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08-魔法少年の学校

 そして、あっさりと教室についたりしている、ユーキ少年一行であります。意外ですね。驚きの超展開ですよ奥さん(誰です?)。

「唐突だし、”意外に”なんて言いなさんなよ」少年のツッコミが激しいのです。


 少年たちの、教室の描写をしますと、まあ、一般的な学校の教室です。移動できる机があって、教室の前面が例示用のディスプレイになっていて、各所の壁に、AR(強化現実)を使った掲示物が貼られています。風景画とか、書道とかの生徒作品がレイヤーをずらして、壁面に沿って飾られているので、けっこ見応えがありますね。微笑ましい作品が多いです(角を立てない表現には定評があります)。


 比較的珍しい、手動スライド式の出入り口には、特徴的な板がバッテンじょうに、万能接着剤で貼られており、透明な素材でできた採光用の壁にも、強化するように、どこからか引っぺがしてきた素材をこれまた、貼り付けています(クラスメイト有志、その、尽力の賜物です)。

 そしてその透明な壁の向こう側には、肌の色がサイケな緑色をした、ボロボロの服(所属学校の制服に見えます)を着込んだ、虚ろな目で、両手を体前面で突き出して、ゆらゆらと揺らしながら、そのくせ結構機敏に動き回っていたりしている、生徒やら教職員やらが、多数徘徊していたりします。

 そうですね、まあ普通の『生物兵器災害』が発生し、その病原体がさまよっている感じの、校舎です。ええ、なんの変哲も無い、退屈な日常の描写でしたね。かっこわらい。

「笑っている場合じゃ無いと思うし、どうしてこうなった」自然に、地の文にツッコミを入れつつ頭を抱えるユーキ少年です。


 3行で、状況説明をしてみよう!

 

 夏休みの登校日、教室に辿り着いたら、やけに少ない級友の姿に不信感を覚えた。

 そして、いきなり、ゾンビ(のような元級友)が襲いかかってきた!

 その、少数のゾンビ(?)を教室から叩き出した。

 慌てて、教室を要塞化して、立て籠もった。←今ここ。

 (あれ4行だ?)


「なんなんですよこれ」へたりと座り込んでいるリスを思わせる、少女は、なつみちゃんと言います。きっちりとゾンビ(?)に横蹴りを叩き込んで、場外に吹き飛ばしていますが、その後、非現実な状況に対して、ちょっと涙目になっています。

「ソウですね!なんともクレイジーな展開ですヨ!」反対にテンションが高まりまくりのリカルド少年です。手早くバリケードを構築したのは、彼の貢献度が高いのでした。意外と、工作少年であったのかもしれません?

「マムの実家結構ハリケーンとか多かったヨ、その対策の結果ね」それにしても、偶然とはいえ、工作用の万能接着剤とかよく持っていましたね?

「イロイロ便利ヨこれ、まあ、休みの宿題工作用に持って歩いていたりしてたのは……」

偶然ですか?

「多めに持っていたのは、偶然ネ」さいですか。


 教室に登校していた生徒数はざっくり10人程、そのうち、ゆーき君とリカルド君なつみちゃんを除くと7人、その7人は、教室の廊下側から離れたとこに固まって涙ぐんだり、怯えたり、怒ったりしています。

 とそのうちの一人、体格の大きめの少年がその顔色を青白くしてうずくまってしまいます。

「どうした、柿崎?」そのそばの細身の少年が心配して、声をかけますが、次の瞬間、柿崎と呼ばれた、大柄な少年が、口から泡を吹きながら、勢いよく飛び上がり、細身の少年を突き飛ばし、同級生の少女へと襲いかかります。

 豹変した少年へ、対応できず、ただ驚愕な表情を浮かべる少女。そして誰かの悲鳴。


で、


「危ないですね」

 ヒョイというか、ヒュン、と瞬時に、彼らに近づいたゆーき君が、器用に、襟首をつかんで、少女に襲いかかろうとした少年を、床に投げ落とします。そして、続いて、素早くリカルドが近寄って、後ろ手に回した腕を制服ごと接着剤で固めて、拘束します。

「ゾンビ物の定番ネ、傷つけられた犠牲者もまたゾンビになるネ。よくゆーレミーラトリがレミーラになるてゆーやつネ!」くるりんと、大柄な少年の足もとを指し示し、そこに噛み跡があるのを示して解せするリカルド少年です。

「”レ”はいらないわよ、どこの不死鳥よ!」律儀にツッコミつつ(ちなみにレミーラは魔法の呪文です、正解は不死鳥ラーミアですね)、襲われそうになった少女をとっさに背後にかばった、なつみちゃんでした。


 拘束された、柿崎君、焦点の合わない目で、ブツブツと何やらつぶやいたり、叫んだりしています。


「モエ~」とか「ヤマナシオチナシイミナシ」とか「フフ腐腐腐腐腐」「ホモ~」


外から聞こえて来るゾンビ(?)の叫び声も似たようなもので、

「BL!」「ユリ!」「ジャマナヒカリ」「ジークマイロード」「イモートはイイぞ」「アネもえ」「ギナジウム」「キョウダイアイ」「シテイアイ」「キンダンノ」「オナゴセンセイ!」

「リーマンものもステガタイ」「ショウネンショウネンビショウネン」「スポーツショウネンのカラミイイワァ」


 そんな叫び声?とともに、正気をなくして、フェチズム全開で歩き回っています。自己主張しかしていないのでゾンビ?同士で、議論にはなっていませんが、ゾンビ同士、執着している対象にまとわりついています。自我は崩壊しているようで、なんというか半裸でイヤッホーイとばかりに、踊りまくっていますね。ギリギリR15とか、R18表現は回避しているのは、最後の良心でしょう(誰の?)。

 


「うわあ」思わず声が出るゆーき少年でした。

「ウンいー感じに腐ってルね」サムズアップなリカルド少年です。

「何のなのよ一体これは?」頭の痛いなつみちゃんでした。

「ウン?まあ、原因は何だろうか分からないけど、ミンナ、カルチャー的に腐っているようだネ?そしてそれは、接触感染?シテいくようだヨ」

「カルチャーゾンビ?略してカルビだとお肉みたいだから、カンビかなぁ」ちょっと遠い目をして名称を考えるゆーき君です。

「いや、そこは普通にゾンビでいーんじゃないカナ?」

 思考が腐っているだけで、別に生命活動自体は停止しているわけではなさそうだけども、所作は完全に古典的な映画的表現で言うところのゾンビ物ではありますから、そうですね、萌えゾンビとかどうでしょうか?

「「それだ」」

「それだ、じゃないでしょ!」突っ込むのは任せました、なつみちゃん。


「そもそもゾンビというものは確か、ブードゥの流れをくむ呪術で、特殊な催眠効果のある薬草やらを使って、人間の自由意志を奪って、労働させる形態とかフォーマットとかを言うんじゃなかったかなぁ、だから動く死体というカテゴラズ自体が、初期認識を誤らせているのではあるけど、この点はかの高名なゾンビ映画の巨匠であるところの、ロメロ監督の功罪を語らなければ、ならないのではないであろうか!」

 熱く語り出している、某クラスメイト(少女)なのですが、その口調がすでに、こう外のゾンビと似通っているわけで、周囲の少年少女がその高説をのたまっている少女から、徐々に距離を取る中、やはりその少女の目がくるりとヒックリ返って、

「ナイトオブザリビングデット~」と言いながら、肌が緑色に変わっていきます。そしてなぜか制服もボロボロに。

「あー、はいはい」ユーキ少年たちは、それを、手際よく拘束して、教室の隅へと隔離します。

少女の首筋には、きっちり噛み傷がありました、後ろからの画をショットします、お約束ですね。

「ゾンビ物なら、キングだろう?」超古典ですよね。

「いや、ちょっと古めではあるけど、SCPも捨てがたいですよ」

「ええと、なんだっけそれ?」

「Secure Contain Protect の頭文字をとった物で、ええと、説明が少し難しい?」

「あー、財団のことですね」「関係者?」「しょうしょうご縁がありまして」結構ディープな話題が背景で続いていますね。

 ゆーき君の、同級生は皆ゾンビやら、怪奇ものに若干詳しということが、暴露されつつありますね。すごいクラスですね、いいなぁ、うらやましい。


「感染してないにも、かからわず、濃ゆい話題をしている気がします」ゆーき少年の感想です。

 さてこれからどうしましょうか?

「どうしようネ、いっそ僕らもあっち側へ行ってみル?ゾンビが恐ろしいのは自分がゾンビでないからだといウ、意見もあるヨ?」

「本能のまま、ゆーきを襲っているリカルドの未来が、見えるわ、冗談じゃない!」

「?なんでリカルドに襲われるのかな???」疑問符が顔中に浮かぶゆーき少年です。


 思案顔のゆーきくんたちをよそに、校内へアナウンスが流れます。


「こちら、児童会です、現在の状況を説明いたします、安全を確保しつつ、ご静聴お願いいたします」やわらかい、少年の声です。

「あ、会長の声です。相変わらず、というかこういう時も冷静なんですね」ゆーき少年が感心しています。

「イヤ、やっぱりアイツおかしいダロ、この状況でコーユー、アナウンス?」

「あなたが言うの?大概みんなおかしいわよ、今日は」

「キョウは?」

「今日”も”ね」小さな肩をすくめるなつみちゃんでした。

 放送が続きます。


「現在、校内では謎の感染症により若干の混乱状態に陥っています」

「「若干」」律儀にクラスメイトが全員で、ツッコミます、ですよねぇ。

「原因は不明ですが、感染は、体液の交換や、噛み傷による唾液の侵入、または爪などによる傷等で発生するようですので、まずは、可能であるならば、露出を控えた服装に着替えて下さい。お手元に、環境スーツをお持ちの方はそれの使用がベストです」

「「有るか!」」

「残念なことに未所持であるのならば、長袖長ズボン、マスク等の着用をお勧めします。火災等は発生していませんので、各教室などで安全を確保できた方は、そのまま慌てずに救助をお待ちください。現在、外部へ救助を要請中です」

「それなら安心なのかな?」

「なお、若干の問題として、現在校外とのネットワークが遮断されているようですので、その原因の究明と復旧を並行して行っています、長時間にわたる籠城が予想されますので、お手洗い等は先に済ませておくことをお勧めします、また、おやつ等、食料の消費等は計画的にお願いします、先にお答えしておきますがバナナはおやつに入りません」

「「遠足か!」」

「いや、突っ込むところが違うような?外部への連絡ができないのが問題だよねぇ」ゆーき少年がつぶやきます。


「また、感染しても命に別状はありませんが、校内の防犯カメラは正常に稼働中ですので、恥ずかしい歴史を記録されたくなければ、慎重な対応を取ることをお勧めします。なお、その映像は、会長個人で楽しむためや、個人的な利益を得るために児童会の会長が使用する以外、私的な流用はいたしませんのでご安心ください」

「「それ、一番ダメなやつだろ!」」

「相変わらず真っ黒な児童会長です」クラスメイトの誰ががつぶやきます。

「何デ、リコールされないのかネ」リカルドが肩をすくめて言います。

「会長に弱みを握られていない人がいない、教職員を含めて」

「剣呑な話ですね」


「なお、すでにこの放送設備の周囲においても、仮称”萌えゾンビ”が取り囲んでおりまして、扉を叩く音が想像できます、という状況です」あくまで冷静な声色です。「あ、窓にゾンビが張り付いて見えました、副会長のようですね、そして、やはりここは、窓に、窓に、と言うべきでしょうか?」

「そうゆう問題!?」

「”萌えゾンビ”で名称決定しそうだね」誰かがつぶやきました。

「あ、今、扉が破壊されました、こちらにゾンビの手が迫ってきます。音響さんの首筋み噛み付いて、彼女を、その仲間に加えました!音響さんの目が虚ろになりまして、そして、何か叫んでいるのがガラス越しに見られます。そして、ついに、放送室へ向かう中扉に手がかかります、中扉にはバリケードを作成していないので、侵入は容易でしょう、ああ、今侵入されました、意外に速い動きでこちらに迫ってきます、ああ、すごい力で、彼女が、組みついてきました!皆さん、放送はここまでのようです、さようなら、皆さんさようならぁ!」淡々と、最後は息継ぎなして、捲したてる児童会長でございます。


「「ゴジラか!!!」」そして、皆様、ディープなツッコミありがとうございます。


 放送はここで途切れている。


***


 いろいろとあって、魔法少女(少年ですね)になった、ゆーき少年が、夏休みの登校日に、学校へ行くと、そこは、生物兵器災害風味、まっただ中であり、クラスメイトとともに籠城する羽目に!

 彼らは、無事、災厄溢れる混沌とした学び舎から、脱出できるのか?

 さらには、事態を裏で操る、萌えゾンビの首領、やら、黒幕に迫り、それを見事退治することができるのか!


 煽りに煽ったあげく、次回最初の3行でボスが倒されている未来もあり得る展開を、期待して待て!


(いやそれはさすがにちょっとどうかと思うのだけども、もしそうなったら君はどうする?)

(行間で倒されていて、エピローグが始まる可能性も0とは言えない)

(そもそも続くのか?)


 もろもろの、不安材料を飲み込みつつ

 以下、次号へと続く!



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