「浮島」 「椛島」 「高島」 「西島」
開戦後の新型艦船就役頻度
戦艦「瑞穂」 1942年11月就役予定
航空母艦、護衛空母、重巡洋艦、軽巡洋艦
それぞれ半年に一隻ずつ就役予定
駆逐艦、潜水艦、護衛艇(甲型、乙型)
それぞれ月に四隻ずつ就役予定
開戦時の海上護衛部隊の編成と主な活動海域
第一護衛艦隊 護衛空母「祥鷹」 (南洋諸島)
第一護衛隊 護衛艇 「桑」 「梅」 「糸桜」 「石楠花」
第二護衛隊 護衛艇 「玉椿」 「梨」 「藤桜」 「柳」
第三護衛隊 護衛艇 「山椿」 「枇杷」 「牡丹」 「若楓」
第二護衛艦隊 護衛空母「瑞鷹」 (ブルネイ・台湾近海)
第四護衛隊 護衛艇 「青柳」 「糸柳」 「黄梅」 「遅桜」
第五護衛隊 護衛艇 「紅梅」 「小米花」 「小米桜」 「小手毬」
第六護衛隊 護衛艇 「辛夷」 「桜」 「蜆花」 「紫木蓮」
第三護衛艦隊 護衛空母「白鷹」 (中部太平洋)
第七護衛隊 護衛艇 「白木蓮」 「沈丁花」 「丁子」 「椿」
第八護衛隊 護衛艇 「猫柳」 「白梅」 「初桜」 「彼岸桜」
第九護衛隊 護衛艇 「富士桜」 「藪椿」 「山桜」 「山躑躅」
第四護衛艦隊 護衛空母「青鷹」 (東日本近海)
第十護衛隊 護衛艇 「芽柳」 「木蓮」 「八重桜」 「野梅」
第十一護衛隊 護衛艇 「山吹」 「山藤」 「雪柳」 「青梅」
第十二護衛隊 護衛艇 「青桐」 「紫陽花」 「杏」 「桐」
第五護衛艦隊 護衛空母「蒼鷹」 (小笠原近海)
第十四護衛隊 護衛艇 「小梅」 「新樹」 「山桃」 「葉桜」
第十五護衛隊 護衛艇 「早桃」 「若竹」 「牡丹」 「夏萩」
第十六護衛隊 護衛艇 「百日紅」 「山桜桃」 「野牡丹」 「海棠」
第六護衛艦隊 護衛空母「天鷹」 (西日本近海)
第十七護衛隊 護衛艇 「満作」 「樟若葉」 「海紅豆」 「山茶花」
第十八護衛隊 護衛艇 「寒桜」 「寒椿」 「寒牡丹」 「早梅」
第十九護衛隊 護衛艇 「冬苺」 「冬桜」 「冬椿」 「冬牡丹」
第一根拠地隊 (東日本沿岸)
第一警備隊 護衛艇 「東菊」 「虎杖」 「菊菜」 「金盞花」
第二警備隊 護衛艇 「薊」 「片栗」 「雉蓆」 「金鳳花」
第三警備隊 護衛艇 「青麦」 「芥子菜」 「黄水仙」 「熊谷草」
第二根拠地隊 (西日本沿岸)
第四警備隊 護衛艇 「慈姑」 「早蕨」 「春蘭」 「諸葛菜」
第五警備隊 護衛艇 「君子蘭」 「桜草」 「芝桜」 「酸葉」
第六警備隊 護衛艇 「紫雲英」 「春菊」 「杉草」 「州浜草」
第三根拠地隊 (小笠原沿岸)
第七警備隊 護衛艇 「菫」 「菫草」 「芹」 「蒲公英」
第八警備隊 護衛艇 「土筆」 「鼓草」 「二輪草」 「菖蒲」
第九警備隊 護衛艇 「躑躅」 「新草」 「繁縷」 「花大根」
第四根拠地隊 (南洋諸島)
第十警備隊 護衛艇 「雛菊」 「三角草」 「蕨」 「菖蒲草」
第十一警備隊 護衛艇 「風信子」 「蓮」 「青葦」 「麻」
第十二警備隊 護衛艇 「防風」 「若草」 「葵」 「岩鏡」
第五根拠地隊 (ブルネイ沿岸)
第十三警備隊 護衛艇 「岩檜葉」 「蝦夷菊」 「車百合」 「駒草」
第十四警備隊 護衛艇 「岩松」 「杜若」 「芥」 「鷺草」
第十五警備隊 護衛艇 「浮草」 「柿若葉」 「小判草」 「早苗」
第六根拠地隊 (台湾・沖縄沿岸)
第十六警備隊 護衛艇 「小百合」 「睡蓮」 「石竹」 「月見草」
第十七警備隊 護衛艇 「芍薬」 「鈴蘭」 「竹似草」 「手鞠花」
第十八警備隊 護衛艇 「紫蘭」 「石菖」 「立葵」 「夏菊」
12月8日、午前五時半。
戦艦「秋津洲」を旗艦とする第一艦隊は、太平洋にあるアメリカ領の島々を制圧する足ががりとすべく、最初の攻略目標であるウエーク島の沖合いで艦砲射撃の用意をしていた。
「いよいよ開戦か…。出来れば避けたかったが…」
「私も開戦には反対だ。しかし、こうなってしまっては仕方がない」
「山本長官…」
そう言うと誠一は山本大将の方を向きしんみりとした表情で敬礼をし、山本大将も答礼をした。
「どうした。そんな顔をしていては、勝てる戦にも勝てんぞ」
「分かっています。しかし今さらながら、何か戦争を避ける手段があったのではないかと思えてきてしまいましてね」
「確かにあるにはあったかも知れん。だがそれとて、日本に損害をもたらさないとは限るまい?」
「…それも、そうですね」
その時、あわてて部屋に入ってきた水兵がアメリカが正式に宣戦布告をしてきたことを伝えた。
「…さてと、そろそろ始めますか」
「ああ」
こうして、二人は艦橋へと向かった。
午前六時十五分、第一艦隊旗艦「秋津洲」を始めとする戦艦七隻に装備された46cm砲八門、40.6cm砲四十八門が一斉に火を噴いた。目標は、ウエーク島の軍事施設である。
世界最強クラスの戦艦群による砲撃は、たかだか面積6.5平方キロメートルの環礁に対してはあまりにも強力すぎた。その強力さは、後に作戦を立案した誠一をして「牛刀を以って鶏を裂くような真似をしたなあ」と言わしめる程であったという。
無数の巨弾が、轟然と放たれる。
その砲弾は狙い過たず小規模な軍事施設となけなしの砲台及び航空機を直撃し、それらを灰燼に帰すどころか、地面に巨大な穴ぼこを蜂の巣のように作った。なおこの後日本軍の捕虜となったある米兵の証言では、砲弾が爆発する時の爆風でパイロットも燃料も積んでいないF4Fが空高く飛び上がったかと思うと、暫くして落ちてきた時には無惨なスクラップに成り果てていたとのことである。
突然降り注いだ無数の砲弾にウェーク島の守備隊は大混乱に陥り、第一艦隊に随伴していた輸送艦から陸軍の部隊が上陸するや否や、殆ど戦闘も無く降伏した。
ウエーク島占領後の「秋津洲」の会議室では、誠一と艦魂たちが話し合いをしていた。
「しかし、あっけなかったなあ」
「さりとて、我が方の戦没艦無きは幸先良きことなり」
「確かに、史実じゃ『如月』と『疾風』がやられたからね。でもこの先、いつまでこの状態を保てるか…」
「私らはいいとして、第二艦隊や第一航空艦隊が心配だな」
「それ以上に危険なのは潜水艦だろう。それなりの静粛性は持っているとはいえ、捕捉・撃沈されないという保証はどこにも無いからな」
「それに、潜水艦は耐久性が低いですし…もし爆雷を当てられたら、最悪の場合一撃で沈没してしまいます」
しょんぼりとした表情で、豊前が言う。そんな豊前の肩を、伊予がポンと叩いた。
「豊前姉さん、大丈夫ですよ。今の時期ならアメリカの対潜戦術も未熟でしょうから、そう簡単にやられたりはしないでしょう」
どうにか豊前を元気付けようとする伊予ではあったが、元々悲観的な考え方をしがちな豊前に対して大した効果は無かった。
「今は、な。ただ、護衛空母が出てきたら厄介なことになるぞ」
「護衛空母ごとき、私の艦載機で片っ端から沈めて見せます!」
「確かに護衛空母は脆いが、如何せん数が多いからなあ…」
「だったら停泊しているところに絨毯爆撃を…」
「馬鹿か美作。対艦絨毯爆撃なんてしたって意味がねえじゃねえか。ほとんど対艦核攻撃をしろと言っているのと変わらねえぞ」
「馬鹿とは何ですか、馬鹿とは」
呆れ顔で自分を馬鹿呼ばわりした安房に対し、美作が食ってかかる。しかしそれは、誠一の一言で止められた。
「二人とも、こんな所で仲間割れをするな。確かに美作の言っていたことに突っ込みたい気持ちは分かるが、もう少し言い方というものがあるだろうに」
「私は本当のことを言ったまでですよ」
「安房さん、もう少し言動を慎んでください」
「秋津洲さん。あんたには関係ないことだ」
「私は連合艦隊の旗艦です。旗艦として、他の艦魂を指導する義務もあるかと愚考致しますが」
「何が愚考だ。竣工して一年も経っていないくせに旗艦ぶって」
「言葉遣いに気を遣ったまでです」
「何だと――ごほおっ!」
頬に強烈な痛みを感じた安房が振り向くと、そこには安房に敵意をむき出しにしている祥龍がいた。
「祥龍、お前…っ!いきなり何を…っ!」
「安房さん…貴方は、それでも連合艦隊の主力艦の艦魂ですかっ!?」
「な…っ」
「私は今まで、貴方は多少粗野なところがあるとはいえ、きちんと日本海軍の戦艦艦魂としての自覚をきちんと持っている方だと思っていました。それがどうです。美作さんの言葉に対して必要以上に非難をして、あまつさえそれを注意した秋津洲長官にまで反抗する…はっきり言って、失望しました」
祥龍はそう言うと、不機嫌そうな顔で会議室を出て行った。
結局その後誠一や他の艦魂たちによる仲裁でどうにか騒ぎは収まり、安房は一週間の自室謹慎(必要時以外の外出不可)を言い渡された。
同じ頃、第三艦隊旗艦「白根」の艦橋では、南雲忠一中将がグアムを艦砲射撃するための準備を整えさせていた。
なお南雲中将は史実では航空艦隊の司令長官に就任したが、南雲中将が本来水雷畑の出身であることを知っていた誠一の言葉によって重巡洋艦を主戦力とする第三艦隊の司令長官に就任したのである。
「今の時刻は?」
南雲中将が参謀長に尋ねる。
「○六○○(まるろくまるまる)です」
「まだ、アメリカが宣戦布告をしたという報告は入っていないのか?」
「はい。今のところ入っておりません」
「そうか…」
その時、大急ぎで水兵が走ってきた。
「失礼します!たった今、アメリカが我が国に宣戦布告をしたとの連絡が入りましたっ!」
「そうか。…よし、全部隊グアム島への攻撃を開始せよ!」
「撃ち方始めえっ!」
その直後、重巡洋艦八隻、軽巡洋艦四隻、駆逐艦二十四隻の主砲が一斉に火を噴いた。
もちろんその火力は第一艦隊には劣るが、それでも八インチ砲四十八門、六インチ砲三十二門、五インチ砲九十六門の一斉砲撃は基地機能を喪失させるには十分であった。
その後、サイパンやテニアン、さらにはトラックから支援に来た零式中型爆撃機を主力とする航空隊の攻撃によって守備隊は甚大な損害を被り、翌日に陸軍部隊が上陸した後間もなく降伏した。
「フン…手ごたえの無い…」
そう自艦の露天艦橋で呟くのは重巡洋艦「白根」の艦魂、白根である。彼女は呆れたようにため息をつくと、そこに胡坐を掻いて座った。さらにはあろうことか、そこで日本酒を飲み始めたのである。
「こら白根。女子がそんなことをするんじゃありません」
今しがた白根を叱ったのは空母「青龍」の艦魂、青龍である。艦魂の階級では空母である彼女のほうが上だが、旗艦である白根には敬語を使っている。
「それにしても青龍さん。どうして準主力艦である私がわざわざこんなちっぽけな島を攻撃せねばならないのですか?やはり重巡洋艦として生まれたからには、敵艦…それも、出来れば戦艦や空母のどてっぱらに魚雷を叩き込んでみたいのです」
「そうかもしれないけど、白根。宮沢大将も仰っていたではありませんか。この戦争は言うなれば島取り合戦。だから、艦隊決戦なんて早々起きないぞ、って」
なおここで青龍が誠一のことを「宮沢大将」と呼んでいるのは、誠一が開戦と同時に昇進したためである。一応役職は書類上軍事参議官ということにはなっているが、実際は新型兵器の設計や作戦の立案など職務は非常に多岐にわたっているのが現状である。
「なら青龍さんは、その艦載機で敵艦を撃沈したいとはお思いにならないので?」
「そりゃあ私とて空母の端くれですから艦載機に頑張ってもらいたいとは思いますよ?しかしあくまで今の私の任務は偵察と艦隊の防空、それと幾許かの支援攻撃ぐらいのものです。私の一存で任務を変えるわけには参りません。それに…」
「…それに?何です?」
「…それに、艦魂である私がいくら望んだところで、私の船体や艦載機を動かすのは私自身ではありませんから…」
「青龍さん…」
その時の青龍の目は、とても寂しそうであった。
「…なんて、辛気臭い話になってしまいましたね。申し訳ありません」
そう言うと青龍はクスリと微笑んだが、その笑顔が明らかに無理をしているものであることは誰が見ても明らかであった。
「青龍さん。それなら、宮沢大将に頼んでみてはどうですか?所属艦隊の変更は無理でも、ある程度考慮に入れてもらうことぐらいは…」
「…いえ。私はあくまで軍艦の艦魂に過ぎません。私の功名心のせいで、宮沢大将にご迷惑をかける訳には参りませんから。…ちょっと用を思い出したので、失礼します」
そう告げると、青龍は「白根」の露天艦橋から去っていった。
「…功名心、か」
白根はしばらく何かを考え込むと、ふうとため息をついた。
「軍艦の艦魂である我々が戦果を挙げたいと思うのは、ごく当たり前のことではないのでしょうか?」
彼女は空を見上げながら、誰に尋ねるでもなく一人呟いた。
その後、任務を終えた第三艦隊はグアム沖を出発。12月14日に史実と同じく日本有数の大規模な軍港が整備されたトラック諸島に入港した。
同じく12月8日の早朝、第二艦隊旗艦「筑前」艦橋。
ここでは、艦魂たちによって目前に控えたアメリカ領フィリピン攻略作戦のための最終打ち合わせが行われていた。なおこの打ち合わせには、共にフィリピンを攻略する第四艦隊の艦魂たちも参加していた。
「いよいよ開戦か。ところで、あのマッカーサーとかいう奴はいるのか?」
「どうやら史実通りいるらしいな。なら、この私がその体を粉微塵に吹き飛ばしてくれん」
「いや、ここは私が零式拡散弾(史実の三式弾にあたる)で焼き払ってあげるよ」
「…極東艦隊の編成は?」
「史実よりだいぶ強化されているようだな。筑前姉さん、編成表はどこですかな?」
「はい。これ」
アメリカ海軍極東艦隊編成艦
重巡洋艦 「ペンサコラ」 「ソルト・レーク・シティ」
(20.3cm三連装砲二基、連装砲二基、三連装魚雷発射管二基、32.5ノット)
軽巡洋艦 「セント・ルイス」 「ヘレナ」
(15.2cm三連装砲五基、魚雷発射管は無し、32.5ノット)
駆逐艦 「ファラガット」級八隻
(12.7cm単装砲五基、四連装魚雷発射管二基、36.5ノット)
駆逐艦 「ベンハム」級十隻
(12.7cm単装砲四基、四連装魚雷発射管四基、38.5ノット)
潜水艦 「S-1」級三十九隻
(艦首魚雷発射管四門)
「かなり史実より強化されているな」
「アメリカは随分前から日本を目の敵にしてるからね。そのせいじゃない?」
「何だよこの潜水艦の数。筑前姉さん、どうにかならないんですかね?」
「ルーズベルトに頼めば?まあ、九分九厘無理だと思うけど」
「…というより、もっと寄越してくると思う」
「いっそ一網打尽に出来れば、楽なんだがなあ…はあ」
潜水艦の多さに辟易する一同(特に越後)。そんな中、一人の艦魂がある提案をした。
「でしたら、私たちの艦載機でまとめて沈めて差し上げましょうか?」
そう言うのは空母「海龍」の艦魂、海龍である。見た目はどう見ても精々十代半ばと言ったところだが、時々やけに年寄りくさい言葉を使うという特徴を持つ。
「おお。海龍か」
「はい。私と蛟龍の艦載機を合わせれば、こやつらに十分な打撃を与えることが出来るものと確信しちょります」
「しかし、一つ聞いていいか?」
「志摩さん、何で御座いましょ?」
「確かにいい案も知れんが、それをどうやって大川内中将に伝えるのだ?」
「何でも、大川内さんは私らが見えるそうで。ですから、問題はありまへん」
「だが、大川内中将は砲術学校校長も務めた生粋の鉄砲屋だぞ?空母艦載機の攻撃力を過小評価しているのではないか?」
「心配御無用。宮沢大将が『潜水艦は空からの攻撃にはとても弱い』と仰っていたと言えば納得されるでっしゃろ」
「…じゃあ、大川内中将にそう言ってもらえる?」
「筑前さん、任せてくんろ。それじゃ、私はこれでお暇します」
そう言うと、海龍は小躍りしながら会議室を出て行った。
「…しかし筑前姉さん、あの婆様もどきに任せて平気なのですか?」
「大丈夫よ。…たぶんね」
「それでは、ひとまずこれで打ち合わせを終わります。今作戦における各艦の奮戦敢闘を期待します」
そう言うと、旗艦として打ち合わせの進行役を務めた筑前は会議室を後にした。
その後、海龍の意見を受け入れた大川内中将はルソン島の在泊艦隊及び進攻の妨げとなるであろう基地施設への空爆を実行するように命令。小沢中将もこれに倣った。これに従い、二隻の空母から戦闘機及び攻撃機各三十六機からなる艦隊が夜明けと同時に出撃。一路ルソン島へと向かった。なお、攻撃機は対潜水艦ということで六十キロ爆弾を四発ずつ搭載していった。
ルソン島に向かった攻撃隊は途中台湾からの攻撃隊(戦闘機、中型爆撃機各四十八機)停泊中の潜水艦部隊及び基地施設を空爆。迎撃に出た戦闘機による損害はあったものの、少なからず損害を与えた。その戦果と損害は以下の通り。
戦果
撃沈 潜水艦七隻(停泊潜水艦は十三隻)
撃破 潜水艦三隻
撃墜 戦闘機三十二機(P-40)
地上撃破 戦闘機十九機、爆撃機二十三機(P-40、B-17)
基地施設の被害甚大
損害
撃墜
戦闘機二機、攻撃機三機 (海龍所属航空隊)
戦闘機一機、攻撃機四機 (蛟龍所属航空隊)
戦闘機三機、爆撃機四機 (台湾の高雄航空隊)
なおこの空襲でキャビデ軍港にあった魚雷倉庫が爆砕され、この後極東艦隊の潜水艦の活動は極めて低調となり、フィリピン攻略作戦が終わるまで戦闘艦艇は一隻も撃沈することが出来なかった。
また結果としてこれは日米初の空中戦となり、ただでさえ全体的な機体性能や搭乗員の錬度で勝っていた日本軍が開戦当初から集団戦法を使用したことにより迎撃のためアメリカ軍のクラークフィールド飛行場から出撃した航空隊は壊滅的な被害を被ることとなったのである。
航空隊が発艦した数時間後、第二及び第四艦隊はルソン島を空襲した航空隊を収容しなおもフィリピンに向け南進を続けていた。そんな中、空母「海龍」より発艦した偵察機のうち一機が、北進を続ける艦隊を発見したのである。
「偵察機より入電。『我、敵艦隊ヲ発見セリ。敵ハ巡洋艦四及ビ駆逐艦十八、速力三十ノット』とのことです」
「そうか。我が艦隊との距離は?」
「南方およそ百海里の地点です」
「よし。我が艦隊はこのまま南進を続け、第四艦隊と共に敵艦隊を撃滅する」
「了解」
それからさらにおよそ三時間後、戦艦「筑前」に装備された対水上用電探(レーダーのこと)が北進してくる艦隊を捉えた。
「敵との距離は?」
「二万を切りました」
「…よし、撃ち方始めッ!」
かくして、太平洋戦争最初の海戦の火蓋は切って落とされた。後の「リンガエン湾沖海戦」である。
筑前型戦艦六隻に搭載された四十八門の35.6cm砲が、轟然と火を噴く。その砲弾は遠距離からの砲撃ということもあって最初こそ見当違いの方向に飛んでいくものもあったが、電探のおかげでなんと三斉射目にして先頭の「ペンサコラ」に対し至近弾を叩き出した。
「よし!このままいけば…」
自分の砲弾による水柱が敵艦を包み込んだのを見て、露天艦橋に立っていた筑前は命中弾が出るのがそう遠くないことを確信した。
そして…
ドッガアアァァン!
その直後、「ペンサコラ」に一発の35.6cm砲弾が命中。急所こそ外れたものの、「ペンサコラ」はそのスピードをがくりと落とした。
「やったっ!」
嬉しさのあまり思わず大声で叫ぶ筑前。その時、第四艦隊の旗艦「身延」から「筑前」に通信が入った。
「長官、『身延』より入電です。『我ガ艦隊ハコレヨリ敵艦隊ニ雷撃ヲ敢行セントス』とのことです」
「もう少し待つように伝えろ。今突撃したらこちらにも犠牲が出る」
「了解」
その後砲弾は相次いでアメリカの巡洋艦や駆逐艦に命中。極東艦隊はなんとかして魚雷の射程圏内に入り一矢報いようと試みたが、速度差が数ノットしかない上に落伍艦が相次ぎ、いたずらに損害を増やすばかりであった。
その後、ついに旗艦の「ペンサコラ」が艦全体を火炎に包みながら沈没。旗艦を失って統率が取れなくなった極東艦隊の各艦は、てんでんばらばらに撤退を開始した。
ここに至って、ついに大川内中将は巡洋艦及び駆逐艦の全部隊に突撃を命じた。それと同時に今までさんざん待たされた水雷戦隊が全速力で極東艦隊に向け突撃し、これを壊滅に追い込まんとしていた。
しかしその時、艦の至る所から濛々たる黒煙を上げながら一隻の巡洋艦が第二及び第四艦隊の前に立ちふさがった。それはすでに唯一の姉妹艦を失い、復讐の念に燃える「ソルト・レーク・シティ」であった。
「姉さんの仇…私が討つ!」
艦魂のソルト・レーク・シティはそう言うと、既に多数の傷を負って満身創痍となった体をサーベルで何とか支えながら立ち上がった。
だがそうしている間にも彼女の体中に出来た傷からは大量の血が流れ、彼女に筆舌に尽くしがたい痛みを与えていたのである。
さらにすぐさま第十一及び第十二戦隊が容赦の無い砲撃を浴びせ、「ソルト・レーク・シティ」は姉と同じくその身を火炎に包んだ。しかしそれでもその砲は最後の一門まで砲撃を続け、第四艦隊の「飯森」「雲取」などに決して浅からぬ手傷を負わせたのである。
とはいえ、たかだか一隻の巡洋艦には大勢を覆すことは出来ず、「ソルト・レーク・シティ」はゆっくりとその船体を波間に没していくこととなった。
「まだ一隻も道連れに出来ていないのに…姉さんごめんね、仇を討てなくて…」
彼女はそう言うとゆっくりと目を閉じ、姉の後を追った…
その後第二及び第四艦隊は極東艦隊の残存戦力に甚大な打撃を与えた。しかしそれでも少なくない数の艦が逃げ帰ることが出来たのは、最期まで攻撃を一身に受け続けた「ソルト・レーク・シティ」の存在があってこそだったろう。この海戦での戦果及び損害は以下の通り。
戦果
撃沈
巡洋艦
「ペンサコラ」、「ソルト・レーク・シティ」、「セント・ルイス」
駆逐艦
「ファラガット」級 「ハル」、「ウォーデン」、「モナハン」
「ベンハム」級 「ベンハム」、「ローワン」、「スタレット」、「ウィルソン」
損傷
巡洋艦 「ヘレナ」
駆逐艦 ファラガット級三隻、ベンハム級二隻
損害
損傷
重巡洋艦 「飯森」、「雲取」
軽巡洋艦 「四万十」、「幌別」、「手取」
駆逐艦 「波風」、「赤潮」、「淡潮」
なおこの海戦では初めて酸素魚雷(零式53.3cm魚雷)が使用され、駆逐艦の沈没は殆どがこれによるものである。
また日本側の損傷艦船が多いにも関わらず戦没艦がいないのは、日本側の艦船には防御のための様々な工夫(機関のシフト配置、殆ど全ての艦船への防水区画の設置)が凝らされていることなどにより、史実の戦争後期のアメリカ海軍艦艇と同等もしくはそれ以上の耐久性を備えていたからである。
ちなみに各艦の防水区画数は秋津洲型戦艦が約4000、備前型戦艦が約3000、筑前型戦艦と祥龍型航空母艦が約2000、白根型重巡洋艦が約800、勝浦型軽巡洋艦が約500となっている。艦の大きさに比べて区画数が異常に多いのは、一つの区画をかなり小さくしている(およそ1.7m立方)ことや大型艦は防水区画を二重に設けていることと、史実の空母「信濃」の二の舞を防ぐために喫水線の上にも区画を設けていることによる。
リンガエン湾沖海戦の後、極東艦隊の残存艦はアメリカ勢力圏内への撤退を計画した。しかし、史実と異なり周囲が敵である日英や中立国であるオランダの勢力圏に囲まれている現状ではそれも叶わず、最終的には全艦が撃沈ないし自沈、あるいは中立国による抑留の道を辿った。
とはいえさすがにフィリピンの攻略は最新式の兵器を装備した三個師団(四万五千人)をもってしてもグアムやウエークほど順調には行かず、マニラを制圧したのは上陸からおよそ二週間後の12月26日、フィリピン全体の制圧は年が明けた後の2月24日のことだった。
日本軍にとって幸いだったのは、史実より早くコレヒドール島の要塞を陥落させてマッカーサーを捕虜としたことによってアメリカ軍全体の士気を下げることに成功したことと、いわゆる「バターン死の行軍」のような出来事が無かったことにより戦後に様々な問題が起きずに済んだということであった。
なお、リンガエン湾沖海戦を除いたフィリピン攻略戦における日本とアメリカの損害は以下の通り。
日本側損害
戦死 2880名
負傷 6800名
撃沈 商船十二隻 計31000総トン
(航空機によるもの二隻、潜水艦によるもの五隻、陸上砲台によるもの三隻、触雷二隻)
航空機 百八機
アメリカ側損害
戦死 7760名
負傷 9600名
残存部隊は全員捕虜
極東艦隊全滅、商船は多数が鹵獲または撃沈、自沈
航空機も全て喪失ないし少数が鹵獲(P-40、B-17等数百機)
フィリピン全土の制圧後、日本はいくつかの条件を認めさせる代わりにマニュエル・ケソンを大統領としてフィリピンの独立を承認。こうして「日比相互支援協定」が締結された。その主な内容は以下の通り。
一、日本はフィリピンの独立及び、軍隊の存続(開戦時すでに十個師団が存在)を認めること。
二、日本はフィリピンに工業製品や兵器を一定量輸出し、技術支援を行うこと。
三、フィリピンは日本軍の駐留及び日本軍による港湾施設などの使用を認め、天然資源(ニッケル、銅、クロム等)を日本に優先的に輸出すること。
四、一方の国が他国と戦闘状態に入った場合、もう一方の国はこれを支援すること。
この条約の締結後「勝浦」型を基にした軽巡洋艦二隻など十数隻の戦闘艦艇などが輸出され、一部は日本軍と共同で作戦に当たることもあった。なお、もちろん後知恵となってしまう部分は建造段階で取り除かれている。
フィリピン制圧後、任務を終えた第二及び第四艦隊は給油と乗組員の休養を兼ねて3月1日にボルネオのクチンに入港。艦魂たちもフィリピン制圧記念祝賀会と称して宴会をすることにした。
「それではフィリピンの制圧を祝って…乾杯!」
「「「乾杯!」」」
筑前の乾杯の音頭とともに、一斉に騒ぎ出す艦魂たち。そんな中、ただ一人志摩だけは疲れた様子で額から流れる汗を拭っていた。
「どうした、志摩?」
「越後姉さん。…いえ、あいつらが余りにも五月蝿いもので、つい…」
志摩の視線の先には、峰打ちを食らって気絶している数名の艦魂が折り重なるようにして倒れていた。
「…またか。でもまあ、今日ぐらいいいじゃないか。別に罰はあたるまい」
「はあ、そうも考えたのですが…」
「ま、これでも飲めって」
そう言うと、越後は日本酒の入った徳利を取り出した。
「お言葉ですが、自分は酒が苦手なもので」
「ならしょうがない。…じゃあ、こっちにするか?」
次にこう言って越後が取り出したのはラムネだったので、志摩は「頂きます」と言うとそのラムネを一気にごくごくと飲んだ。
「ごく…ごく…ぷはあっ」
「いい飲みっぷりじゃないか」
「ええ。丁度喉が渇いていたところでしたから」
「なら良かった。主計科の倉庫からたんまりくすねてきたから、気にせず飲めよ」
「…それはまずいのではありませんか?」
「何、私の体の中にあったんだ。どうしようと私の勝手じゃないか」
「…はあ」
志摩はなおも何か言いたげであったが、越後がそそくさとどこかに行ってしまったので仕方なく一人ラムネをあおった。
そんな志摩をよそに久しぶりの宴会は大いに盛り上がり、最終的には所属艦魂の過半数が酔い潰れて眠りについたところで自然とお開きとなった。
その後、案の定宴会の翌日に起きる艦艇の不具合に悩まされながらも、第二及び第四艦隊は3月7日にクチンを出港。17日にトラックに入港した。
1941年12月8日午前五時、第二機動艦隊旗艦空母「白鶴」艦橋。
その最上部である露天艦橋で、軍服を着込んだ一人の少女が帽振れをしながら自分の飛行甲板から飛び立っていく攻撃隊を見送っていた。
彼女はこの空母「白鶴」の艦魂、白鶴である。身長は160cm程とこの時代にしては結構な長身で、髪の毛は後頭部でまとめられている。
「待っちょれや、アメさん。今から私たちの艦載機があんたらの頭ん上に爆弾しこたま落としちゃる」
白鶴はそう言うと、にやりと笑った。
この時第二航空艦隊から出撃した攻撃隊は戦闘機四十八機、攻撃機九十六機。攻撃隊は二手に分かれて、それぞれニア諸島(アッツ島等)及びラット諸島(キスカ島等)の軍事施設を攻撃することになっていた。また攻撃の効果が不十分だった場合に備え、戦闘機二十四機と攻撃機四十八機の合計七十二機からなる第二次攻撃隊も出撃準備を整えていた。
しかし、それは杞憂でしかなかった。逆に攻撃目標が砲台などだけに限定されていたせいもあって爆弾を投下する目標が無くなってしまったために、わざわざ無電で許可を取ってはるばるアンドリアノフ諸島(アダック島等)まで行った機体もあった程である。
ちなみに何故攻撃対象が限定されていたかというと、アリューシャンの島々を占領した後に兵舎や集積されていた物資を極力そのまま再利用することによって、より迅速に防衛体制を整えようとしていたからである。
この攻撃によってニア諸島とラット諸島、それに加えてアンドリアノフ諸島の防御施設は壊滅し、第二航空艦隊は二週間かけてこれらの島々を占領した。なお上陸した部隊はアッツ島に一個連隊3120名、アダック島に二個連隊6240名など、合計二個師団(約三万名)にも上った。
この後第二航空艦隊はダッチハーバーにも空襲を行ったが、こちらは防御施設が大規模だったこともあって予想外の損害が出てしまい、上陸した後も苦しい戦いを強いられた。なお今回のアリューシャン列島攻略作戦における双方の損害は以下の通り。
日本側損害(死傷者は上陸部隊のみの数字)
戦死 960名
負傷 1920名
航空機喪失(アリューシャン列島特有の深い霧が原因で起きた事故による喪失も含む)
白鶴航空隊 戦闘機一機、攻撃機三機
雲鶴航空隊 戦闘機無し、攻撃機一機
夜鶴航空隊 戦闘機二機、攻撃機二機
飛鶴航空隊 戦闘機三機、攻撃機一機
合計 戦闘機六機、攻撃機八機(史実ではアッツ・キスカ占領と引き換えに計七機喪失)
アメリカ側損害
守備隊は全員が戦死または捕虜
アリューシャン列島全域陥落(ウナラスカ島・ダッチハーバーまで)
航空機若干数喪失(撃墜または地上撃破)
アメリカ軍はアッツ島及びキスカ島への空襲が報告された当初、艦隊を出撃させて第二航空艦隊を迎撃するつもりであった。
しかし、報告された日本軍機の数が膨大であったことや有力な艦隊が用意できなかった(戦艦や空母が一隻も近辺にいなかった)ことを理由に迎撃を断念。少数の潜水艦を派遣するにとどまった。その結果として、事実上アリューシャン列島の陥落を指をくわえて見ている他無かったのである。
ウナラスカ島を占領した12月21日の夜、旗艦「白鶴」の会議室で作戦の成功を祝って宴会が催された。
「それじゃあ作戦成功を祝して…乾杯っ!」
「「乾杯っ!」」
白鶴が取った乾杯の音頭と同時に、一斉に騒ぎ始める艦魂たち。この艦隊には歯止めをかける者が存在しないため、宴会はいつになく騒がしいものになった。
「くーっ。勝った後の酒がこんなに美味いとはねぇ…」
本来歯止めをかけるべき立場にあるはずの旗艦の白鶴でさえこのように無我夢中で酒を飲んでいるのである。旗艦がこれでは自然と部下も似たような状態になってしまうだろうし、事実そうであった。
「姉さん、もうそんなに飲んだの?早いねえ~」
「おう、雲鶴か!どうだ、二人でどっちがたくさん酒を飲めるか勝負せんか?」
「いいよ。手加減しないからね」
今しがた白鶴に宣戦布告をされたのは空母「雲鶴」の艦魂である雲鶴である。姉と並び連合艦隊に所属する艦魂たちの中でも有数の酒好きで、第二航空艦隊の風紀が乱れがちな原因ともなっているが、本人たちは全く気にしておらず、悪びれている様子も無い。
その後二人は夜が明けるまで酒を浴びるように飲み続け、二人が酔い潰れて眠りについた時にはそこら中に空の一升瓶が転がっていたそうである。
こうしてアリューシャン列島占領作戦は大成功に終わったが、勝利に沸く第二航空艦隊に忍び寄る影がいることには、まだ誰一人として気が付いていなかった…。
アリューシャン列島の占領を終えた翌日、第二航空艦隊は輪形陣を組みながら一路内地を目指して西進していた。
その時。
「ソナーに感あり!左九十度、距離3500ッ!」
艦隊の殿を航行していた駆逐艦「雪雲」のアクティブソナーが、接近してくる一隻の潜水艦を捉えた。
「対潜水艦戦闘用意!取り舵一杯、前進一杯!」
「雪雲」は敵潜水艦を沈めにかかるべく、限界まで機関の出力を上げる。他の駆逐艦も敵潜の接近に気付いたのか、第三十六駆逐隊の「巻雲」「山雲」「夕雲」がこれに続いた。
「敵潜水艦、魚雷発射!」
「取舵いっぱあああいっ!」
丁度「雪雲」と潜水艦が向かい合うような形になった頃、敵潜水艦は四本の魚雷を放った。それに対し、大急ぎで回避を試みる「雪雲」。
駆逐艦長の指示が早かったおかげでなんとか魚雷を回避し、ほっとする「雪雲」の乗組員たち。しかし、突如として轟音が彼らの耳に入った。
ドガアアァァンッ!
ドガアアアァァァン!
「『滝雲』被雷っ!」
「雨雲」の艦橋に見張り員の絶叫が響く。しかし、悲劇はこれで終わりはしなかった。
「滝雲」が被雷したしばらく後のことである。
ドオオオォォォ…ン
「『棚雲』轟沈っ!」
「なっ…!?」
駆逐艦長が後ろを振り返ると、遠くに艦首を上にして沈没してゆく駆逐艦の姿があった。
通常、秋風型駆逐艦は生存性に多大な配慮がなされているため、そう簡単に沈むことは無い。しかし今回の場合魚雷は「棚雲」の艦尾に命中し、まず舵取機を破壊。ついで舵取機の爆発によって後部火薬庫が誘爆し、船体の後ろ約三分の一を吹き飛ばしたのである。
やがて「棚雲」は数十秒のうちに船体を完全に水面下に没した。すかさず他の数隻が乗組員の救助に向かったが、あれでは殆どの乗組員は助からないだろうと思われたし、実際生存者は二百名を超える乗組員のうちわずか三名に過ぎなかった。
「よくも…よくも姉さんたちを…っ!」
「雪雲」の艦橋では、艦魂の雪雲が怒りに身を震わせていた。そして一気に腰に佩びていた軍刀(艦魂は軍人と違い、駆逐艦や潜水艦などといった軍人で言えば水兵クラスの艦艇の艦魂も軍刀を佩びているのが少なからずいる)を抜き放ち、絶叫した。
「宮沢大将はアメリカ人全員が日本に反感を持っている訳ではないだろうと仰っていた…。でも私にとって、姉さんの仇である貴様は鬼や修羅も同然!この私が、必ずやこの場で貴様を殺すっ!」
「雪雲」は艦魂の意志がそのまま艦を動かしているかのような勢いで敵潜水艦を猛追。潜水艦までの距離が200mを切った時、駆逐艦長が勢い良く叫んだ。
「爆雷投擲機発射用意…テーッ!」
その瞬間、「雪雲」の艦首から十六発の小型爆雷が一斉に放たれた。この「零式爆雷投擲機」は史実のヘッジホッグのデッドコピーとも言えるもので、弾頭数が少ないことや射程が若干短いことなどの欠点はあるものの、同時にヘッジホッグと比べて軽く、また取り扱いが容易であるという利点もあった。
小型爆雷は狙い過たず敵潜水艦が潜水しているであろうあたりに着水し、数秒後…。
ドドドドオオオォォォン…
水中での爆発音と共に、水柱が林立する。しかし、重油などの漂流物が無ければ撃沈出来たという証拠にはならない。
固唾を呑んで見守る「雪雲」の乗組員たちと雪雲。
時間が、ゆっくりと流れてゆく。そして…
少しずつ、あたりに重油が浮いてきた。量を見ても、撃沈できたと考えて間違いないだろう。
「やった…やったよ、姉さん…」
ほっと安堵の息を漏らす雪雲。しかし、その時「雪雲」の艦橋にもう一人の艦魂が現れた。
「どうしたの、夕雲姉さん?」
「…姉さんが…」
「え…?」
「…滝雲姉さんが…」
「…まさかっ!」
急いで「滝雲」がいた方を向く雪雲。そこには、右舷を上にして今まさに転覆・沈没せんとしている「滝雲」の姿があった。
「そんな…」
「一本目の魚雷は前部機械室に当たっただけで大したこと無かったんだけど、二本目の魚雷のせいで後部の缶室と機械室に一気に水が流れ込んできて…」
「乗っていた人たちは?」
「何割かは救助されたみたいだけど、機関部にいた人たちは殆ど全滅だって…」
「そう…」
こうして第三十五駆逐隊は一気に二隻の駆逐艦を失い、戦力は半減してしまった。また第二航空艦隊も戦力の補充として「滝雲」「棚雲」に代わる駆逐艦の就役を待ったため、1942年1月8日には呉に入港出来たにも関わらず、トラック諸島へ向けての出港はおよそ一ヵ月後のことになってしまった。
12月8日午前4時、ハワイ・オアフ島の北西およそ二百海里の海上。
ここでは現在、四隻の空母の飛行甲板から戦闘機七十二機、攻撃機百四十四機(爆装と雷装が半分ずつ)の合計二百十六機にも及ぶ攻撃隊が発艦していた。
「太平洋の宿敵の~、死命制する大戦果~…っと」
嬉しそうに自艦の露天艦橋で「ハワイ撃滅の歌」を口ずさむ空母「潜龍」の艦魂、潜龍。
しかし、この世界はもちろん史実でもこの時代に「ハワイ撃滅の歌」などという軍歌は存在しない。ではなぜ、その存在しないはずの軍歌を潜龍が知っているのか?
答えは簡単である。誠一に教えてもらったのだ。
元から歌うことが趣味の一つであった潜龍は、ある日誠一が軍歌を歌っているのを発見。その時に、頼み込んで何曲か教えてもらっていたのである。
「史実では『忽ち沈むオクラホマ 続くアリゾナ・バージニア』だったけど、今回は第一攻撃目標が空母だしなあ…」
そう。今回、戦艦は攻撃目標ではない。第一攻撃目標は爆撃隊が航空施設、雷撃隊が空母なのである。ここで少しでもアメリカの航空戦力を削いでおき、後々F6Fやエセックス級が就役した時楽になるようにしておこうとの腹積もりであった。ちなみに優先順位は以下の通り。
爆撃隊
第一目標 航空施設
第二目標 港湾の重油タンク
第三目標 敵艦船
雷撃隊
第一目標 航空母艦
第二目標 駆逐艦・輸送艦船
第三目標 潜水艦・巡洋艦
午前六時、オアフ島上空の零式艦上攻撃機・淵田中佐機。
「くっ…レーダーで探知されていたか…」
淵田中佐ら攻撃隊の前に、たった今飛び立ったばかりとみえるP-40「ウォーホーク」が数機、こちらに向け飛んできていた。
「打電しろ。『我奇襲ニ失敗セリ』だ」
「了解」
迎撃機がいては、いくら性能や錬度で勝っていてもある程度の損害は免れないと思われた。
ところが、P-40は護衛の零式艦上戦闘機(史実の零戦にあらず)に次々と落とされていったのである。
そのおかげで、淵田中佐率いる雷撃隊は一機の損害も無く真珠湾の上空へと到達することが出来た。
「おお、空母だ!空母がいるぞ!」
その時、淵田中佐の眼前に一隻の空母が飛び込んできた。「ワスプ」である。
すかさず淵田中佐は「ワスプ」に魚雷を叩き込むべく、僚機と共に海面すれすれの低空飛行に移った。
「用意…テーッ!」
魚雷を投下しふわりと軽くなった三機の攻撃機は、そのまま「ワスプ」の中央部分を横切るように上空を通過した。
「…今だ!」
ドドドオオォォ…ン
「命中、命中ですっ!」
「よしっ!」
三本の魚雷が直撃し、瞬く間に傾斜してゆく「ワスプ」。もはや、沈没を免れないのは明らかであった。「ワスプ」は船体こそそれなりの大きさを持っているものの、舷側に航空機用のガソリンタンクを装備したりと、防御上の弱点が多いことが致命的であった。
その頃他の機も、次々と港内に停泊している駆逐艦や巡洋艦に魚雷を命中させていた。他は戦艦と共に出撃してしまったからか空母は「ワスプ」一隻しかおらず、また駆逐艦もフラッシュデッカー(アメリカが第一次大戦時に大量生産した平甲板型駆逐艦)ばかりで、大型の駆逐艦は殆どが出払っていた。
しかし旧式ゆえに小型の駆逐艦である平甲板型は沈みやすく、中には一発の魚雷で真っ二つに折れて沈没した艦もあった。
一方、飛行場の攻撃に向かった爆撃隊は戦闘機の迎撃を受けながらの突入となり少なくない犠牲を払ったものの、戦闘機隊による機銃掃射と合わせておよそ二百機の航空機を破壊し、また一部の機は重油タンクにも攻撃を加えた。
これらの攻撃の結果、ハワイにいたアメリカ軍は航空及び海上兵力に大きな打撃を受け、特に大量の駆逐艦の喪失は痛手であった。この空襲による双方の損害は以下の通り。
日本側損害 (帰還したが修理不可能な機体も含む)
潜龍航空隊 戦闘機五機 攻撃機九機
白龍航空隊 戦闘機七機 攻撃機十一機
神鶴航空隊 戦闘機三機 攻撃機五機
天鶴航空隊 戦闘機六機 攻撃機九機
なお史実の真珠湾攻撃と比べて攻撃隊が倍近い(史実は合計で二十九機)損害を出したのは、奇襲でなかったために戦闘機の迎撃を思い切り受けたことと、史実と比べてパイロットの質より数を重視しているために、熟練パイロットの多くが内地で教官としての任務についていたためである。
アメリカ側損害
撃沈
航空母艦 「ワスプ」
駆逐艦 (損傷が激しいため廃棄処分された艦も含む) サターリー、メイスン、ブランチ、ハーンドン、ハーヴィ、ロング、ボリー、エドソール、ポープ、ピアリー、ピルスバリー、トラクスタン、スタートバント、ルーベン・ジェイムズ、バリー、マックック、マッカーラ、ウェルズ、スワゼイ、デール、オズボーン、ワスムス、ペリー、ノア (全てフラッシュデッカー型駆逐艦)
重油タンク多数炎上
航空機百八十六機撃墜ないし破壊、七十二機損傷
攻撃隊の収容後、第一航空艦隊は敵の追撃を避けるためわざと北方に大回りをして避退。1月3日に横須賀に入港した。